特集 2003.6/vol.6-No.3

デジタル入稿と広告のクオリティー
デジタル時代の画像処理とは

 デジタル入稿でクオリティーの高い広告をつくるポイントはどこにあるのか。広告のデジタル制作に創成期から一貫して携わってきたマゴ・デザインの福田昭夫氏は、デジタルだからこそプロフェッショナルな画像処理の専門家が必要だという。
 
――福田さんはデジタルの時代こそ、製版が重要になると以前から主張されていますね。
  最近になって、デジタル送稿でも製版の重要性がようやく認識されてきました。広告のデジタル制作が始まったのは95年ごろで、デジタル送稿の実験も96年から始められています。しかし、新しい技術が出て来たときはいつもそうですが、はじめは技術の話が前面に出てきます。デジタル送稿のフローチャートはコンピューターの都合で考えられていました。フィルム入稿時代の広告のワークフローは、制作会社、製版会社、広告会社、新聞社という流れでしたが、それがデジタル送稿の初期のワークフローでは、製版のないフローになっていた。デザインと製版の仕事が一体化するという考え方です。そこに大きな誤解があったと思います。
 広告には、それぞれ明確な目的があります。広告の目的に合わせてアイデアを考え、デザインをするのがクリエイター、広告制作者です。その広告で訴求したいイメージをより効果的に表現するために、新聞や雑誌広告の場合は、最終的な印刷特性を考慮した製版が必要になる。広告制作者が考えるべきことは商品を売るためのアイデアであり、広告表現であって、最終の刷り上がりを想定した画像処理やデータづくりは、プロフェッショナルな知識のいる別の仕事です。フィルムの時代も、それは製版会社のノウハウになっていました。デジタルの時代になっても製版会社が必要だと主張していたのも、制作する側は最終的なクオリティーを広告主に保証しなければいけないからです。

プロフェッショナルの必要性

――具体的に、デジタル製版とはどのようなことをするのでしょうか。
 
まず、今までのフィルム製版から説明した方がわかりやすいと思います。たとえば、モノクロ広告の原稿を単純にフィルム出力すると、写真やグレーの部分は濃さに応じた網点の大きさで表現されます。車の広告で、バックが青空で、ボディーがオレンジ色だとすると、モノクロの場合、そのまま印刷すると、ほとんど同じようなグレーになってしまいます。それで車に立体感をつけるために、車の縁にハイライトを抜き版で入れたり、窓のエッジにスミ罫を入れたりといった製版処理をします。さらに、ボディーの曲面のグラデーションを美しく見せるためには、たとえばそこは65線で、ガラスは80線に網点を変えることもします。線数を上げると、ガラスの部分が硬い感じに仕上がるからです。人物は逆に、軟らかく表現するために線数を落とします。そういうことを1つ1つ組み合わせて1枚のフィルムをつくっているのが製版会社です。
 デジタル送稿になったら、そういう作業はデータ上でやらなければいけない。ところが一般には、写真をただモノクロに変換すれば新聞用の原稿になると思われています。カラーで見ると光が回ったきれいな肌色の人物写真でも、モノクロでは適切な製版をしなければ、のっぺりとした写真になってしまいます。
 ただ、そういう新聞の特性を知って、データを加工できる制作会社はほとんどありません。それは制作会社のデザイナーが不勉強だということではなく、それだけ専門的な仕事だからです。以前から新聞の特性にあった処理をするのは製版会社で、制作会社のデザイナーはそれをただ指示するだけでした。そういう分業ができていた。デジタルの時代だからといって、デザイナーや制作会社に新聞の特性にあったデータ処理ができると考えるのが間違いで、完全に分業して、その道のプロに任せないと無理なのです。

――しかし、デザイナーはそういうことを知識としては知っているわけですね。
 必ずしもそうは言えなくなっています。はじめからデジタル制作で育った最近のデザイナーは、製版会社がそういうことまでやっていることを知らない人も多いし、そういう処理を製版会社に依頼することも少ないと思います。デザインの仕事を始めて30年近くになりますが、ぼくらがやってきた時代というのはカラー広告がない時代で、モノクロをどう生かすかということで新聞広告をつくってきました。網点処理を始め、新聞には新聞のための製版処理があるという前提で広告をつくってきた。
 デザイナーが網点を気にしなくなった理由には、新聞がCTS化したことで細かな網点が再現できなくなったこともあります。ところがデジタル送稿では、新聞社がその網点処理のデータを考慮してくれればですが、それができるようになります。

――どういうことですか。
 データでそのまま入稿するわけですから、ある部分の網点を何線で処理するという網点情報もいっしょにデータとして送れます。その情報を新聞社がシステムに取り込んで処理してくれれば、網点の違いが再現されることになります。そういう細かい処理をやってくれる新聞社とそうではない新聞社がありますが、可能性としては新聞の網点処理を生かせる時代がまたきたということです。デジタル送稿を機に、新聞ならではのモノクロ広告の表現を、再びクリエイターに求めてもいいのではないかと思っています。

ターゲットに合わせた製版へ

――新聞のカラー広告も、印刷のクオリティーがかなり厳しく問われています。
 デジタル送稿で、カラー広告はどうなるのか。これまでのフィルム入稿とデジタル入稿では、色の管理の仕方が逆になるということを、まず知っておく必要があります。 
 フィルム入稿の場合は、広告会社、製版会社から上がってくる平台校正を広告主が見てオーケーを出して新聞社に入稿しています。その平台校正はインキも紙も、実際の新聞印刷に使われるものとは違うものです。新聞用紙や輪転機の特性を一切考慮していません。そこでオーケーの出た平台校正、いわゆるゲラ刷りをフィルムといっしょに入稿し、新聞社の印刷工場で色合わせをしています。カラーのゲラ刷りを全国の工場にある輪転機1台1台に1枚ずつ配り、その機械に付いている人の加減で色を調整していましたから、人の能力、つまり職人わざに依存していたわけです。
 それがデジタル送稿では、たとえば新聞用ジャパンカラーという一つの基準で新聞社の各輪転機を管理し、製版会社もその基準に合わせて仕上がりシミュレーションをするというやり方に変わります。こうすることで、刷り上がりの色がかなりコントロールできるようになります。

――印刷される色の客観的基準をつくって管理しようという考え方ですね。
 今は、輪転機に付いている人が色合わせをするということですから、その人の色の見方1つで印刷は変わってしまうわけです。それをコンピューター化して一定の範囲に管理しようというのが、新しいワークフローの考え方です。つまり、新聞用ジャパンカラーでコントロールするということは、最終的に輪転機で出てくる色、つまり最終ターゲットのカラーに合わせた色調整をするということです。新聞社はその基準に合わせて輪転機の色を管理し、製版会社もその基準に合わせたデジタルプルーフを出力して、それで色校正をする。これからは、後ろから前に戻ってくる製版になる。

――具体的には、どのように色を合わせていくわけですか。
 うちの新聞の紙面ではこの色はこんなふうに出ますというデータをプロファイルといいます。それを新聞社からもらい、製版会社のプルーフを出力する機械に入れれば、掲載したらどんな色になるかというシミュレーションができるようになります。
 ただ、各新聞社が新聞用ジャパンカラーのような統一した基準でやっていただかないと、つくる側としては何をターゲットにしていいかわからなくなる。そこが重要なポイントです。

新聞刷り上がりシミュレーション


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