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ojoトップ  > 特集  > ハレを共有する:ハレの日からハレの瞬間へ スマホが変えた「ハレ」

特集ハレを共有する

(Mon Dec 05 10:00:00 JST 2016/2016年12月・2017年1月号 特集)

ハレの日からハレの瞬間へ スマホが変えた「ハレ」

博報堂DYメディアパートナーズ    メディア環境研究所 所長   吉川昌孝 氏

吉川昌孝 氏

スマートフォンが生活のあらゆる場面に入り込んできて、生活全体を細切れにし、生活者のハレも瞬間的になってきた。そう語るのは、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所所長の吉川昌孝氏だ。ハレの瞬間化は広告コミュニケーションにどういう影響を与えるだろうか。

「ハレの日」から「ハレの瞬間」へ

── メディア環境の変化は、ハレの日にも大きな影響を与えていると思うのですが。

  ハレの日というより、ハレのあり方が大きく変わってきています。変化としては大きく二つあると思っていて、その要因はスマートフォンにあると考えられます。
  その一つが、ハレが「ハレの日」から「ハレの瞬間」になっていることです。理由は、生活者の行動がスマートフォンによって分散化し、細切れになってきているからです。
  メディア環境研究所は毎年1回、メディア定点調査を行っています。これまでは、テレビを見るのはこの時間、新聞を読むのはこの時間と、それぞれのメディアに接触する時間が大まかには分かれていましたが、スマートフォンがあらゆる場面に入り込んできて、メディア接触が、ものすごくぶつ切りになってきています。もっと言うと、メディア接触だけでなく、生活全体がものすごく細切れになっていると思うんですね。基本にケの日常があって、そこにハレの瞬間が入り込んでいるというのが、今のメディア環境が生んだ生活様式だという気がします。
  最近の若い人は「アガる」という言い方をよくします。「気分が盛り上がる」という意味ですが、「気分」という言葉もつけずに、単に「アガる旅」「アガる曲」という言い方をします。この言葉の使い方に象徴されるように、ハレの瞬間、盛り上がる瞬間を探したり、求めるようになっているのが今だと思うのです。

── しかもSNSがあるから、そのハレの瞬間が共有されるということですか。

  そうです。SNSはネガティブなことで炎上しますが、ポジティブなこと、ハレの瞬間でも、みんなで瞬間的に盛り上がることができます。ツイッターでいうなら多くの人がリツイートし、トレンドに挙がるわけです。
  個人的なことで言うと、僕はこの1年ぐらいプロ野球にはまっているのですが、その瞬間盛り上がるために球場へ行っている感じがものすごくします。今年はカープのリーグ優勝で広島は盛り上がりましたが、球場に行く人は「今日の夜はカープの時間=盛り上がる時間」だと思っているでしょう。
  それから、プロ野球ファンは自分のひいきのチームが勝つと、各球団ごとに独特の表現でツイートします。読売ジャイアンツは「うさほー」、阪神タイガースは「とらほー」、中日ドラゴンズは「どらほー」、北海道日本ハムファイターズは「はむほー」と、「〇〇ほー」とツイートする。それを見た他のファンがさらにリツイートすることで、自分の中だけで喜びが完結せず、ツイッターを通じてファン同士で共有される。そうすることによって勝った瞬間の喜びが増幅するわけです。
  このように、スマートフォンとSNSの普及によって、ハレというのは、その日から、その時間、その瞬間になっていっているというのが変化の一つ目です。

図1  「携帯電話・スマートフォン」の メディアイメージ

「携帯電話・スマートフォン」のメディアイメージは、スマートフォンの普及に伴って10年間で急速に上昇。特に「情報が早くて新しい」の伸びが顕著で、 昨年「テレビ」を上回り、今年「パソコン」を抜いて67.0%と、2006年の21.2%から3倍以上に伸長した。(博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2016」時系列分析から)

リアルと密接に結びつくハレ

── もう一つの変化は何でしょうか。

  もう一つの変化は、スマートフォンの普及で逆にリアルな空間や場面の価値が上がっていることです。その瞬間にその場にいるということが、リアルと密接に結びついたハレの価値として上がってきていると思います。
  今年のプロ野球日本シリーズは、広島と日本ハムで、視聴率は期待できない雰囲気でしたが、蓋を開けてみたら全国の視聴率は25%、札幌と広島は50%を超えるという結果でした。両チームのファンにとってめったにないチャンスだったこともありますが、みんなで盛り上がりたい、ハレの瞬間を共有したいということが強かったと思います。それほど、広島と日本ハムファンの熱狂はすごかった。
  それから、昨年、音楽のライブの売り上げがCDのパッケージの売り上げを抜きました。「リアルじゃないとハレじゃない」というのが、今だと思いますね。今のハレ体験というのは、自分が好きなコンテンツをリアルに体験するということと限りなくイコールになっているのです。
  これは新聞の号外とも、非常に近い話だと思います。スマートフォンの中では、どんな臨時ニュースも1行の見出しに平準化されてしまいます。個人のつぶやきと国際ニュースが一緒くたになっている。号外は、その場で手渡しされるリアルタイムのニュースです。号外をもらうとうれしいと感じるのは、情報としてリアルだからです。

── しかも、配られる時間にターミナル駅などに偶然居合わせないともらえないわけですよね。新聞の号外には意外性もある。

  だから、もらった人にとっては価値の高いものになるわけです。当然今は新聞の号外もSNSで拡散される。
  2013年のアメリカのスーパーボウルで停電が発生し、約30分間試合が中断しました。スーパーボウルのテレビCM枠は非常に高額なことで知られていますが、最近の広告担当者は当然、試合中のSNSの対応もしています。ナビスコの「オレオ」のSNSチームは、試合中の停電を絶好の宣伝機会として活用し、「停電? だいじょうぶさ(Power out? No problem.)」というツイートとともに、暗闇の中にスポットライトの当たったオレオの画像を流したのです。そこには「暗闇でもダンクする(オレオをミルクに浸す)ことはできる(YOUCAN STILL DUNKIN THE DARK)」というキャプションが付いていました。新聞の号外も、こんな視点で捉えて展開すると面白いと思いますね。

図2  「スマートフォン・タブレット端末」所有率の推移(4地区) 図3 年代別にみた「スマートフォン」所有率 (2016年東京地区)

スマートフォンの所有率(東京)は2010年の調査開始以降、6年間で7倍強の伸びを見せているが、昨年からほぼ横ばい。一方、タブレット端末の所有率(東京)は昨年から10ポイント強上昇して4割に近づいている。年代別(東京)では若い年代ほどスマートフォンの所有率が高く、10代では9割に達している。また、60代は所有率が急激に下がる。(博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2016」時系列分析から)

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