adv.yomiuriトップページへ

ojoトップ  > 特集  > イノベーションのためのエスノグラフィー:新聞の読まれ方を観察する新聞版エスノグラフィーの試み

特集イノベーションのためのエスノグラフィー

(2010.10.5/2010年10・11月号 特集)

新聞の読まれ方を観察する新聞版エスノグラフィーの試み
     

 「読売新聞の部数の多さは分かるが、読者一人ひとりがいったいどのように新聞を読んでいるのか、その実感が得にくくなった」「レスポンス広告と違い、企業広告やブランドイメージ訴求の広告では、広告の効果が見えにくい」
 生活者の行動が多様化しメディア環境も変化していく中で、このような声が読売新聞広告局に届くことが増えている。そこで、これまで行ってきた定量的なアプローチに加え、定性的な手法を用いて、読者がどのように新聞、広告に接しているのか「質」を知ることから広告媒体としての新聞を再認識してもらいたいと考えた。
 その方法の一つとして、読者の新聞の読み方をつぶさに観察する“新聞版エスノグラフィー”を試みることにした。具体的な方法としては、読売新聞の読者に当日の新聞を読まないでグループインタビュールームに来てもらい、我々の観察下で普段通りに読んでもらった。紙面をどんな順番で読んだか、面ごとの閲読時間、紙面のどこに目が行ったかなどを観察、同時に映像で記録し、閲読終了後にインタビューを行って、観察内容のトレースを行った。

観察から得られた知見

  これまで4人の観察調査を実施した。性年代はばらばらだが、共通して見られた新聞の読まれ方の特徴をいくつか挙げることができる。

[1]新聞は家族や周囲とのコミュニケーションに活用される

  自動車の特徴の詳細を家族に伝えたり、妻に買い物の相談をしたりするのに広告を使いたいという事例4の男性や、イベントなどの情報を新聞で収集し、家族で話題にするという事例2の女性など、4つの事例とも家族や職場での話題に新聞で得た情報を活用していた。
  詳報性と保存性という新聞が持つ強みを、再確認できる結果だろう。

[2]既に知っている情報について、新聞広告で理解を深める

  事例1の男性は、広告に掲載されている自動車の発売は既に知っていたが、詳細を確認するためやフェアの概要を知るために広告を精読。事例4の男性も、ある程度情報収集していた購入検討車種の広告について、写真をじっくり見るなどして改めてイメージを膨らませた。
  既知の情報に新たな情報が加わって認知内容がグレードアップすることが確認された。複数回接触やクロスメディアでの展開を考える上で、参考になるのではないだろうか。

[3]具体的な数字が、関心を高めたり、理解を深めたりするのに役立つ

  事例2の女性は、化粧品の広告の「まずは7日間お試しを」「研究10年」といったコピーに反応。商品力を裏付ける数字として関心を引かれた。事例3の女性は、旅行の広告のプラン内容を一つ一つ確認しながらこれからの旅行に向けて金額を熱心にチェックした。
  分かりやすい数字や金額を明示することは、理解やイメージの促進だけでなく、興味を引き付ける点でも効果的である。

[4]見落とし、読み残しがないか確認作業が行われる

  一通り新聞を読み終えてから、戻りながらもう一度新聞を読み返す「ブーメラン読法」の事例2の女性は、気になった内容を改めて読み返しながら、読み残しがないかを確認。社会面、地域面を行き来して読んだ事例4の男性は、何かおもしろい記事を見落としていないかを探した。
  確認作業で二度以上接するということは、そこにある広告に目が留まる可能性も2倍以上になるということになる。

[5]インターネットへの誘導は、いかに記憶に残るかが重要

  4人とも、気になった内容はインターネットで検索しようと思うものの、その場で検索することはほとんどなく、新聞閲読から時間が経過してから実際にパソコンを利用することが多いとのことだった。
  インターネットまで誘導したい場合は、検索キーワードや広告内容を印象付けて、時間がたっても忘れないよう記憶に残す工夫が必要だろう。

今後の課題と展開

  新聞の読まれ方、広告への接し方について理解するには、まだ事例の積み重ねが必要であると感じている。また、模擬閲読環境を作って観察しているに過ぎない現段階の手法を「エスノグラフィー」と呼んでよいのか、という疑問も生まれている。
  実際、日ごろ読んでいるのとは異なる環境での調査ということで、被験者の新聞の読み方がいつもと全く同じというわけにいかないことが推測されるし、インタビューの際に調査を意識したと思われる発言が見られたのも事実である。今後、そのようなバイアスをできるだけ排除する観察手法を検討したり、得られた観察結果をどう生かしていくかを考えながら、さらに事例と知見を蓄えていきたいと考えている。

(マーケティング部)

【事例1】60歳会社役員(男性)
 新聞は「ご意見番」、図表に関心

 他媒体で知っている情報も多い一面は流し読み程度。解説記事や識者の意見など、多方面からの視点、記事を熱心に読む。そうやって得た知識は、会社でも話のネタとして活用。記事・広告ともに、機能説明などの図表がキャッチとなり、閲読のきっかけに。特に関心がある自動車の広告は、フェア開催などの情報に注目。

【事例2】30歳専業主婦(女性)
 二度読みで読み残しチェック

 テレビ面から一面に向かって読みながら、気になる紙面を折り曲げる。一通り読んだ後、読み残しチェックでもう一度紙面を読み返しながら、折っておいた面を再度チェック。特に気になる記事、広告は破って取り置く。化粧品のサンプル引換券に大きく反応。

【事例3】27歳会社員(女性)
 新聞がないと一日が始まらない

 チラシ・別刷りに目を通してから、本紙を閲読。記事やテレビ面から、世の中の流れを確認。インターネットでわざわざ調べるほどでもない情報も、新聞に載っているとつい見てしまう。関心のある旅行関連の雑誌は、場所や料金を熱心にチェック。

【事例4】40歳会社員(男性)
 見落としチェックに反復読法

 読んでいるうちにバラけてきた新聞を整えるのがクセ。その際、読み落としていた記事や広告が目に入り読むことも。新聞ではニュースを知る以外にも、言い回しなどを仕事の資料の参考にも活用。買い替え検討中のファミリーカーの広告は、既知の情報についても改めて魅力を確認。映画情報はインターネットでも調べているが、細かい情報まで一覧で見られる新聞広告は魅力。

「よみラボ」Webサイト画面

個別事例の詳細な報告は、
よみラボ(http://yomi-lab.com/)」で公開中。
閲読、インタビューの様子を動画でご覧いただけます。