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2009.12・2010.1/vol.12-No.9・10

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芸術の楽しみ方を教えてくれるアートブック特集

 この20年ぐらいの間に、日本人の美術への親しみかたがずいぶん変わったように思う。まず、全国的にいい美術館が増えた。地方の美術館は旅行の目的のひとつとなりうる。展覧会など企画の内容も工夫され、洗練されている。優秀な学芸員が増えたのだろう。有名な学芸員がヘッドハントされることもある。そして何より、どの美術館にもたくさんの入場者がいる。併設されたカフェやレストランもにぎわっている。美術館がコミュニティーの核として活きている。
 作品を見る私たちの態度も変わった。昔は、なんだかありがたいものでも拝むように見ていた。「これはいい絵なんだから、感動しなくちゃいけない」と自分に言い聞かせるように。
 今はもっと気軽だ。雑貨店でしゃれたイスを見るのとほとんど同じではないか。「これ、いいね」「おもしろいね」と気軽に言える。「好きじゃないな」「肌に合わないな」とも。そういえば、最近のファッション誌などでは、「美術」「芸術」よりも「アート」、「鑑賞」よりも「楽しむ」という言い方のほうが一般的である。
 「アート」の売り場を目玉にする中型・大型の書店も増えている。棚には内外の画集や写真集、評論などが集められている。長時間の立ち読み(座り読み?)客のために、イスを置いている書店まである。
 こういう時代に、「2009autumn アートブック特集」(9月26日夕刊、第14面)はとてもぴったりだ。山田五郎さんを案内役に、アートブックを通じてのアートの楽しみ方を教えてくれる企画である。

アートブック自体が一個の「作品」

 テレビやラジオで活躍する山田さんは、講談社の名編集者だった。若者雑誌『Hot−Dog PRESS』の編集長をつとめたのち、アート系の分冊百科なども手がけてきた。私はたまにラジオ局の楽屋などで山田さんと雑談することがあるが、いつもその博覧強記ぶりに感心する。しかも山田さんは物知りであることを鼻にかけない。
 〈アートブックとは単なる「実物の代わり」ではなく、それ自体が一個の「作品」。本そのものがハードとして美しい存在であってほしい〉
 こう山田さんは述べている。そうなのだ。アートブックは「アートのブック」であると同時に、「ブックがアート」な存在でもある。
 「芸術」というと、いわゆる泰西名画的なものを連想するが、この企画で紹介されている本は多種多様だ。中野京子『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』もあれば、『芥川龍之介の書画』もある。『印象派はこうして世界を征服した』もあれば、『デザイン学 思索のコンステレーション』もある。さらには紙とカッターナイフで世界遺産を表現する『紙ワザ建築 世界遺産』や『やさしく編む 竹細工入門』も。
 〈アートに難しい「お勉強」は不要です。まずは暮らしに取り入れて、日常的に接していけば、自然と観賞眼が養われ、どんどん楽しみが深まるでしょう〉と山田さんはいう。
 美術館を訪ねるのもいいけど、部屋でアートブックを眺めるのもいい。美術館ではウイスキーを飲みながらとはいかないけれども、自分の部屋なら誰にも叱られない。心もからだも、あたたかくなる。

9月26日 夕刊
9月26日 夕刊

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