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広告リポートfrom America

(Wed Aug 05 10:00:00 JST 2015/2015年8・9月号 from America)

本質的な企業力のみがファンを生み出す
金田明浩   ニューヨーク駐在

  ニューヨークの食文化は東京とは異なるが、共通するのは「食」への高い関心だ。ニューヨーカーにおすすめのレストランを聞けば、自分自身のことのように喜んで教えてくれる。立場が逆なら私も同じだろう。食に関すると、「ファン」の姿は見えやすい。

  「スナップル」は多くのファンを持つ飲料ブランドだ。1972年にニューヨークで誕生した同ブランドは「天然成分」を売りに炭酸飲料や人工甘味料を好まない層の共感を呼び、フレーバー・ティーのトップブランドとなった。また、2004年から2009年までニューヨーク市に巨額援助を行い、代わりに自動販売機を公立学校内に設置するなど、地域に根付いたコミュニケーションでファンを育成している。

  今年、同ブランドは地元ファンに直球を投げるキャンペーンを実施した。「ニューヨークの皆へ 助けが必要です。他地域の人はニューヨーカーほどスナップルを愛していません。残念でしょ? では、なぜ好きか、他地域に向けて投稿して!」という広告をニューヨークの地下鉄に掲載したのだ。この広告は景品などの動機付けを図っていないが、SNSにはスナップルと撮った写真などが数多く投稿された。歴史と知名度があり、地元にいる根強いファンの存在を確信しているからこそ実施できたキャンペーンだ。

  ファンを生み出す要素は歴史や地域性だけではない。1993年創業ながら一貫した企業理念でファンを獲得したのは「チポトレ・メキシカン・グリル」だ。業態的にはファストフードだが、「Food with Integrity(健全な食べ物)」をスローガンに掲げ、有機野菜や放し飼いの家畜の肉を材料に使用するなど、今までのファストフードとは一線を画す方針で急成長を遂げた。商品だけでなく、木材やアルミ板を用いたデザイン性の高い店舗も評判で、店舗そのものがファンを生み出す場になっている。

  さらに、チポトレはファンとのコミュニケーションも大切にしている。「The Scarecrow(カカシ)」キャンペーンでは、質の高いアニメを通して加工食品の問題点を世の中に提起し、かつ他社とは異なる自社の姿勢をアピールした。また同じテーマのゲームアプリを配布し、ゲームで体験させることにより加工食品問題を「自分ごと化」させた。新商品や味など表層的ではない企業の本質を訴求することで、「一つのファストフード店」から「自分が支援したいブランド」にまでファンの心情を昇華させたのだ。2014年のカンヌ・ライオンを受賞したこの作品は同社公式サイトから閲覧可能なので、ぜひ見てほしい。

  また、同社はほとんど費用をかけない方法でもファンとの関係性を築いている。その一つが「チポトレ・ブリトー・ラブ・俳句コンテスト」だ。「Haiku」はアメリカでも詩の形態として知られていて、ブリトーへの愛を俳句にしてSNSに投稿してもらうキャンペーンだ。景品は食事券のみで豪華ではないが、ウケを狙った作品を多くのユーザーが投稿した。

  両社が実施した投稿募集型キャンペーンは、いずれも消費者にインセンティブをほぼ提供しないで成功した。これは企業の歴史、地域との関係性、企業理念に共感したファンたちの力のおかげであり、唐突に実施してもうまくはいかない。SNSの発達でファンと企業の距離は近づき、ファンを活用しやすくなっているが、真の関係性を構築するには、消費者に受け入れられる、企業の本質的な力が必要なのだ。

金田明浩・ニューヨーク駐在

赴任後初めての独立記念日を迎えました。街は「歴史的な日」というより「お祭り」ムードです。独立記念日は花火が有名で、日本同様の熾烈な席取り合戦が繰り広げられます。私もどうにかスペースを確保し、日本と変わらない夏の風物詩を感じることができました。