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広告リポートfrom Europe

(Wed Aug 05 10:00:00 JST 2015/2015年8・9月号 from Europe)

ファンの声が新たなビジネスチャンスに
国友 俊   パリ駐在

  パリの街には一つの通りにパン屋やパティスリーが複数立ち並び、スーパーのお菓子コーナーには数えきれないほど甘い物が棚を埋め尽くしている。この飽和状態ともいえる仏菓子市場で、大躍進を遂げた新興のブランドがあるのをご存じだろうか。

  その菓子メーカーは2004年に誕生した「ミッシェル・エ・オーギュスタン」で、幼なじみの創業者2人の名が企業名になっている。フランスで最も成功している企業の一つとしてメディアも注目するその陰には、彼らを一躍有名にした奇抜なゲリラパフォーマンスがある。上半身裸で牛の仮装をして地下鉄ホームを歩いたり、スーパーの中でマイケル・ジャクソン風のムーンウォークダンスを披露し、店員に注意されるところまで撮影し、動画サイトに投稿することで爆発的にファンが生まれた。他にもファンと試作品のアイデアを考えたり、講演会やキャンプを行ったりと、コミュニケーションを取り続けることで、今やSNSフォロワーが13万人以上いる。

  このようにユニークなバイラル・マーケティング戦略が若者中心に注目を集め、創業以来毎年2桁成長を続け、日本を含め世界各国での取り扱いが開始されるまでになった。このサクセスストーリーの鍵は、ファンにユーモア溢(あふ)れる仕掛けで継続的にアプローチすることで心を捉え、周りに思わず口コミで知らせてしまいたくなる、美味しさだけでない付加価値を提供できていることにある。

  さて、世界に6億人以上ファンがいると言われるサッカークラブ、英国「マンチェスターユナイテッド」(通称:マンU)についても触れてみたい。英国の一地方都市のクラブチームが世界中にファンを生み出し繋(つな)ぎとめるには、エリアごとに細分化した情報発信によるファンマーケティングが寄与している。フェイスブックフォロワーは、実に6500万人、NYヤンキースでさえ800万人強であるから、この数字の大きさを感じてもらえるだろう。チームに関連する様々な情報を、世界の18もの言語で、月間数千の投稿をSNSで配信するために、世界中に多くのライターを抱えている。クリック数を計測することで、エリアごとの人気選手を把握したり、ファンが求めている情報やタイミングまでデータベース化している。中国には1億人以上のマンUファンがおり、グッズ売り上げが英国全体を上回るそうだが、まさにこのデジタル戦略の賜物と言えよう。

  また、マンUのビジネスモデルは多角化されている。例えばMUファイナンスのクレジットカードのポイントで、トップチームの選手たちと交流ができ、特別なお土産まで提供されるそうだ。ファンにとっては何ものにも代えがたい機会が与えられる。

  世界進出を始めようとする菓子メーカーと、成熟したビッグクラブでは、扱うものやターゲットが異なるが、マーケティング手法には共通点もあることに気づかされた。ファンの趣味嗜好(しこう)についてソーシャルメディアの双方向性を利用することで情報収集し、より的確なタイミングに、ファン心理を捉えた発信を行える。その後もファンとのやり取りを、無駄にせず丁寧に行うことで、学びながら新しいビジネスアイデアにしていく。つまりファンの声が、新しい商品・サービスを生み出し、やがて彼ら自身を満足させている。ファンマーケティングが、この好循環の源になっていると言えるのではないか。

国友 俊・パリ駐在

車いすテニス王者の国枝選手にお会いする機会を得ました。一言一句に重みを感じ、これからの夢を「2020年東京パラリンピックで金メダルを獲ること」と宣言する姿を見て、心動かされるものがありました。ファンとして応援し続けたいと思います。