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特集通信販売に学ぶ モノの売り方

(2013.5.31/2013年6・7月号 特集)

媒体特性を最大限に活かすTVショッピングの手法
ジュピターショップチャンネル株式会社   メディア&マーケティング本部 マーケティング部 PR&イベントグループ   勝賀瀬(しょうがせ) 鮎美 氏

勝賀瀬 鮎美 氏

24時間365日生放送のテレビショッピング専門チャンネル「ショップチャンネル」は、週に700もの商品を扱い、1日の出荷数は平均で約3万6000箱、売り上げは2011年度で1200億円を突破した。生放送の強みを活かし、リアルタイムに視聴者のニーズを汲み取り、臨場感あふれるコンテンツに仕立てているショップチャンネルのモノの売り方を、広報担当の勝賀瀬鮎美氏に聞いた。

リアルタイムマーケティングを可能にする独自の体制

  ショップチャンネルは、生放送だから、スタジオで扱う商品の機能や性能の紹介にも臨場感がある。試した結果も操作のしようがないため、視聴者も納得だ。販売個数が画面に表示され、それが目に見えて増えていくと、「あと○個なら4日前後でお届けできます!」といった「キャスト」と呼ばれる司会役の絶妙な案内が入る。そうした生の演出はエンターテインメント性があり、コンテンツとしても成り立っている。
  こうした番組を取り仕切るのが「セールスプロデューサー」だ。セールスプロデューサーはサブコントロール室と呼ばれる操作室に、スタジオの5台のカメラを操作するカメラマン、音声兼タイムキーパー、画面上の文字情報を扱うCGオペレーター、技術面の責任者であるテクニカルディレクターの4人のスタッフとともに詰めている。セールスプロデューサーは、小売業での店舗販売経験者も多く、顧客の心を読むことに長けており、顔が見えない通販でもきめ細やかな対応を実現している。
  例えば、電話が多くかかっているにもかかわらず注文数が伸びない場合、まずコールセンターのリーダーが顧客の話の内容をつかみ、つまずくポイントを把握する。仮に衣類の注文で「洗濯機で洗えるのか」という疑問が多いなら、それをセールスプロデューサーに伝え、彼がその内容をスタジオで紹介するようにキャストに指示を出す。
  それを受けて、キャストが「洗濯機でも大丈夫です」などと伝えると、その後の成約がぐっとスムーズになるというわけだ。こうした対応ができる体制こそ、リアルタイムのマーケティング効果を最大限に引き上げている要因と言えるだろう。
  ほかにも、セールスプロデューサーは時間内に商品が売り切れそうな場合に次の商品を決めたり、番組のエンターテインメント性のひとつになっている購入客との生電話を適宜入れたりと、限られた時間を臨機応変にハンドリングしているのだ。
  「特に、衣類の透け具合など目で見ないと分からないようなものは、積極的にスタジオへ反映しています。セールスプロデューサーは常に電話の件数や注文数を見ながら、お客様が今何を期待しているのかを予測し、コールセンターおよびキャストと密に連携を図っています」と勝賀瀬氏。

セールスプロデューサーが指揮をとるデスク。生放送中は、コールセンターの混雑状況や商品の在庫情報がリアルタイムで更新される画面、商品情報、スタジオの様子、放送中の画面などいくつものモニターに同時に目を配り、指示を出す。オンエアーは生放送のリスクを回避するためにスタジオから7秒遅れで放送している。例えば、視聴者の声を伝えるとき、放送に適さない表現があった場合は、音声をオフにしてから放送する。使用している電話は、コールセンターとの連絡用。

“番組”を支える商品情報とゲスト

  1時間単位の番組はいずれも、台本がない。番組はキャストと、扱う商品のメーカーの開発担当者や商品ジャンルに詳しい人などの「ゲスト」の掛け合いを中心に進行するが、基本的に出演者同士の打ち合わせは放送直前の1回だけだ。台本がないから、生放送ならではの臨場感が生まれ、コンテンツとしての面白さにつながっている。こうした進行を実現しているのが「商品情報」とゲストだ。
  紹介する商品はおよそ1年〜半年前に決定し、その後、専門の部署でスペックを確認し、必要があれば自社で改めて品質検査を行うこともある。例えばレインコートとして仕入れた商品でも、同社の検査で撥水(はっすい)性に乏しいと判明したら、レインコートではなくファッションコートとして販売する。そして、どのような焦点の当て方をすればショップチャンネルの顧客に魅力的に映るかどうかを見極め、言葉選びや避けるべき表現も含めて独自の商品情報をまとめる。キャストは番組の約1か月前にそれを入手し、商品を研究しながら具体的な紹介の仕方を考えていく。
  ゲストは、「商品についてどんな切り口で質問しても的確に答えられる人」をアサインする。「キャストは番組進行のプロ、ゲストには商品についてのプロに来ていただいています。そうすることで、生放送中にコールセンターに多く寄せられた質問にもリアルタイムで答えたりすることが可能になります」

ショップチャンネルのモットーは、「心おどる、瞬間」を届けること。生放送の番組を見ている瞬間も、商品が手元に届いた瞬間も、「心おどる」喜びを提供することを目指す。スタジオの照明は普通のテレビ局と違い一般家庭と同じ蛍光灯を使っている。商品が届いたときに、がっかりさせないためだ。

セールスプロデューサーは、視聴者が何を迷っているのか、何を解消したら買うことができるのか、リアルタイムの情報をもとにキャストに指示をする。この日は「4日前後のお届けは残り○○個」「今日のみ6,930円」などをアピールしていた。

1時間語ることができる魅力ある商品を厳選

  顧客の9割は女性。勝賀瀬氏によると、世帯主名義で利用登録している顧客もいるとみられるため、「実際には9割を超えているかもしれない」とのことだ。そのうち40〜60代が76%を占めている。また、顧客層の85%が既婚者であり、過半数が専業主婦やパートタイム層。世帯年収の分布を見ても、4割が700万円以上となっており、時間的にも経済的にも余裕があるターゲットを捉えている。

イヤーピンをピアス風、イヤリング風、両方で使えることを伝える。使い方、石の希少性、流行トレンド、着けたいシーン、どれを押したらよいのか、見極めるのがセールスプロデューサーの腕の見せ所。イヤーピンは、放送開始数分で150件の申し込みに達した。

  おのずと取り扱う商品は女性向けのファッションや化粧品、ジュエリーなどが中心になる。「約7割が、女性の“美”に関する商品です。その他も、どちらかというと生活必需品というよりは“より便利に楽しく生活したい”といった要望を叶える商品が多いですね。商品の選定基準は独創性や希少性、値ごろ感など計7つ設けていますが、基本的に番組を1時間単位で構成しており、ひとつの商品・商品群を1時間かけて紹介しますので、商品の長所はもちろん開発秘話やエピソードなど、さまざまな視点から1時間語れる品物という点は共通しています」

店頭販売に向いている商品と、TVショッピングに向いている商品は特徴が異なる。写真はパナソニックから1万台販売の記念に贈られたジョーバ。1時間をかけて語るからこそ、店頭でのヒットに先駆けてショップチャンネルで売れることもある。

  その点では、そもそも一般小売店で取り扱う商品とは異なっていると思う、と勝賀瀬氏は続ける。店頭ではもちろんスタッフから1時間説明を聞くことはないし、今では中高年にも広がりつつあるネット通販も、自分で情報を調べこそすれ商品紹介をコンテンツとして長々と視聴することはないだろう。約40人の専属バイヤーが日本全国および世界各国から厳選し、語ることで魅力が伝わる商品群の力が、ショップチャンネルの強みのひとつになっている。
  実際に、ショップチャンネルでの紹介をきっかけに人気に火がついた商品も数多い。中でも同社内で語り草になっている好例が、パナソニック(旧ナショナル)の乗馬フィットネス機器「ジョーバ」だ。効果や開発に至るエピソードを丁寧に紹介したほか、キャストやゲスト皆で複数台に乗っているところを見せて画面的に楽しい演出も盛り込んだところ、大幅に売れ、その後に世間でヒットしたという。
  「比較的高価格の電化製品などでも、じっくり紹介しお客様に代わって試すことでヒット商品につながるケースは少なくありません。例えば掃除機なら、吸引力の強さをデモンストレーションして見せたり、排気のきれいさを機械で測定するなどして、裏表のない効果を伝えるようにしています」

顧客のニーズに応えるコールセンターの機能

  膨大な数の商品を24時間体制で扱うには、当然ながらコールセンターの質が大きく問われる。いくら魅力的であっても、オペレーションが悪ければ顧客はつかない。
  コールセンターは東京と大阪にあり、パートタイマー中心の受注オペレーター総勢700人を擁している。
  オペレーターの対応状況は、彼らを束ねるリーダーらが把握。モニター上で各席の対応時間などが分かるようになっており、注文の電話にしては長くかかっている場合、状況を確認し対応を交代することもある。リーダーと、注文以外の問い合わせ対応は正社員が務めている。
  ほかにも、ショップチャンネルがコールセンターにかける投資は少なくない。
  「ひとつは個人情報を扱うので、セキュリティー面を厳しく。例えばオペレーターの席を固定にせず、ロッカーを完備して携帯電話を席に持ち込まない、メモの一枚まで管理するなどを徹底しています。もうひとつは、快適な環境づくりに努めています。椅子を長時間座っていても疲れにくい高品質のものにしたり、天井を高くして閉塞感のないようにしたり。2つある休憩室も雰囲気を変えて、リフレッシュできるようにしています」

コールセンターには商品サンプルを設置し、的確な対応を可能にしている。


ショップチャンネルのコールセンターは「顧客の注文や問い合わせを受け止める」だけでない重要な機能を担っている。それは、顧客の声を番組へと反映することだ。オペレーターは放送中の番組を見ながら注文の電話に対応している。

臨場感を生産地から 新たな試みの番組も

  まだ捉えきれていないニーズに応えるべく企画しているのが、さまざまな切り口での特別番組だ。例えば2008年に開始した「日本を見つけよう」シリーズでは、ときに現地からの中継を交えて、地域の名産品だけでなく伝統や文化を含めて紹介している。昨年10月には、東日本大震災被災地を応援する意味も込めて、宮城県気仙沼市から中継を行った。
  現在、主な販売窓口は電話だが、Web経由でも購買できる。「購買環境も変化しているので、今の20代が40代になったときにどのような方法が適しているかを考えるのも課題のひとつ」と勝賀瀬氏。顧客の声を最大限に反映できる体制を整えながら、商品やコンテンツを絶えず進化させることが、支持を集める大きな理由と言えそうだ。