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特集広告デザインに活かす「伝える」技術

(2013.2.4/2013年2・3月号 特集)

【 新聞編成に学ぶ 】ニュースを一瞬で伝える新聞の情報デザイン
読売新聞東京本社   編集局編成部長   土居 陽児

土居 陽児

新聞に掲載する記事を選択し、見出しを付けてレイアウトする。新聞という印刷メディアで、ニュースを届けるために進化してきたのが「編成」という仕事だ。日々の新聞紙面はどういう視点から作られ、デザイン上のポイントをどこに置いているのか。読売新聞の土居編成部長に聞いた。

──「編成」とは、どういう仕事なのでしょうか。

  ニュース、記事を選んで、見出しを付けて、それをレイアウトする(割り付ける)という仕事です。以前は「編集整理」と呼ばれていました。
  まず、朝刊に掲載される記事がどうやって決まるかですが、毎日、夕方に編集局次長、編成部長、出稿各部のデスクが参加する「編集会議」があります。その編集会議で、明日の朝刊の一面はこういう記事で行こうという方針が決まります。一面には四つぐらいの記事が入ります。大きな事件が起きたときは別ですが、深夜まで何事もなければ、翌朝の紙面は編集会議の方針に沿って作られます。

──一面以外の面は、どう決めているのでしょうか。

  三面の「スキャナー」で何を取り上げるかは、編集会議とは別の会議が事前に開かれ、決まっていますが、他の面は政治部、経済部など各部から提稿されてくる記事から作られていきます。
  では、各面に載せる記事は誰が最終決定しているかというと、編成部のデスクです。新聞は、全国版の紙面として大きく硬派面(政治、経済、国際面など)、軟派面(社会面、スポーツ面など)、特集面(文化、生活面など)に分かれていて、それぞれデスクがいます。 そのデスクが、各面に載せる記事を決定したら、それぞれの面に「面担」という担当編成部員がいて、それぞれの面を組んでいくことになります。
  面担の仕事は、記事をレイアウトし、見出しを付けることです。作業が終了し、記事校了というスイッチを押すと、そのデータが印刷工場に送られる。大まかにいうと、そういう仕事の流れになりますね。

「見出し」は見せるもの

──編成の仕事で最も重要なのは何でしょうか。

  我々編成部員が最も気を使っているのは「見出し」ですね。正確でわかりやすいことが、見出しの基本です。ところが、「正確さ」と「わかりやすさ」というのは必ずしも噛み合わない。そこが難しいところでもあり、腕の見せ所でもあります。
  新聞の見出しは「主見出し」と「袖見出し」でできています。メーンの見出しを「主見出し」、その隣に小さくあるのが「袖見出し」です。縦書き、横書き、変形とパターンはいろいろありますが、その主見出しを「8本から10本で付けろ」と新人の頃は必ず指導されます。「本」というのは新聞業界だけで使っている用語だと思いますが文字数のことです。しかし、8文字から10文字で、正確でわかりやすい見出しを付けるのはなかなか難しいことです。

──見出しの付け方に決まりはあるのでしょうか。

  強いて言えば、一番重要なものだけを残し、そうでないものは切り捨てるということでしょうが、最終的には編成部員のセンスと経験による部分が大きいですね。よく言われるのは、「見た瞬間に、読まなくても頭に入ってくる見出しを付けろ」ということです。我々の仕事は見出しを読ませたらおしまい、見出しは見せるものだと、よく言います。見た瞬間に理解ができる見出しが、良い見出しなんです。8文字から10文字という主見出しの制限も、そういう考えから来ていると思います。そもそも記事は見てもらえなかったら、読んでもらえないわけですから。

──見出しを考える時間は、どのぐらいあるのでしょうか。

  編集会議は夕方で、そこから4、5時間後に最初の版が出ます。ところが最初の4時間ぐらいは原稿の予定があるだけで、原稿はまだ編成部には届いていないことがほとんど。実際には5分で見出しをつけなければならなかったり、事前に原稿の内容を聞いてあらかじめ見出しを付けておき、原稿が上がったらその見出しで問題がないかどうか確認するようなことが日常茶飯事ですね。

──取り上げる記事や見出しまで、新聞各紙同じ時がありますね。

  もちろん他紙と見出しを相談するようなことは絶対にないわけですが、自然と揃うんですよね。これは、各新聞社が長年同じように編成のノウハウを積み重ねてきた結果だと思います。ただ、いきなり編成部に来た人にそれができるかというとできない。やはり、5年、10年と経験を積んでいかないと、見出しが自然に揃うまでにはならないですね。
  逆に、新聞社の判断によって記事の扱いがまるで変わってしまう場合もあります。2010年末に尖閣諸島で中国漁船が海上保安庁の船に衝突した後、ビデオ流出事件が起きましたが、あの時は、最終版を出力する50分ぐらい前に、ネットにビデオが流出しているという情報が流れました。最終版の紙面の変更にはまだ間に合う時間です。それをどう扱うか。一面に載せるべきなのか、社会面でいいのか、あるいは扱わないのか。そういう突然の事件の場合は、編集局次長と編成部長の話し合いで記事の扱いを決めるわけですが、尖閣ビデオの場合は、特にその判断が難しかったのです。

──どういう点がですか。

  国会や内閣のニュース、あるいは大きな事故や災害なら「一面のニュース」ということで確信が持てますが、それ以外のニュースは「そのニュースが世の中にどう受け止められるか」で判断が分かれます。尖閣ビデオの場合は、一面で扱ったのは読売だけで、他紙は社会面で小さく扱った。翌朝のテレビでは尖閣ビデオ流出のニュース一色でしたが、そういう判断というのは、自分を信じるしかないところがありますね。

──そういう判断を間違えることはない?

  時にはありますよ。朝4時を過ぎると他紙の早刷りが届きます。社に残っていて、見ると、こちらが明らかに記事の扱いを間違えたと気づくときもある。そういう朝は、どよーんとした気持ちで家路につくわけです(笑)。

2010年11月5日朝刊12版(初版)の一面

2010年11月5日朝刊14版(最終版)の一面

面担はコピーライター

──編成が最も気を使うのは見出しということですが。

  正確でわかりやすいことが見出しの基本だと言いましたが、それだけではないと思っています。記事を読もうという気にさせることも、我々の仕事で、面担はある意味コピーライターでもあると思っています。
  例えば、「自然界は厳しかった?」。水族館から逃げ出したペンギンが戻ってきたけれど、東京湾の水質が悪くて結膜炎になってしまったという話ですが、「自然界は厳しかった」とは、提稿された記事には書いてない。「ホタル族に賠償命令」も、マンションのベランダで煙草を吸っていた男性が階上の住人に受動喫煙で訴えられたという話ですが、「ホタル族」というキーワードは記事には出てきません。でもこのような見出しにすることで、記事を読みたくなりますよね。こういう見出しをひねり出せるかどうかも「面担の力」だと思います。

──そういう柔らかい見出しは、やはり社会面やスポーツ面に多いのでしょうか。

  政治面や経済面でも使わないことはないのですが、社会面では特に世の中に訴えかける言葉になっているか否かも大切なポイントになります。ただ、生活面のような固定読者がいる面は、見出しの文字もほどほどの大きさで、レイアウトもオーソドックスでいいということはあります。あえて見慣れたページにすることも、面の性格によっては大事なことです。実際、生活面のレイアウトはこの10年変わっていません。

2012年5月26日 朝刊

2013年1月9日 朝刊

情報を一目でわからせる

──最近の紙面作りで変わってきたことはありますか。

  東日本大震災以降、解説図をグラフィカルに作ろうという意識は各社出てきているのではないでしょうか。テレビのニュース解説でCGの使用は当たり前になってきていて、その影響もあるかと思いますが、今までのような平板な図やグラフだけではなく、インフォグラフィックスと呼ばれるような立体的なビジュアルの活用は多くなってきました。

──事故が起こってから新たに図を起こすわけですよね。

  笹子トンネルの崩落事故の時がまさにそうでしたね。早版で作って、それを修正して、最終版になる頃にはだいぶわかりやすいものになったと思います。文章でいくらトンネルの構造を説明してもわかりにくいものですが、ビジュアルで見れば一目でわかる。新聞はこれまで文字と写真が主体でしたが、今後はビジュアルももっと積極的に活用していきたいと思っています。

──「見出しは見せるもの」とという考えと通じるところがありますね。

  小説と違って、新聞はパッと見て、情報がすぐわかることが大事です。そのために、訴求力が高い見出しを作ること、見た瞬間にわかるレイアウトを作れるか否かは腕の見せどころです。今世の中で起こっていることを一瞬でわからせる。それが編成の力だと思いますね。