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広告リポートfrom Europe

(Tue Apr 08 10:15:00 JST 2014/2014年4・5月号 from Europe)

激戦区で「一流らしさ」発信に喝采
川添泰樹   前パリ駐在

  モード最激戦区の一つ、パリ。自らのブランドビルディングと他ブランドとの差別化を図ろうとするブランディング広告が華やかだ。中でも特に“立体的”で“多角的”な広告手法が目を引く。

  パリ・オペラ座近くの一等地、デパートやブティックが軒を連ねるショッピングエリアに2009年10月、ユニクロがグローバル旗艦店を出店した。これは、ユニクロのブランドコンセプトを全世界に伝える情報発信基地で、東京、ニューヨーク、ロンドン、上海などと同様、世界の大都市に構えられる戦略店舗だ。出店の要件は、圧倒的な存在感を持つ大型店舗を、その国の“一丁目一番地”に構えること。そうすることでメディアの注目度や街ゆく人の口コミパワーが格段にアップし、ばく大な宣伝効果が得られるという。そしてブランド認知が進めば、さらに情報発信力が高まるという戦略だ。

  一等地に店舗を置くこと自体が最大のブランディング広告となり、マーケティング・ツールにもなる。そうした場所は世界でもごく一部に限られるが、その一つ、パリ・シャンゼリゼに店舗を構えるアバクロンビー&フィッチの戦略も面白い。自社のブランドイメージに基づいて独自開発した香水を店内に散布することにより、ブランドの世界観を顧客の嗅覚に刷り込ませるというものだ。同社は嗅覚が記憶の呼び起こしに作用しやすいことに着目し、その香りがアバクロを想起させ、競合他社との差別化を図るという“香りのマーケティング”を実践している。

  香水といって真っ先に思い出すのが、「シャネルNo5」という人も多いだろう。これまでカトリーヌ・ドヌーヴ、ニコール・キッドマン、オドレイ・トトゥといった名だたる女優が広告モデルに起用されてきたが、シャネルNo5を最も有名にしたのは、マリリン・モンローの「眠るときにベッドで身につけるのは、シャネルNo5だけ」という、あの伝説の一言だろう。

  これをインタビューで語るマリリン・モンローの肉声音源がシャネル社で発見され、昨年冬、同社のテレビCMで放送された。マリリン・モンロー自身はそれまでシャネルNo5の広告に出たことはなかったそうだが、彼女の一言が同商品のブランディングに大きく寄与したことは間違いない。

  すでに最高峰の地位にあっても、その場に甘んじないのが、一流の一流たるゆえんなのだろう。ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオール、ドン・ペリニョンなど60以上のラグジュアリーブランドを擁するLVMHグループは、“Les Journées Particulières(特別の日)”という、傘下メゾンの工房見学イベントを開催している。一流の製品が作られる工房で、ものづくり職人の製作工程を間近に見られるとあって、過去2回の開催で計20万人以上もの訪問客を集めるほどの人気を博している。一流のものづくりに魅了され、それがきっかけで製品により愛着が増すことになれば、ブランド自身、冥利に尽きるというものだろう。

  製品やサービスの質が同等レベルにあるとして、自社と他を分けるものは、その発信力の強さと最適な発信方法の選択力なのではないだろうか。ブランドコンセプトが、そのブランドらしさが巧みに表現された広告メディアに乗って響いてきた時にはいつも、情報の受け手として、広告の仕事に携わるひとりとして、思わず喝采を送りたくなってしまうのだ。

  
この号で私の執筆は終わります。3年間ご愛読いただき、どうもありがとうございました。