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広告リポートfrom America

(Thu Feb 05 10:00:00 JST 2015/2015年2・3月号 from America)

広告コピーは、短く、品良く、スマートに
井上 武範   ニューヨーク駐在

  「秘すれば花なり」隠すことで観客の想像力を刺激せよ―との世阿弥の言葉だ。比較広告や意見広告で言いたいことをがんがんぶつける米国には、このような広告のお作法はないものと思っていた。ところがあらためてみてみると、思いのほかシンプルで深い広告が多いことに気づかされる。

  宅配・航空貨物大手のフェデックスは11月、年末商戦が始まる感謝祭翌日のブラックフライデーに、雪の中配達するスタッフが微笑む全面広告を各紙に掲載した。コピーはただ一文、「このホリデーシーズンを至るところで支える30万人のチームメンバーに感謝する」とあるだけだ。よくあるブランド広告のようだが裏がある。前年の年末商戦では、ネット通販の駆け込み需要が急増したことと記録的な大寒波が重なって、クリスマスまでにプレゼントを届けられない事態が各地で相次いだ。特に競合のUPSでは荷物の17%が遅配となり、大きな問題になった。そうは書かれていなくても、フェデックスのこの広告を見てクリスマスの苦い思い出が頭をよぎった消費者は少なくなかっただろう。自社への信頼感の醸成と社内の士気向上を両得した巧みな広告だった。結果として同社はこの年末商戦期に、創業以来最多となる2億9000万個の荷物を取り扱っている。

  アウトドアブランドのパタゴニアは、環境保護を強く志向するビジネスモデルで知られる。同社は9月、ニューヨーク・タイムズ(NYT)に、店舗のドアによくぶら下がっている「CLOSED」の札をデザインした全面広告を掲載した。その下には小さく「気候変動マーチに参加するため、ニューヨークの店舗は今度の日曜日、午後3時まで閉店しています」との説明があった。これは国連気候変動サミットにあわせてニューヨークで行われた大規模デモで、パン・ギムン国連事務総長やレオナルド・ディカプリオをはじめ、約30万人が参加して話題になった。顧客そっちのけでデモに加わる企業姿勢を快く思わない人は、パタゴニアのファンにはいないという強い自信が見て取れる。

  さりげなく時宜をとらえた広告をもう一つ。フロリダ州のフォートローダーデール観光局は1月、NYTにクオーターページ広告四つを同日掲載した。広告は、浜辺でカップルが結婚式を挙げている写真に「She does, he does.」のコピーが添えられたものから始まる。ちなみに結婚式では「誓います」の意で「I do.」と宣言する。二つ目にはゲイのカップルが登場して「He does, he does.」になり、三つ目ではレズビアンのカップルで「She does, she does.」に。これは同観光局が主催する公開結婚式の参加者を募る広告で、四つ目で「Finally, we all do.」と締めくくっている。申し込みサイトには名前や連絡先に加えて、結婚するのが「新婦&新婦」「新郎&新郎」「新婦&新郎」のいずれかを選ぶ項目まで用意する気の利きよう。実はこの結婚式、フロリダ州が1月から同性婚を合法化したことを祝う行事と位置付けられている。米国のLGBT(同性愛者などの性的少数者)コミュニティーの市場規模は2013年、8300億ドルに達したとの推計がある。所得水準も平均を上回っているとされ、今や各業界が熱視線を送るマーケットになった。

  「念ずれば花開く」とも言う。さりげないメッセージほど、受け手が理解したときに強い共感を呼ぶのかもしれない。

井上武範・ニューヨーク駐在

年明けまもない日、出版社から本紙記事「餅詰まらせ9人死亡」について問い合わせを受けました。ネットを見ると報じたAP通信の記事がテレビ4大ネットをはじめ多数掲載されています。米国民は奇異に感じたでしょうが、Mochiの危険性はよく知ってほしいと思います。