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広告リポートfrom Europe

(Mon Apr 06 10:00:00 JST 2015/2015年4・5月号 from Europe)

理想を求めるフランス社会の“シェアリング”
国友 俊   パリ駐在

  フランスでは、経済が停滞している反面、物価がとても高く、社会的弱者には過酷な環境だ。失業率は過去最悪の10%にも到達し、失業者数は287万人を超える状況が続いている。パリでは路上生活者や物乞いを見かけない日はない。

  このような社会状況の中、2013年からスタートしたのが、パンを買うお金がない人のために、匿名によるパンのシェア「Une baguette en attente(バゲットが待っている)」が行われている。活動に参加しているパン屋でバゲットを購入する際、自分の必要な本数より余分にパンを購入する仕組みで、お腹を空かせた人々に焼きたてのパンがシェアされる。

  30年前から有名コメディアンの発案で行われているのが「Les Restaurants du Coeur(心のレストラン)」だ。毎年寒い冬が訪れると、貧しい人々に食事をシェアするボランティア活動で、多くのメディアでも取り上げられている。食事に加えて「Les Enfoirés(馬鹿野郎たち)」と名付けられたチャリティーコンサートも開かれ、出演したアーティストは収益を寄付している。パリでの生活ではフランス人の冷たさを感じることも多かったが、本当に困っている人たちは見逃さない、優しい心を持っている。

  また、孤独な高齢者や経済的に困っている学生を支援する「世代間シェアハウス」も市民団体のサポートによって定着している。高齢者宅に親族ではない若者が滞在することで、双方にメリットがあり、若者は高額な住居費を圧縮でき、高齢者は見守られることで、孤独を免れ生活に張り合いが生まれる。超高齢社会を迎えた日本でも、フランスを見本として普及が進みつつあるモデルだ。

  パリが抱えるもう一つの社会問題が、車の排気ガスによる環境汚染だ。理想を追い求めるフランス人が、自動車交通量削減の一環としてスタートしたサイクルシェア・ヴェリブとEVカー(電気自動車)シェアリング事業オートリブは、世界に類を見ない規模での事業運営がされているシェアビジネスだ。

  ヴェリブは2007年からスタートし、現在では1日あたりの利用件数が11万件、年間では3500万件、登録者数は200万件以上(短期利用者を含む)いる。自転車2万3000台と1800箇所のステーションが、パリ市を含む30の自治体で展開されている。仏屋外広告大手JCドゥコーの子会社SOMUPI(ソムピ)が、パリ市から屋外広告の掲載権(広告パネル1600枚以上、10年間優先設置権)を受ける代わりに、ヴェリブを運営している。最近は「子供向けシェアサイクル」や、カフェとコラボレートしたアンテナショップ「ヴェリブの家」を設置するなど、新たな活動にも力を入れ始めている。

  オートリブは、2011年12月にボローレ社(運輸、エネルギー、電気自動車・部品等を扱う複合コングロマリット)が独自に開発したブルーカーを使用している。世界を見ればCar2Go(カーツーゴー)など多くのカーシェアビジネスはあるが、サイクル同様に、これほどの規模で成功している例は他にない。オートリブ利用カードは約6万3000枚所有され、女性の利用者も30%を超え、数年以内には事業が黒字化すると言われている。一方で車のメンテナンスや老朽化による買い替え等、乗り越えるべき課題は多いようだ。

  “シェア先進国”とも言えるフランス。今後他の国々への“シェア”にも期待したい。

国友 俊・パリ駐在

フォーマルなフランス料理では、お皿を交換するなどして、シェアして食べることは基本的にNGだ。他人のお皿に手を付けることは、「他人のカバンを開けるようなもの」と言われている。ひと口いかが?が許されても良い気がするが……。