読売新聞の広告反響調査「AdVoice」とは、「いつでもすぐわかる」定型調査(無料)と「なんでもよくわかる」オーダーメード調査(有料)の2種類から成るインターネットモニター調査です。詳細は、こちら(http://adv.yomiuri.co.jp/yomiuri/advoice/)
このコーナーでは、主に「AdVoice」定型調査の結果データを分析してお伝えしていきます。

8月6日 朝刊
エアコンの使用などで電力の消費量が大幅に増加する夏場、東京電力は毎年、省エネを呼びかけるキャンペーンを実施しています。その一環として8月6日朝刊に掲載された広告についての反響を、アド・ボイス調査の結果から紹介します。
テレビCMで聞いた曲を歌わせる
「♪あけたらしめよう、あけたらしめよう、れいぞうこ〜」。テレビCMで東京電力のキャラクター「でんこちゃん」が歌う三つの曲の楽譜と歌詞が新聞広告には掲載されています。楽譜があると、つい歌ってしまう人は多いのではないでしょうか。テレビCMでは聞き流してしまったかもしれない内容が、改めて歌うことでしっかり頭に残るでしょう。読者が自分で音声を補うことで、紙の媒体である新聞が音声付きの広告媒体になる、というのは発想の妙です。
実際、自由回答でも「テレビCMの曲を思い出して、楽譜を見ながら朝から歌ってしまいました」(女性30代)、「この譜面で子供に電子オルガンで弾いてもらった」(男性40代)などの声が集まりました。
この広告以外での広告接触状況を見ると、「テレビコマーシャルで見聞き」していた人は34.3%です(表1)。「でんこちゃん」が歌う今夏の当該テレビCMの開始は7月18日で、1日平均十数本程度放映されていました。この新聞広告が掲載された8月6日までの3週間弱で3分の1強まで認知が広まっており、読者がスムーズに新聞広告を受け入れる準備が整ってきていたと言えます。
このような「テレビ→新聞」という誘導に加え、「更に詳しい省エネ情報について知りたくなったので、東京電力のホームページでチェックしようと思いました」(男性30代)と自由回答にあるように、「新聞→ウェブ」の誘導も起こっています。同社サイト内には「CMライブラリー」がありますから、テレビCMを知らずに新聞広告を見た人は、最初に楽譜、あとで音声動画という逆の順番で歌に接することができる仕組みです。
「まじめなテーマ」+「歌」で好印象
広告を「確かに見た」+「見たような気がする」人の割合である広告接触率が84.3%、「確かに見た」人の割合である広告注目率※が61.4%で、それぞれ予測値を22.7ポイント、19.2ポイント上回っており、多くの人が記憶したことがわかります(図1)。
広告を見たことによる行動喚起では、「よい広告を出していると思った」(31.8%)、「あらためてこの広告主に注目した」(32.6%)が4〜8月の調査結果(朝刊・全7段多色の広告46件)の平均値を大きく上回りました(表2)。二つとも46件の中で2番目に高いスコアです。
省エネは広く関心を集めるテーマですが、広告訴求でのまじめ度合いのさじ加減によっては堅苦しく思われる恐れもあります。今回は歌で省エネを呼びかける広告だったことが、「押し付けがましくなくていいと思った」(女性30代)、「説教くさくなく面白い」(女性40代)と、好印象につながったと思われます。「歌がかわいらしくてテレビCMが好きだったので、この広告を見て、さらに好感が持てました」(女性20代)といった意見もありました。

でんこちゃんのキャラクター力
広告の反響が高かったもう一つの理由は「でんこちゃん」のキャラクター力です。「でんこちゃん」は1988年から20年以上も続いている息の長いキャラクターで、自由回答でも、「東京電力といえば、でんこちゃん。このCMシリーズ大好きです」(女性30代)、「活発で明るいキャラクターは、東京電力のイメージアップに大いに貢献している」(男性30代)などの好意的な意見が多く見られました。継続性のあるキャラクターの起用によって培われた企業イメージが広告反響の下地としてありました。
しっかりしたキャラクター力、まじめなテーマを歌でうまく伝えたクリエイティブ、新聞とテレビ、ウェブを連携させたクロスメディア展開がうまくかみあった好事例です。
(下宮)