企業の“志”をどう伝えるか
(2011.8.2/2011年8・9月号 特集)
トップの宣言を伝えて共有化 90周年「三菱電機のビジョン」
三菱電機
宣伝部 次長 兼 コーポレートコミュニケーショングループ グループマネージャー
丸山 亨 氏
三菱電機は7月3日朝刊に創業90周年を伝える企業広告を掲載した。その広告で語られている「三菱電機は、豊かな社会構築に貢献する環境先進企業を目指します」というメッセージは、創立記念日の2月1日、山西健一郎社長が全社員に送ったメールが元になっていた。トップのメッセージをどうコミュニケーションし、それを会社全体の力に変えていくのか。宣伝部次長の丸山亨氏に聞いた。
──創業90周年を伝える広告を7月に出稿されましたが。
三菱電機の創業は1921年2月1日で、当初は3月中旬に掲載を予定していたのですが、震災の影響を考慮し、7月に掲載することになりました。
被災地の復興支援としては、会社が拠出した5億円の義援金のほか、1992年に導入した「三菱電機SOCIO-ROOTS基金」というマッチングギフト制度を使って、社員の寄付と同額を会社が拠出する募金活動を今も継続しています。
──「周年広告」というのは、企業理念がベースになると思うのですが。
三菱グループの創始者・岩崎弥太郎の精神は「三綱領」という根本理念として引き継がれてきました。その三つの理念、「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」が、今もグループ全体のDNAを担っていると思います。今の言葉で言い換えれば、「所期奉公」は「社会への貢献」、「処事光明」は「フェアプレーに徹する」、「立業貿易」は「グローバルな視野で」ということで、今にも通じるというか、今の時代にこそ求められる理念です。それをグループ各社は、それぞれの事業に合わせて読み替えて受け継いでいると思います。
三菱電機は80周年の2001年に、それまでのコーポレートスローガン「技術がつくる高度なふれあい SOCIO-TECH」に代えて、「Changes for the Better」というコーポレートステートメントを定めました。これは「常により良いものを目指して変革していく」というわれわれの意志を表した言葉です。またこの時に、何年も変わらない「スローガン」では時代の速度についていけないという考えから、時代に合わせて見直す「ステートメント」を会社のビジョンを示すものとしました。
もう一つ、われわれが重要だと考えているのが「環境への貢献」です。三菱電機は2007年に、創立100周年を迎える2021年を見据え、環境行動指針である「環境ビジョン2021─ 技術と行動で人と地球に貢献する」を策定するとともに、2009年には環境ステートメント「Eco Changes」を策定しました。
今回の90周年の広告を見てもわかりますが、この二つのステートメントが、われわれの今の行動の両輪になっています。
会社の方向を示す社長メッセージ
──広告は、どのような考えから作られたのでしょうか。
実は創立記念日の2月1日に、90周年の社長のメッセージが全社員にメールで送られたんですね。その中で、社長がこれからの三菱電機の進むべき方向として示したのが、広告にもある「三菱電機は、豊かな社会構築に貢献する環境先進企業を目指します」という言葉です。社長が社員全員にこうしたメッセージを送ったのは、私の記憶ではおそらく初めてだと思います。
山西健一郎執行役社長は2年前に就任したのですが、社員全員に今後会社が目指すべき方向をはっきりと示し、一つの方向にまとめたいという強い思いがあったと思います。社長から直接メッセージが送られてきたのは、われわれ社員にとって非常に大きな出来事でした。
というのも、これまで三菱電機は、「顔のない企業」「顔が見えない企業」と言われることが多かったのです。家電は確かに身近な商品ですが、エレベーターやビル・電力・鉄道などの管理システム、カーエレクトロニクス、電子デバイス、そして人工衛星の製造に至るまで、表立って目立つことのない社会インフラを中心に活躍していることから、会社全体としては一般の人たちになじみの少ない企業というところがありました。
それが社長のメッセージで、三菱電機として、これから社会にどういうことを伝えていかなければいけないかという核ができた。それを具体的に表現したのが、90周年の広告でした。
──そうすると、この広告はインナーに対する効果も意識されているのでしょうか。
基本的には、多くの人に三菱電機が90周年を迎えたご挨拶をすると共に、社会インフラを支えるさまざまな事業に取り組んでいることを知ってもらうこと、そして、環境先進企業を目指すというメッセージを伝えることが一番の目的です。
ただ、当然、社員にもこれを見てもらいたいという思いもあります。特に、われわれの会社は事業本部制で、社員自身ですら他の事業本部がやっていることを知っているようで実はあまり知らないということがあります。広告のインナー効果やミラー効果を狙った部分も多分にありますね。
技術の成果を新聞広告でアピール
──科学未来館の「Geo-Cosmos(ジオ・コスモス)」の広告を90周年広告の1週間後に出稿されましたが。
90周年の広告がたまたま7月にずれたことが幸いしたのですが、科学未来館の開館10周年に合わせて掲載することは以前から予定していました。これは、純粋な技術広告ですね。
直径6メートルの球体を、当社の有機ELパネル1万362枚で構成したもので、1000万画素の解像度があります。気象衛星で撮影された前日の地球の様子や東日本大震災によって起こった津波が地球上を伝わる様子を再現するなど、さまざまな表示が可能です。
一番身近な有機ELは携帯電話のディスプレーだと思いますが、大型の有機ELは、一昨年に初めて当社が開発したものです。
──技術情報と言えば、昨年、ウェブサイト「DSPACE」が「第4回企業ウェブ・グランプリ」の「トリプルメディア部門」でグランプリを受賞していますね。
宇宙に関する話題を集めたウェブサイト「DSPACE」
「DSPACE」は、宇宙開発の話題や天文情報で構成されているオウンドメディアのウェブコンテンツです。実は、人工衛星は三菱電機が国内トップシェアなのですが、調査で「人工衛星のメーカーで思い浮かぶメーカーは?」と聞くと、5、6番目なんです。国内で人工衛星を作っているメーカーは2社しかない。それで、三菱電機と宇宙のイメージの結びつきを強化したいという狙いから、力を入れているサイトです。
社員全員が共有する“志”を
──今後は、どのような点に力を注ぎたいとお考えですか。
山西社長が「環境エネルギー分野と社会インフラ分野で三菱電機は貢献していく」ということを明言しています。ですから、宣伝部としては、それをどうコミュニケーションしていくかが課題になると思いますね。
──本業を通して社会に貢献していく?
それが基本です。三綱領の一つ「所期奉公」、期するところは社会への貢献ということです。岩崎弥太郎は「事業は国のために」という大局観で把えていましたが、事業活動の究極の目的は社会への貢献です。やはり、事業を通じてどう世の中に貢献していけるかということと、それに加えて事業活動そのものにとどまならい貢献活動があると思います。例えば、われわれの会社で言えば、「里山保全プロジェクト」や「子ども科学工作教室」「環境出張教育」のようなCSR活動がそれにあたりますね。
当然、われわれ宣伝部としては、広告を通じて世の中に三菱電機の活動を伝えていかなければいけないと思いますが、広告でやれることと、やれないことがあります。三菱電機グループには、関係会社も加えると約10万人の社員がいます。この10万人の社員一人ひとりが広告塔だと思うんですね。自分の親戚や友人に「三菱電機ってこんなことやっている会社だ」「あれを作っているのは三菱電機だよ」と、もし言ってくれれば、ものすごいクチコミが期待できる。そのためには、この会社はどんな事業とビジョンを通して社会に貢献していくかをトップが示し、それを社員全員で共有していくことが大事だと思うんですね。そのためのコミュニケーションをどう考えるかも、われわれの役割だと考えています。
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