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ojoトップ  > 特集  > 広告デザインに活かす「伝える」技術:【 色に学ぶ 】生理反応に基づいた色使いのすすめ

特集広告デザインに活かす「伝える」技術

(2013.2.4/2013年2・3月号 特集)

【 色に学ぶ 】生理反応に基づいた色使いのすすめ
日本カラーイメージ協会 理事長   デジタルハリウッド大学 デジタルコミュニケーション学部教授   南雲 治嘉 氏

南雲氏

配色はデザインの重要な要素だが、最近の脳科学や素粒子理論などの発達で、色が人の生理に及ぼす影響が解明されつつある。赤を見るとアドレナリンが、青を見るとセロトニンが分泌されるという生理反応は、万人が変わらないという。最新の色彩理論をデザインにどう生かすか。色彩生理学を提唱する南雲治嘉氏に聞いた。

──「先端色彩」とは、どのような考え方なのでしょうか。

  世の中には「色で人の心がわかる、幸せになれる、モノが売れる」など、色に神秘的な力や過剰な役割を求めたものが多くあります。色占いはもちろんですが、実は色彩論や色彩心理と呼ばれるものも科学的根拠に基づかないものがほとんどだったりします。
  例えば、赤から順に、橙、黄、黄緑……紫、赤紫と色が円形に並べられた「色相環」というものがありますよね。色相環では紫の次に赤紫が続き、また赤に戻りますが、実際の光をプリズムで分光しても赤紫は実は出てきません。色相環はゲーテが考えたと言われていますが、そもそも赤と紫では、色の波長がまったく違います。ゲーテがスペクトルにはない赤紫を勝手に入れてしまったわけです。そういうように科学的根拠が曖昧で矛盾したまま、理論を体系化してしまったのが色彩論なのです。
  ところが近年、脳科学や物理学の発達により、光の性質を脳生理との関係から説明することができるようになってきました。それによって科学的根拠のある新たな色彩論が生まれてきています。私はこれを従来の色彩論と区別するために「先端色彩」と呼んでいます。

大事なのは色に対する生理反応

──具体的には、どういうことでしょうか。

  例えば、赤く見える物体は780ナノメートルという波長の光(電磁波)を反射しています。その光が網膜に当たってRGBの電気信号に変換され、脳の視床下部などを経て、最終的には視覚野というところに届き、人はそれを「赤」だと知覚します。つまり、色は色そのものとして存在しているのではなく、人間の脳を通してその色に見えているのです。同時に、RGBの電気信号が視床下部を通過するとき、例えば赤の場合はアドレナリンを分泌するよう促します。その結果、血流を促進させ、一時的に興奮し、気分が高揚するという生理反応が出てくるわけです。

図1  光の三原色(RGB)と色の三原色(CMYK)

人は赤(Red)、緑(Green)、青(Blue Violet)の「光の三原色(RGB)」によって、すべての色を知覚している。絵具や印刷インキの場合はシアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)の色の三原色(CMY)にキートーン(Key tone 黒)を加えたCMYKが使われる。色に対する人の生理反応を見る場合は、人間の知覚と同じ「光の三原色」で捉える必要がある。

  色によってこうした生理反応は異なります。青はセロトニンの分泌を促し、興奮状態を沈静化させます。それからピンクは、松果体で女性ホルモンの分泌を促します。女性ホルモンには肌をきれいにしたり、人間をやさしくする働きがあります。実際、アメリカでは刑務所の独房はピンクに塗られており、ピンクの独房に荒くれた男たちを1週間入れると、すごくやさしくなって出て来るということです。そういうように、科学的根拠に基づいて色と脳との関係を積極的に使っていく時代になってきているんですね。

──しかし、同じ色を見ても、人によって受け止め方は違うのではないでしょうか。

  確かにそういう面もあります。例えば、我々日本人にとって日の丸の赤は「太陽」ですが、多くの国の国旗では、赤は独立を勝ち取った時に流された戦士の「血」や闘う「勇気」を象徴しています。歴史的・文化的な「学習・知識」が違うからです。また、個人的な「体験・記憶」も人それぞれで、赤を見て暗い気持ちになる人もいないわけではありません。
  このように「生理」「体験・記憶」「学習・知識」という反応が瞬時に合成され、色に対するイメージが形成されます。しかし、それでも先ほど言った赤を見るとアドレナリンが分泌されるというような生理反応は、すべての人に共通して起こります。科学的根拠のあるその色彩生理を前提にしたほうがいい、というのが私の考えです。

「グレイッシュ(濁色)効果」を使った新聞広告好事例

トーカイ

トーカイ

2011年5月13日 朝刊

抵抗感を下げる配色

  人になじみやすい配色ということで言うと、トーンがグレイッシュであることが重要です。日本語で言うと濁色、グレーを混ぜたような色ですが、色になじみがあると人は抵抗感なく見てしまいます。ですから、安心感を与えたい広告などに向いています。その代表的な色が肌色です。
  グレーが混ざっていない肌色もありますが、ほとんどの肌色にはグレーが少し入っています。そういう肌色は、人間が一番好きな色なんですね。トーカイの新聞広告は、その良い例で、女性と赤ちゃんの肌色だけでなく、背景のカーテンや女性の着ている服もグレイッシュでまとめられています。「このカーテンや服の色は何色ですか」と聞けば、ほとんどの人は「白」と答えるでしょうが、実はグレーが入った白で、その工夫が人に通常より抵抗感なく、そして親近感を持って広告を見せる秘訣になっています。

「赤の力」を使った新聞広告好事例

NTTドコモ

NTTドコモ

2012年11月17日 朝刊

赤の持つ力

  赤は誘因性の高い色です。人の目を最も引く色で、信号の止まれが赤なのも、そうした理由の一つです。赤の使い方が非常にうまいと思うのはNTTドコモの広告です。この広告を見た人の目には、まず背景の赤が飛び込んできます。配色でいうと「ベースカラー(基調色)」と言いますが、この広告ではベースカラーの赤が背景となり、画面全体のイメージを作っています。また、使用している色数を絞ることで、インパクトや統一感を見る人に与えています。

白との対比による効果

  白は普通はほとんど意識されていない色ですが、この広告では赤との対比によって白が強調され、デザインの重要な要素になっています。白は光の色(白色光)であり、人を新鮮な気持ちにさせてくれる色です。白には「始まり」「誕生」というイメージもあります。赤と白を対比させることによって、エネルギッシュ(赤)かつ、新鮮(白)なイメージを伝える配色になっています。

「色による視点誘導」を使った新聞広告好事例

旭化成ホームズ

旭化成ホームズ

2012年8月16日 朝刊

読む順番を誘導する

  色によって文字の読む順番を誘導することができます。良い例が旭化成ホームズの広告です。この広告は、まず ①「30年一括借上げ」②同じ本文の赤で強調された小さい字 ③資料請求フリーダイヤル ④「最新資料、無料進呈。」の順で読まれると思います。なぜならこれは、人間の目には「最初に見た色と同じ色を追っていく」という習性があるからです。

彩度による順序づけも

  赤に限らず最初に見た色に、人の視線は引っ張られます。当然、最初に目に入るのは面積が大きいところ、文字が大きいところで、この広告で言えば、赤線で囲まれた「30年一括借上げ」です。それと同じ色の箇所を目は自然と追っていきます。また、「最新資料、無料進呈。」が文字が大きくても最後になるのは、同じ赤でも「彩度」、色の鮮やかさを下げているからです。これが「30年一括借上げ」と同じ赤なら、読者はどちらを先に読めばいいのか迷ってしまうでしょう。

Haruyoshi Nagumo

1944年東京都生まれ。金沢美術工芸大学産業美術学科卒業。90年ハルメージを設立。アートディレクター、グラフィックデザイナーのかたわら、色彩に関する研究を進め、色彩生理学を提唱する。デジタルハリウッド大学デジタルコミュニケーション学部教授・先端色彩研究室長。日本カラーイメージ協会理事長。著書に「色と配色がわかる本」(日本実業出版社)、「色の新しい捉え方」 (光文社新書) など。