From Overseas - London 2006.9/vol.9-No.6

広告会社、合従連衡の効果は?
 2005年の夏ごろから、「エイジス」が広告業界誌などをにぎわせている。「エイジス」は欧州最大のメディア・エージェンシーであるカラなどを傘下に収める広告会社グループで、ロンドンに本社を置く。2005年の収益は15億7760万ドル(米「アドエイジ」誌試算)で、13億6400万ドルの博報堂DYホールディングスを上回り、世界第7位の規模を誇る。
 このエイジスが、他企業に買収されるかもしれない。名乗りを上げているのは、世界第6位のアバス(仏)。大手企業の買収というニュース価値のほか、アバス会長であるヴァンサン・ボロレ氏の強硬姿勢が、誌面に占める割合をより大きくさせた。ボロレ会長は、自らの投資企業を通じてエイジスの株式保有比率を約30%まで高め、息の掛かった2人を取締役会に送り込むことを求めた。この要求は、今年6月の株主総会で賛成票を42%しか獲得できずに否決された。ボロレ氏が保有していた議決権は約40%だったので、ほかの株主のほとんどが反対に回ったことになる。しかし、ボロレ氏はまだ買収をあきらめていないようだ。世界第4位のピュブリシス(仏)も買収を申し入れたが、現在は取り下げた状況にある。
 このような買収に関するニュースは、時折世界の広告業界をにぎわす。大きいところでは、2002年のピュブリシスによるビーコム・スリー(米)買収、2003年のWPPグループ(英)によるコーディアント(英)買収。WPPは2005年にグレイ・グローバル(米)の買収にも成功している。規模を理解しやすくするために買収当時の順位で書くと、それぞれ6位が7位を、3位が9位を、2位が7位をということになる。
 さて、広告会社グループが統合するとどうなるか。
 通常、1つの広告会社グループにはクリエイティブなどを担当する「アドバタイジング・エージェンシー」、メディアのプランニングやバイイングを担当する「メディア・エージェンシー」、ほかにリサーチ会社、スポーツや医療など特定の分野に特化したサービスを提供するマーケティング企業などが同居する。よって、買収合併が行われることで、1つのグループの中に同じ業務を行う複数の企業が同居する環境が生じる。
 例えば、WPPのグレイ統合によって、WPPグループはメディア・コム(元グレイ傘下)、メディアエッジ:CIA、マインドシェアという3社の大手メディア・エージェンシーを保有することとなった。
 「WPPのクライアントはメディア・コムの定評のある能力、スケールを生かしたメディア・バイイングによるメリットを享受することができる」。WPPは、統合に際してこうコメントしている。解釈をすると、全世界におけるキャンペーンを検討している場合、WPPに発注すればどの国でも効果的なメディア・プランニングやバイイングが可能になるということだ。
 しかし、広告主側は必ずしも広告会社の巨大化に満足していないようだ。
 イギリスの大手広告主の団体であるISBAが会員社を対象に今年行った調査によると、広告会社に世界規模の業務を発注している企業のうち70%が「(広告会社の仕事に)不満がある」と答えている。逆に、国内中心の広告主では、広告会社に満足している企業の割合が69%にのぼる。さらに、独立系広告会社のネットワークであるユーロラブの調査では、取引先の広告会社が合併した経験を持つ広告主のうち48%が「統合によって、広告主側の目に見える利益はまったくない」、また73%が「メディア・プランニングにおいて(グループ内の政治など)不自然な力が影響していると思う」と答えた。
 ISBAの2003年の調査では、世界規模の業務を発注している企業に不満の声はなかったそうだ。同団体の担当者は「当時は数々の再編劇があり、世界規模の広告会社による競合も始まって間もなかった。(世界規模の)取引が新しく輝かしいものに見えたのだろう」と分析している。
 広告会社の寡占化は進み、日本を考慮の外に置くと、世界の広告市場はオムニコム、WPP、インターパブリック、ピュブリシスの4グループに牛耳られていると言える。
 広告主側が期待するほど、広告会社側は規模のメリットを生かしきれていないのが現状のようだ。
(8月8日)
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