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特集通信販売に学ぶ モノの売り方

(Fri May 31 12:17:00 JST 2013/2013年6・7月号 特集)

ネット通販をマス広告に応用 クリエイティブの「最適化」
売れるネット広告社   代表取締役社長   加藤公一レオ 氏

加藤公一レオ 氏

広告に新しいクリエイティブはいらない、センスはいらないと言ったら、今まで広告に携わってきた人たちは反発するだろう。しかし、ネット広告の世界では、感性に頼らず、徹底したクリエイティブテストで広告を作り替え、レスポンス率を高めていくことが当たり前になっている。マス広告はそこから何を学び、どうネットを活用すべきか。通販王国の九州で、インターネット広告のコンサルティング会社として活躍している「売れるネット広告社」の代表、加藤公一レオ氏に聞いた。

──「売れるネット広告社」というのは、どういう会社なのでしょうか。

  IT業界では珍しいと思いますが、ネット通販のための“ネット広告”に特化したコンサルティング会社です。ヤフーやYOL(Yomiuri Online)にバナー広告がありますが、そういうネット広告を利用していかに集客するかだけでなく、リピートをいかに増やすか。それからクロスセルと言いますが、ほかの商品をいかに買わせるか。そして、最終的にはその人たちをいかに固定客にするか、までのプランニングを行っている会社です。

行動を起こさせるプランニング

──通販サイトに誘導するためのプランニングを行っているということですか。

  そこもよく誤解される点ですが、ネット広告を実施する場合、絶対にやってはいけないのは、バナー広告から「本サイト」のトップページや商品ページに誘導することです。バナー広告をクリックして到達するページを「ランディングページ」と言いますが、これが「本サイト」のトップページになっていると、消費者は改めてその商品を探さなくてはなりません。リンク先が商品ページの場合も、サイドバーなどでほかの商品を表示しているため、消費者は選択に迷ってしまい、コンバージョン率が低下してしまいます。
  バナー広告から誘導するサイトは、そうではなくて、商品ごとに完全に独立した「ランディングページ」にすべきなんです。そうすることで、「本サイト」の商品ページに誘導した場合に比べ、2倍から4倍コンバージョン率が高くなります。
  我々がやっているコンサルティングというのは、そういうバナー広告やランディングページ、さらにはリピート客や固定客を獲得するためのフォローメールなどをプランニングしていると理解してもらえばいいと思います。それらを一括して「ネット広告のコンサルティング」と言っているんですね。

──ネットを使ったマーケティングには、例えばSNSを使って口コミを起こしたり、ファンを増やすという使い方もあると思うのですが。

  仮にSNSでファンになってもらうにしても、結局、何らかのアクションを起こさせなければいけないというところは変わらないと思いますね。 例えば、フェイスブックでファンづくりを目的にするにしても、「いいね!」ボタンを押してもらうというアクションを起こしてもらう必要があるわけです。
  マス広告はブランドを認知させ、記憶に残して店舗へバトンタッチをすることが目的ですが、ネット広告は「その場でレスポンス」が目的とされます。マス広告がAIDMA(Attention→Interest→Desire→Memory→Action)で成立しているとすると、ネット広告は行動喚起が目的であるため、記憶を省いて今すぐ行動させるAIDA(Attention→Interest→Desire→Action)で成立しているということです。

──ネットを使ったブランディングも試みられていますが、それについてはどう思いますか。

  新聞やテレビは、やはりブランディングに向いた媒体だと思いますし、ネットは基本的には新聞折込広告やPOPと同じようなアクション媒体、刈り取り媒体だと思います。確かに、ネットでブランディングしようという試みも行われていますが、僕は無理だと思っていますね。

──なぜですか。

  日本で一番人気のあるバナー広告はヤフーのトップページですが、スペースも限られています。新聞でいう「小枠広告」に過ぎないと思うんですね。ブランディングするためには、やはり新聞15段やテレビの15秒CMのように、イメージや世界観を伝えられる一定のスペースや時間が必要で、バナー広告のような小さな枠では無理なんですね。もちろん、ネット上でも新聞15段やテレビCMに匹敵する広告枠ができれば状況は変わると思いますが。

ネット広告のカンニングシート

ファインドスター広告ニュース“加藤公一レオ”の「広告業界的ぶっちゃけ話」でネット広告のノウハウを公開している

──加藤さんはネット広告の費用対効果を上げるノウハウをネット上で公開していますね。

  「ファインドスター広告ニュース」というサイトにコラムを書いていますが、そこで今年の初めに書いたものですね。「ネット広告の費用対効果を100%確実に上げる最強の『カンニングシート』」というタイトルで、ネット広告で売り上げを上げるための20のノウハウを公開しています。

──ランディングページの「申し込みアイコン」の色は“緑”にするとレスポンスが高くなるなど、かなり具体的な内容ですね。

  ネットは、その仕組み上、100%効果がわかるメディアです。この特性を利用して、これまで徹底的に広告テストを行ってきました。「カンニングシート」は、そのノウハウの一部を公開したものなんです。「ランディングページの申し込みアイコンは“緑”が最もレスポンスが高い」というのもスプリットランテスト、いわゆるA/Bテスト(注)を何度も繰り返した結果わかったことです。赤、緑、青、オレンジ、ゴールドなどいろいろな色の申し込みアイコンと比較して、毎回、レスポンスが多かったのが“緑”だったのです。

(注)スプリットランテスト:一部の要素だけを変更した複数の素材(広告やWebページなど)を同じ環境に露出し、最も効果の高い要素を発見するテストのこと。A/Bテストともいう。

──色によってレスポンスが違うというのは興味深いですね。

  あくまで推測ですが、申し込みアイコンは安心して押せる色がいいということで、“緑”なんだと思います。“赤”は目を止めさせるにはいいのですが、人を安心させる色ではありません。全世界、どこへ行っても、信号の“赤”は止まれだし、“緑”は進めです。それと同じ心理的なロジックが働いていると思うんですね。
  それから、これと関連したことで言うと、ランディングページの申し込みアイコンを押した瞬間に本サイトのショッピングカート・システムにつなげている企業が9割くらいありますが、これも間違いなんですね。ランディングページを“申し込みフォーム一体型”にした方がレスポンスは上がります。

──なぜでしょうか。

  実は、ショッピングカートはランディングページとの相性がものすごく悪いのです。そもそもショッピングカートというのは複数の商品を購入してもらうためのシステムで、本サイトを自ら検索して購入してくれるような優良顧客を対象としたものです。ところが、ネット広告から誘導してランディングページに来る新規顧客は複数の商品を買わないことがほとんどです。実際、バナー広告からランディングページに来て購入する人の99%はバナー広告で紹介している商品しか買いません。そんなお客様に対してショッピングカートを示しても、むしろ戸惑うだけなんですね。そういうことも、実際にスプリットランテストでレスポンスを確かめていけばわかるわけです。

クリエイティブの最適化

──スプリットランテストは、具体的にどのように行っているのでしょうか。

  まず、ネット広告をキャッチコピー、写真、デザインなどの要素に分解し、要素別に対抗案を用意します。次に、キャッチコピーのみを変え、スプリットランテストをして最もレスポンスの高いキャッチコピーを把握します。その次に、写真部分だけを変え、同様に最もレスポンスの高い写真を把握します。最後に、デザインを変えた広告を制作し、最もレスポンスの高いデザインを把握します。そして一番強いキャッチコピー、一番強い写真、一番強いデザインを単純に組み合わせて広告を制作すると、それが最強のレスポンスのネット広告になる。簡略化して言うと、そういう手順で行います。

──どんな要素でも一番レスポンスの高かったものを組み合わせれば、効果が最も高くなるということですか。

  広告クリエイターからは、いろいろ反論が来そうですが(笑)、これまでのテスト結果では必ずそうなります。ある女性用育毛剤の例ですが、キャッチコピーを変えただけで3倍、 写真を変えただけで2倍、その2つを組み合わせることで5.7倍にレスポンスが上がった経験があります。野球のオールスター、サッカーの日本代表と同じで、各ポジションのナンバー1の選手を集めれば、それがベストメンバーになるということです。こうした手法を我々は「クリエイティブ最適化®」と呼んでいます。

──例えば、レスポンスが1番目のコピーと3番目の写真を組み合わせた方がレスポンスが良くなるというようなことはないのですか。

  これまでの経験ではありません。それから、スプリットランテストで重要なのは、キャッチコピーのテストを行う場合は、必ずキャッチコピーだけ変えることです。同時に複数の要素を変えると、何が要因かわからなくなってしまうからです。

──広告の要素と言ってもいろいろですね。その要素ごとにレスポンスの高い表現を把握するには、かなり時間がかかるのではないですか。

  ネット広告は一般的に、一つの媒体メニューに4〜8原稿ぐらいまで同時入稿=同時掲載できます。ですから、複数のスプリットランテストが同時に行えるんですね。しかも、小さい規模のテストでも99%の確率で規模の大きいテストと同じ結果が出ます。ネット広告は、テストが非常に容易にできるメディアなんですね。その特性を生かして、クリエイティブは複数用意してスプリットランで出稿し、メディアは小規模で複数の媒体社に出稿してみる。そうやって自社にとっての「最強クリエイティブ」と「最強メディア」を見極めて、それを組み合わせ続けていくと、確実にネット広告の費用対効果は上がっていくということなんです。

各要素の1位を組み合わせてクリエイティブを最適化

広告のマイナーチェンジを繰り返す

──ところで、その「最強のクリエイティブ」を見極めるのに、どのくらい時間がかかるのでしょうか。

  これまでは話をわかりやすくするために、キャッチコピーと写真、デザインに限定してきましたが、例えばキャッチコピーのフォントを変えても、レスポンスは変わってきます。レスポンスに影響を及ぼす要素は無限にあるんですね。実際、健康食品の通信販売事業を展開している「やずや」さんと10年以上ネット広告の仕事をさせていただいていますが、いまだに同じ商品のスプリットランテストを行っています。極論を言うと、半永久的にやっていく作業なんですね。

──一つの広告を改良し続けるということですか。

  今までの広告業界では、「一つのクリエイティブプランを一つの完結された作品」として見てきました。そのため消費者の評判やレスポンス率が悪いと、その作品自体が悪いということで、まったく新たなクリエイティブプランを作成してきました。  
  しかし、ここに大きな間違いがあったと思うのです。それまでのキャンペーンで積み上げてきた財産を捨てて、毎回、ゼロからスタートとしていたわけです。ネット広告は、むしろ、新しいクリエイティブを作らず、広告原稿とランディングページのマイナーチェンジを行い続けることで、レスポンス率を確実に上げ続けるという道を選んでいるんですね。

ネットでクリエイティブテストを

──加藤さんが最近取り組んでいることは何ですか。

  今までの延長線上にある話ですが、オフライン広告のクリエイティブテストをネットで行うことです。

──新聞広告やテレビCMのクリエイティブテストということですか。

  そうです。「オフライン」のスプリットランテストは、インターネットと比較して、決して精度の高いモノとは言えません。マス広告の中でも新聞広告は広告メニューの中にスプリットランが入っている数少ない媒体ですが、それでも、その効果を調べるには、アナログ式のアンケート調査を行う必要があります。そこで、ネット広告を使って事前に要素別のクリエイティブテストを行ってしまおうというのが基本的な考え方です。

──具体的にはどのように?

  例えばテレビショッピングのインフォマーシャルをテストする場合、最後のフリーダイヤルを申し込みアイコンに差し替えたインフォマーシャルが流れるランディングページを複数作ります。それらをネット広告のランディングページとして均等配信する。新聞広告や新聞折込広告も同様で、キャッチコピーや写真を変えたクリエイティブを複数準備して、フリーダイヤルを申し込みアイコンに変えてネット広告から均等配信するだけです。こうすることで実際にオフラインで行うよりも正確かつ簡単にクリエイティブテストが可能になります。

──実際にテストした事例はあるのでしょうか。

  はい、大手健康食品通販でテストの成功事例があります。ネット上で1位になったキャッチコピーと写真が、そのまま新聞広告や新聞折込広告でも1位になっています。こういう結果を見ると、強いキャッチコピーはどの媒体でも強い。ネットもオフラインも変わらないというのが実感です。

ネットでテレビCMのクリエイティブをテスト

大手健康食品会社のネット広告(左)と新聞折込広告(右)のクリエイティブ

ブランディングにも有効なテスト

──通販広告の場合はクリエイティブテストとして有効なことはわかりますが、ブランド広告にも有効なのでしょうか。

  通販広告にしろ、ブランディング広告にしろ、最終的にはどちらも消費者から“モテる”ことが目的だと思うんですよ。何が一番モテる要素かと考えると、話す言葉が魅力的だったり、ファッションのセンスが良かったり、気前が良かったりということが、モテる要因になっている。そう考えると、通販でもブランディングでも、「一番効果の高い要素の組み合わせが、最も効果の高いクリエイティブになる」という考え方は成立すると思うんですね。
  ただ、ブランディングの場合、必ずしも申し込みや注文は発生しないわけで、レスポンス率で判断することはできません。しかし、広告の効果を判断する何らかの効果指標を設けた方がよいです。例えばフェイスブックの「いいね!」ボタンが押された数で、その要素の善し悪しを判断することはできると思います。「いいね!」を一番押された要素が、みんなに好かれる要素だということです。
  そういうように、プロモーションを目的としたマス広告ならレスポンス率の高いもの、ブランディング広告なら「いいね!」ボタンの押された数で、クリエイティブ要素を判断できると思います。

──マス広告がネット広告に学ぶ時代になってきたのかもしれませんね。

  そうとも言えますが、僕自身がやってきたことはまったく逆です。これまで話してきたスプリットランテストというのは、実はダイレクトマーケティングでは昔から行われていたことです。それをネット広告に応用してみたらどうなるかという発想で考えたのが「クリエイティブ最適化®」です。
  僕は、これからはむしろオフラインのノウハウをネット広告に活かすことの方が重要だと思っています。ネット広告は、たかが10年ちょっとの歴史しかありません。ところが新聞広告やダイレクトマーケティングには100年以上の歴史があります。その知恵やノウハウを再発見して、テクノロジーを使って再度活かしていく。テクノロジーに振り回された次世代マーケティング論を追いかけるより、その方がはるかに得るものが多いと思っています。

加藤公一レオ

1975年ブラジル・サンパウロ生まれ、アメリカ・ロサンゼルス育ち。西南学院大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。その後、Havas Worldwide Tokyo、アサツー ディ・ケイ(ADK)でダイレクトレスポンスマーケティングに従事。2010年に「売れるネット広告社」設立。九州を中心にインターネット広告ビジネスの総合プロデュースおよびコンサルティング活動を行っている。九州インターネット広告協会初代会長。著書に『単品通販“売れる”インターネット広告』 (日本文芸社)。HPはwww.ureru.co.jp

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