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from America

米国発、見出しに関する衝撃的な事例2選

本稿の見出しは新興ウェブメディアの手法に倣ってつけた。実際にはそれほど「衝撃的」ではないので、最初に撤回しておく。日本と同じく、このような派手な見出しはアメリカのウェブメディアでもよく目にする。

見出しにこだわることで急成長したウェブメディアがUpworthyだ。当初の編集スタイルは、ウェブ上の既存コンテンツを拡散されるようキュレーションする方式を取っていた。同社は1本の記事に25通りの見出し案を用意したうえで独自のテスト配信を行い、最も効果の高い見出しを採用することで、読者を急激に増やすことに成功した。

同社や他のバイラルメディアの台頭と合わせて顕在化した問題が「clickbait」、日本語で言う「釣り(見出し)」だ。扇情的な見出し、内容がない記事、見出しと本文が一致しないコンテンツがSNS上に溢れた。その後フェイスブックが記事フィードからclickbaitを排除するようアルゴリズムを変更したことで事態は改善されたが、フェイスブックを読者流入の主軸としていたUpworthyは大幅に読者を減らすこととなる。

これをきっかけに同社は方針を変え、2015年7月にキュレーション式から独自取材の記事配信へと路線転換した。ただし、clickbaitではないものの注目される見出しを付け、ウェブユーザーに好まれる文体を用いるなど、これまでに培った知見やツールを駆使している。

clickbaitと呼ばれる記事では、一時的に流行ることはあっても、結局読者に受け入れられない。そのことを認識し、読者や世の中と向き合った結果、強みであるデータやツールと社会的意義のある独自取材コンテンツを融合して発信することを選んだのだ。

続いて、広告における見出し、キャッチコピーの事例を紹介したい。2015年10・11月号でも述べたとおり、アメリカの広告はビジュアル重視のため、コピーはビジュアルを引き立てる役割であることが多い。その傾向の中、腕時計などを製造するブランド「Shinola」は、キャッチコピーがメーンである新聞広告を出稿した。全面広告に腕時計の写真とともに、「A WATCH SO SMART THAT IT CAN TELL YOU THE TIME JUST BY LOOKING AT IT. (見るだけで時間がわかる、とてもスマートなウオッチ)」のキャッチコピーが掲げられ、「夜に充電する必要もないぐらいスマート」など、スマートウオッチを意識したウィットに富んだ言い回しが続く。流行りを逆手に取り、スマートウオッチ発売の記事を数多く目にしてきた読者にメッセージを投げかける。受け手が、デジタルではない紙の新聞読者であることも意図されたことだろう。読者の姿を想像して作られたことで、一方的な押し売りではない、受け入れられるコピーになっている。

報道と広告、ウェブ媒体と紙媒体という種別の違いはあるが、2つの事例に根底で共通することは読者にいかにメッセージを伝えるかということに変わりはない。一瞬で情報の取捨選択がされてしまう時代には、ファーストコンタクトとなる見出し・キャッチコピーにこそ読者のことを考え抜いたメッセージが必要だ。多民族国家のアメリカであろうと、個人の嗜好(しこう)が多様化する日本であろうと、デジタルであろうと紙媒体であろうと、読者が「人」である以上、受け手を考え抜く必要性は変わらない。それがあって、初めてデータもクリエイティビティーも生きてくるのだ。

金田明浩 ニューヨーク駐在

日本でも大々的に報じられている通り、2016年はアメリカ大統領選挙が行われます。執筆現在行われている予備選では複数の候補者名が新聞の見出しになっていますが、果たして11月の大統領選翌日、誰の名前が一面トップの見出しに上がるのでしょうか。

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