from America

2009.12・2010.1/vol.12-No.9・10

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金権選挙がはらむ危険

 2009年大リーグのワールドシリーズは、サバシア、バーネット両投手、強打のテシェイラと、例年以上の大型補強を行ったヤンキースが、松井秀喜の大活躍もあり、9年ぶりのワールドチャンピオンに輝いて幕を閉じた。FOXで中継された同シリーズは連日、高視聴率を記録し、ニューヨークではヤンキースファンがテレビに釘付けとなっていた。
 ヤンキースが王手をかけ、迎えた11月2日の第5戦。フィリーズの本拠地、シチズンズ・バンク・パークで繰り広げられた熱戦の裏では、もう一つの争いが最終局面を迎えていた。イニングの間に流れたCMは、翌日に投開票を控えた、ニューヨーク市長選の候補者、マイケル・ブルームバーグ氏による、投票前最後のキャンペーンだった。
 任期満了に伴うニューヨーク市長選は、事実上、現職のブルームバーグ氏と市監査役のウィリアム・トンプソン氏の一騎打ちとなった。結果は、3選禁止の条例を改正してまで出馬したブルームバーグ氏が、3選を果たした。
 この選挙で最も話題となったのが、ブルームバーグ氏が個人資産から投じた選挙資金の額である。8500万ドル、9000万ドルなどと報じられたが、実際には1億ドルを優に超えていたと言われる。対するトンプソン氏の選挙資金は推定700万ドルで、ブルームバーグ氏の10%にも満たない。
 ブルームバーグ氏は、この潤沢な選挙資金を費やして、大規模な選挙キャンペーンを行った。中心となったのはテレビCMで、先述のワールドシリーズ中継など高額の広告枠を大量購入し、主にトンプソン氏へのネガティブ・キャンペーンを展開した。そのほか、レターサイズのダイレクトメールやWEBメール、自動音声によるアピール電話など、その内容は多岐にわたる。
 「すべての有権者へメッセージを届ける」ことを目標とした、この大キャンペーンにより、ブルームバーグ氏が勝利した翌日の各紙は、それまでの同氏支持の姿勢から一転、批判的な論調が目に付いた。その理由として、事前の世論調査等で15ポイント近くの大差がつくと予測されていたのが、結果は5ポイントの僅差だったことが挙げられる。
 3選を禁止する条例の改正を行ったことが主な要因とされていたが、法外な資金を投入した過剰なキャンペーンが反感を買ったという向きもある。「毎日のように届く大量のダイレクトメールや、しつこい電話にうんざりした」という街の声や、「キャンペーンの手法と、ストーリーの組み立てさえうまくいっていれば、トンプソン氏が勝っていた」と報じた新聞もある。
 オバマ大統領が大統領選期間中に集めた選挙資金が、7億ドルとも8億ドルとも言われているように、米国では選挙の際に多額の資金を投入し、「金権選挙」と非難されることが少なくない。それでもやはり、選挙資金の差が結果に大きく影響することは否めない事実であった。だが今回、教育政策や犯罪対策などで高い支持率を誇っていたブルームバーグ氏による過剰なキャンペーンは、逆効果だったように思えてならない。
 選挙キャンペーンによるばく大な広告収入を手にする放送局にとっては“おいしい話”かもしれないが、「ヤンキースはペナントを買い、ブルームバーグ氏は市長職を買った」という市民の声もあり、広告が壮大な無駄遣いにならないよう、使い方を改めて考える必要がありそうだ。

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