特集

2009.12・2010.1/vol.12-No.9・10

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企業にとっての生物多様性

開園依頼の継続投資がディズニーパークの強み

 東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの09年度上半期の入園者数は約1230万人。開園25周年の昨年度上半期と比べ5.7%減少したと言われるが、実はこれは過去3番目に多い入園者数だ。不況に強いと言われるディズニーパークの強さは、どこにあるのだろうか。

――昨年来の不況は、入園者数に影響したのでしょうか。

 入園者数から見ると、あまり影響は受けていないと考えられます。昨年度は、東京ディズニーランド25周年のイベントがありましたから、過去最高の入園者数を記録することができましたが、1983年の開園以来の推移を見ても、周年の年はイベント活動に力を入れますから、入場者数は通常の年より多くなります。
 今年度前半も前年度比では減っていますが、過去3番目の入園者数です。不況の影響をまったく受けていないというと語弊がありますが、景気の影響を受けにくいビジネスモデルを確立できているのではないかと考えています。

――その要因は、何だとお考えですか。

 大きな要因は、経済環境や業績の動向にかかわらず、継続的に投資を続けてきていることだと思います。
 ショーやアトラクションのようなハード面の投資では、例えば「エレクトリカルパレード・ドリームライツ」といった大規模なショー、それから今年も「モンスターズ・インク“ライド&ゴーシーク!”」という新しいアトラクションを導入しましたが、そういうコンテンツに、リニューアルも含めて300億円から400億円を毎年、継続して投資しています。

高リピート率維持のために

――大きな継続投資を行っている理由というのは?

 リピーターの獲得がわれわれの経営のキーになっているからです。東京ディズニーランド、東京ディズニーシー合わせたリピート率は、90%を超えています。やはり、次に何か違う体験ができるという期待感や来たときの満足感がないと、なかなかリピートしてもらえない。そのためにハードの投資をしているということです。

ディズニーパーク年度別来園ゲスト数および営業日数 ※東京ディズニーシーは01年9月4日開業。これ以降は東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの合算データ
――来場者は、どのような人たちが中心なのでしょうか。

 多くは関東の方で、中部・甲信越、近畿の順番になっています。また、来園者の7割以上は女性です。東京ディズニーシーは、お酒が飲めたり、落ち着いた景観ということもあり、大人の方からの支持が多いという特色はありますが、東京ディズニーランドと共に、ターゲットはあくまでファミリー、家族連れです。

――ソフト面の投資には、どんなものがあるのでしょうか。

 主に従業員教育です。実は、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーは、ハードに対する満足感よりも、ソフトに対する満足感のほうが高い部分があります。自社で行っている調査以外にも、お客様から手紙や電話をいただくことが多いのですが、アトラクションやショーより、われわれが「キャスト」と呼んでいる従業員の接客についての賛辞が実は圧倒的に多いんですね。

――キャストというのは、アルバイトですか。

 一般に言うアルバイトです。現在の登録者数は約1万9000人で、もちろん、その全員が毎日働いているわけではありません。パークがオープンした1983年から、ずっと働いているキャストもいます。
 新しくキャストを採用した場合、まず、ディズニーテーマパークのキャストとしての基本的な導入研修があります。よく「ディズニーランドはマニュアルがしっかりしている」と言われるのですが、実は作業手順はありますが、おもてなしのマニュアルはほとんどありません。接客などは基本的にキャスト自身が自発的に考えて動くように奨励しています。
 ただ、「SCSE」という行動指針は設けています。これは行動するときの優先順位を表していて、SAFETY(安全)、COURTESY(礼儀正しさ)、SHOW(ショー)、EFFICIENCY(効率)の頭文字を取ったものですが、この四つのワードを重視した行動が大切です。加えて、その順番にも意味があります。例えば、効率のために安全をおろそかにすることがあってはならないということです。これに基づいて全キャストが、ゲストのために自分の判断でお客様に接するよう教育を徹底しています。

2008年4月15日 朝刊
2008年4月15日 朝刊

従業員満足を追求する

――そうした教育はアメリカのディズニーランドと共通のものなのでしょうか。

 これまで話したことは共通ですね。われわれの特色がより出ているのは、アメリカと共通する部分もありますが、従業員満足(ES)に対する施策です。キャストにここで働くことが楽しい、自分が成長する糧になると思ってもらえるような施策をいくつか行っています。
 例えば、年に1回ですが、キャストだけにパークを開放して楽しんでもらう日を設けています。そのときは、日ごろはキャストの管理をしている社員がアトラクションやショップなどのキャストを担当します。
 また、キャストのモチベーションを高めるために、表彰制度にも力を入れています。「ファイブスターカード」と言って、パーク内で適切な対応をしているキャストを見かけたら、管理職が渡すカードがあります。カードをもらったキャストは、後日行われるパーティーに参加できます。
 最近の取り組みとしては、「アイ・ハブ・アイデア」という制度があります。通常は担当部署がパーク内で売る商品の企画立案をしているのですが、キャストからもアイデアを出してもらい、よいアイデアなら商品化するというものです。例えば、ディズニー映画『トイ・ストーリー』にリトル・グリーン・メンという緑色の顔をしたキャラクターが出てくるのですが、それをイメージした「リトルグリーンまん」というお饅頭もキャストのアイデアで、パークのレストランの人気メニューになっています。

ゲストの声なき声を聞く

――来場者の声は、どのようにパークの運営に反映されているのでしょうか。

 市場調査やゲストから寄せられた声を拾う専門部署があって、そこで集約したゲストのニーズを全部門で共有するというのが基本です。
 ハロウィンやクリスマスといったイベントをはじめとするさまざまなプログラムに、ゲストニーズは反映されています。今年の夏は、東京ディズニーシーで「ボンファイアーダンス」という盆踊りショーを実施していますが、これもゲストの声を反映させた内容になっています。
 ただ、ゲストの声の中には、なかなか表に出てこないものも多くあるため、こうした潜在的なゲストニーズの把握や調査が必要と考えます。この方法の一つとしては、ショーやアトラクションを体験した後のゲストの表情を観察することも非常に効果的です。

――ゲストニーズで、以前と変わってきたものは?

 「ボンファイアーダンス」もそうですが、見て楽しむというより、一緒になって踊ったり、歌ったりというニーズが増えてきていますね。ですので、最近は、ショーやパレードにも参加要素をできるかぎり増やすように意識しています。

「夢」に投資し続ける

――首都圏でディズニーランドを訪れたことがない人はどのくらいいるのでしょう。

 そういう数字は把握していませんが、これまで来園されていない方に来ていただく施策は行っています。例えば、今年から始めたのが、“おとなの水曜日”パスポートです。まったく新規というより、今まで子供連れで来ていただいた方も、子供が大きくなると来園する機会は少なくなります。そこで、45歳以上の方を対象に、毎週水曜日に割り引きになるショッピングチケット付きのパスポートを発行しています。この年代の方は、ショッピングや景観、ショーを楽しまれるという傾向が強くなってきます。また、パーク内のプログラムでも、趣味を持たれる方をターゲットにしたカメラの撮り方や植栽をテーマにしたイベントをいくつか行ったりもしています。そういう新しい楽しみ方の提供に、日々取り組んでいます。

2009年5月13日 朝刊
2009年5月13日 朝刊
――ハードとソフトへの投資は今後も変わらない?

 それが基本ですね。テーマパーク事業で昨年は3000億円近い売り上げがありますが、そのためにハードだけでも毎年300億円から400億円を投資し続けます。ソフトへの投資も含めるとそれ以上になります。
 昨年の25周年で、改めて東京ディズニーリゾートのベーシックな魅力は何かと問い直して、たどり着いたのが「夢」でした。その夢を提供するために当社は走り続けます。


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