adv.yomiuriトップページへ

ojoトップ  > 広告リポート  > from Asia  > 一を見て十を“想像”する!?

広告リポートfrom Asia

(Thu Feb 05 10:00:00 JST 2015/2015年2・3月号 from Asia)

一を見て十を“想像”する!?
有坂朋宏   シンガポール駐在

  きっと君は来ない ひとりきりのクリスマス・イブ――。もはやクリスマスシーズンの風物詩となった山下達郎の「クリスマス・イブ」。ここ南国のシンガポールでは無論、街角で耳にすることはなく、昨年はいささか物足りないクリスマスだった。

  ところでこの名曲が一躍有名となったきっかけは、1989-1992年に一世を風靡(ふうび)したJR東海のCM「クリスマス・エクスプレス」。80年代後半に多感な時期を過ごした筆者にとって、とても刺激的で想像力を掻き立てられた広告だった。下手なコピーはなくても、音楽と映像を見聞きするだけで、「こんな恋愛してみたいなあ」と高校生ながらに思ったものである。

  さて、想像力を喚起させる広告は何もテレビCMだけではない。シンガポールの広告事例を三つ紹介しよう。昨年10月、乳がん啓発機関が乳がんの早期発見を促す啓発広告を制作した。青地に「f」のような文字が描かれ、おなじみのFacebookのアイコンかと思いきや、よく見ると胸を手のひらで触っているようにみえるというビジュアル。「If only you checked your breasts as often.」(Facebookをチェックするのと同じ頻度で、胸を触診しさえすればいいのに)というコピーが控えめに添えられている。SNSにはまっている現代人に、主体的に、乳がんの早期発見のための自己触診を促すユニークな啓発メッセージとクリエイティブだ。別バージョンでは、TwitterとInstagramのアイコンをデザインしたものもある。

  二つ目は昨年10月、地元紙ストレーツ・タイムズに掲載された、TAFEP(公正かつ進歩的な雇用慣行のための三者同盟)の新聞広告だ。TAFEPは、性別や人種、婚姻ステータスなどではなく、個人のスキルや経験、業務能力で採用される雇用機会の促進を図る団体だ。一見すると、管理職と思しき上司(男性)が、妊娠中の部下の女性と、要求が高い顧客について笑顔で話し合っているビジュアル。だが、吹き出しの中に示される上司のコメントは、択一問題のごとく2通りある。一つは「迅速に応対できる他の人を探すよ」で、もう一つは「顧客と家庭のニーズ、両立できる君がいて助かるよ」だ。言わずもがな、後者のチェックボックスにチェックがかかっている。女性の社会進出やアクティブ・エイジング政策に支えられ、いまやアジア随一の一人当たりGDPを誇るシンガポール。職場にありがちなシチュエーションを二つの選択肢で見事に描き、見る側に能動的に考えさせる秀逸な広告だ。

  最後はシンガポールのIKEAが実施したカタログキャンペーンを紹介しよう。同社は毎年9月に無料カタログを発行している。この紙カタログの紹介ビデオをYouTubeに投稿したのだが、まるで“iPadを説明している”ような錯覚に陥らせる内容になっている。これが「面白い」と評判になり、公開後わずか4日で700万回以上も再生された。ストレーツ・タイムズ(9月16日付)にも掲載された広告は、カタログの表紙に“フリップ”する人差し指が置かれただけのクリエイティブだが、あえて中身は見せなくても、北欧テイストのオシャレなインテリアや収納のアイデアがたくさん詰まったカラフルなページを想像してしまう。アナログなものをあえて“デジタル風”にアレンジし、ネット普及率の高いシンガポールにおいて、IKEAファンの心理を巧みに捉えた遊び心満載のプロモーションだ。

有坂朋宏・シンガポール駐在

香港で最も有名な道教のお寺のひとつ、黄大仙廟を訪れた時のこと。一般的に神様に線香を供える時は、3本ずつになっており、「天、地、人」三つが一つになるという意味があるそうです。「大砲香」と呼ばれる物凄い太い線香を3本掴み、頭上に掲げて開運を祈りました。