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広告リポートfrom Asia

(Fri Dec 05 10:00:00 JST 2014/2014年12月・2015年1月号 from Asia)

タイミングマッチは商魂逞しさの裏返し?
有坂朋宏   シンガポール駐在

  少し前になるが、友人とナショナルデー(8月9日)のイベントを観覧した。日本の建国記念日は、祝日という以外に特段盛り上がるということはないが、ここシンガポールでは、街のいたるところで赤と白の国旗が振られ、お祝いムード一色だ。

  地元紙「ストレーツ・タイムズ」には連日、ナショナルデー特集が組まれ、お祝い広告も百花繚乱(りょうらん)だ。ビールのタイガーは、“READY TO UNLEASH YOUR PRIDE”というコピーに、通常の青色缶が左右から引き裂かれ、赤色のお祝いバージョンが登場というビジュアル。マリーナエリアは式典を観覧する人々で埋め尽くされるが、その手にはしっかり“赤タイガー”が握られているのだ。一方、三大銀行の一つ、UOB銀行は8月9日付の同紙をラッピング広告で包み、格の違いを見せつける。「One nation. One people. One Card.」と題し、建国以来の発展の歴史を見届けてきた同銀行の企業精神を想起させるのが狙い。あらゆる企業にとって、建国記念日は企業価値をアピールする絶好のタイミングなのだ。

  もう一つ、この国が盛り上がるタイミングがある。2008年から開催されているF1シンガポールGPだ。F1唯一のナイトレースであるシンガポールGPは観光客誘致の目玉とされており、毎年1億4,000万~1億5,000万Sドル(約89億円~約96億円)の経済効果(AsiaX News)を上げている。それだけに、その経済効果にあやかろうと企業も鼻息が荒くなる。同GPのスポンサーであるシェルの広告は、LEGO、フェラーリと共同で、LEGOで作られた期間限定のフェラーリが購入できるキャンペーンを実施。子どもならずとも思わず欲しくなる遊び心のある広告だ。また、レース2日目の9月20日付「ストレーツ・タイムズ」には、ムンディファーマのラッピング広告が掲載された。一見すると場違いな雰囲気の製薬会社。コピーをみると「When it comes to healthcare, there are no pit spots…」とある。F1をヒューマンレースに見立て、国民の健康にずっと寄り添ってきた同社の存在感をアピール。ここまでくると若干、こじつけに過ぎない感じもするが、F1が巨大な広告マーケットであることを再認識した。

  さて、タイミングが重要なのは、ナショナルデーやF1といった華やかなイベントだけではない。ヘイズに関連した広告を紹介しよう。ヘイズとはお隣、インドネシアの焼畑農業や山火事の煙、排気ガスなどの微粒子が原因となって起こる大気汚染のこと。ヘイズが予見されると、国家環境庁が地元紙を中心に啓発広告を掲載し、PSI(大気汚染基準指数)のイロハを解説する。同庁はホームページでもヘイズ情報を日々、アップデートしている。ちなみにこの原稿を執筆しているいま、オフィス周辺のPSIは37で、空気の状態は「Good」だ。この数値が100を超えると「Unhealthy」になる。ヘイズを気遣うのが政府機関なら、逆に商機ととらえるのがこの国の企業。フレッシュジュースを販売するマリゴールドの広告は、「ビタミンと抗酸化物質を多く含む飲み物こそが、免疫システムを守ります」と自社製品のアピールに余念がない。

  極小国家ながらも、いまや国民1人あたりのGDPで日本を上回る経済国家として発展を続けるシンガポール。タイミングだけでなく商魂逞しい企業風土も、広告の重要な要素の一つなのかもしれない。

有坂朋宏・シンガポール駐在

ローカルフードが安く美味しく食べられる場所、それがホーカー。中でもリトルインディア東側にあるジャランバサールには、地元っ子に人気のラクサ専門店があります。ちょっぴりスパイシーなココナッツベースのスープに米麺のツルツルとした食感が絶妙です。