Fashion Insight

2009.12・2010.1/vol.12-No.9・10

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ブランドビジネスのトップに聞く(7) ワールドワイドからグローバルへ世界の市場をより立体的に捉えたい

フランシス ベラン 氏
アンディ ルービン
(Andy Rubin)

ケンブリッジ大学で法律を学んだ後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。しばらくアメリカの投資銀行に勤務した後、1991年にファミリービジネスであるペントランド グループに入社。1995年に同グループのマーケティング・ディレクターに就任。1998年には同グループCEOに就任する。世界スポーツグッズ産業連合会のボードメンバーでもある。 

 ペントランドグループは、スピード、ラコステ、エレッセ、カンガルーなど数々のスポーツファッションブランドを保有している巨大グループである。保有ブランドの製品は世界176か国で販売され、2007年の売り上げは18億ドル、社員の数は1万2000人。もともとは英国リバプールで1930年に創業された靴製造会社「リバプール・シュー・カンパニー」が母体。同社は1964年にロンドン株式市場に上場、1980年代にリーボックの株を取得したことを皮切りに(その後売却)、数々のスポーツブランドを買収し、いわゆるブランドのポートフォリオ(分散投資)ビジネスを展開。保有ブランドの事業をワールドワイドに展開するのと並行して、新しいブランドを獲得し、それを成長させることにより、事業規模を広げて現在に至っている。これだけの巨大企業でありながら、創業者の一家であるルービン家保有のファミリービジネスであるところが興味深い。創業者の孫であり、3代目CEOであるアンディ・ルービン氏はスポーツと英国絵画を愛するジェントルマン。スポーツとファッションの関係やブランドビジネスなどについて聞いてみた。

――ときどき日本へはいらっしゃっているんですよね。

 年2回ぐらい、日本のパートナーさんにお会いするために来ます。今回は神戸にも行ってきました。日本では、靴の生産地って神戸と東京の浅草くらいしかないので、いいパートナーさんを探しに行ってきました。

――そもそもは、お祖父様が始められた靴屋さんが母体ですね。

 はい。ファッションシューズの会社としてスタートし、父の時代に「これからはスポーツシューズも伸びるんじゃないか」と、ファッションとスポーツを柱に、まず1981年に当時新進のリーボックに資本を投入しました。今は、ファッション、スポーツ、アウトドアという、三つのセグメントでビジネスを展開しています。

――今やスポーツは広く一般の人たちのライフスタイルの一部ですね。

 欧米や日本などの先進国では、完全にそうですね。また、中国やインドなどでは、スポーツブランドがひとつのステータスシンボルになっています。ということで、スポーツウエアやスポーツシューズのビジネスはこれからも伸びていくでしょう。ところで、世界の人たちがスポーツをやろうというときに、一番やりたいスポーツというのはなんだと思いますか? ひとつは、ウオーキング。もうひとつは水泳です。この二つは、ビジネス面でも、ものすごく重要なスポーツです。

――水泳といえば、北京オリンピックで、スピードの水着レーザーレーサーが話題になりましたね。

 水泳競技の勝者の94%はレーザーレーサーを着用していました。国際水泳連盟の規定から外れたボディースーツが他社で開発されるなどの騒動がありましたが、私たちは規定の中で、最高の水着を作るまでです。スピードには、アクアラボという研究所があり、ここで常に最先端の水着を研究開発しています。

英国最優秀オフィス賞を受賞したペントランド本社
英国最優秀オフィス賞を受賞したペントランド本社
ペントランド本社内のショールーム
ペントランド本社内のショールーム
2008年、ペントランドは英国女王賞の国際貿易部門賞を受賞。業績、ファミリー・ガバナンス、企業社会責任においてファミリービジネス協会/JPモルガン/ロンドン・ビジネススクール賞の最優秀ファミリービジネス賞を受賞。
――スポーツウエアも、機能面だけではなく、普段のファッション同様に、デザイン性やファッション性が求められるようになってきましたね。

 スポーツウエアをいかにファッショナブルにするかは、いつも考えていることですね。例えば、私たちのブランドのひとつであるバーグハウス。極寒の地でも着られる、エベレストにも行けるような、最高のアウトドアグッズを作るブランドです。このブランドとジェフ・グリフィンというデザイナーがコラボして、特に日本のマーケットを想定して、日本で売り出したところ、すごく売れました。大成功でしたね。

――あるブランドを傘下に収めるというときに、もちろん経営的な数字も大切だと思うんですが、その判断をするときに最も大切なことは何でしょうか。

 まず、ゆっくり育てられるブランドかどうか。ファミリーで経営している会社なので、ビジネスを非常にロングタームで考えています。それと、人。そのブランドを担うクリエイターやデザイナーがどんな人たちで、どんな考え方でビジネスをしているかが重要です。

――資料によると、日本を含むアジアのマーケットは13%です。日本のマーケットをどういうふうに考えていらっしゃいますか。

 1991年に私が会社に入ったときは、75%は英国国内のビジネスでした。それが、2008年は英国国内のビジネスは25%。それだけワールドワイドな展開になってきたわけですが、今後は、「ワールドからグローバルに」と考えています。つまり、世界の市場というものをより立体的に捉えたい。ただ、輸出するだけではなく、その国の文化を理解したうえでのビジネスを展開していきたい。その中で、日本はスポーツもブランドも好きだし、ファッションにもすごく関心がある。もっと伸びていくと思っています。将来、全体の売り上げの30%はアジアとなるようにしたい。また、日本のお客様は世界でも最高のクオリティーを望んでおられるので、日本人の体形や好きな色などを日本のパートナーとともに考えていきたいですね。

アンディ ルービン氏
――グループの中で、今、特にこのブランドに注力しているというのはありますか?

 一種のリスクマネジメントでもありますが、どこかひとつのカテゴリーに偏ったりすることがないようにいろいろなセグメントを網羅するようにしています。可能性のあるセグメントを探し出し、そこで新たなブランドを育てていく、ということがポートフォリオビジネスではとても重要です。

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 日本では3代目というと、とかく言われがちだが、そんなこととは無縁の、とてもエネルギッシュでかつとても丁寧に質問に答えるジェントルマンだった。

日本ファッション・エディターズ・クラブ http://www.fec-japan.com

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