from America

2009.10・11/vol.12-No.7・8

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違法薬物のリスク、知っていますか?

 日本では芸能人が相次いで薬物事犯により逮捕されたことで、捜査経過などの関連報道が過熱している。しかし、違法薬物の所持や使用についての考察よりも、その芸能人の交友関係や過去の奇行、生い立ちの暴露など、ゴシップネタばかりが目に付く。
 私たちは覚せい剤や大麻などの違法薬物について、どれだけの知識を持っているだろうか。多くの人は「気分の高揚を得られるが、依存性が高い」「薬物中毒になると、精神的、肉体的な損害を被る」「最悪、死に至る」など、危険なのでとにかく使ってはいけない、ということは理解しているであろう。しかし、違法薬物の種類や使用による具体的な弊害、回復へのプロセスなどを詳細に説明できる人は少ないのではないか。それは、私たちが違法薬物及びその危険性についての正確な情報を得る機会が少ないことが理由の一つではなかろうか。
 8月20日付のニューヨーク・タイムズに「Time To Talk」というWEBサイトの全面広告が掲載された。女性がうつむき、悩んでいる写真と、「言葉が見つからないときは」というメーンコピーで構成されている。
The Partnership for a Drug-Free America
The Partnership for a Drug-Free Americaが各媒体に出している広告
 広告主は「The Partnership for a Drug-Free America」という非営利団体で、子供に対する違法薬物やアルコールについての教育支援活動を行っている。同団体への資金援助者リストは、個人、財団、メディア、広告会社、その他企業など数百に及ぶ。
 「Time To Talk」は同団体が運営するサイトで、25歳以下の子供を持つ親に、違法薬物やアルコールのリスクについて話すためのアドバイスや具体的な会話集を提供している。特に思春期や、進学、引っ越し、恋人の出現、親の離婚など、環境に変化があった時の注意を促しており、子供とコミュニケーションを取り、常にかかわりを持つことが重要だとしている。
 では、米国での違法薬物使用実態はどうか。米保健社会福祉省が今年発表した、薬物使用と健康に関する2006−2007年全国調査によると、全米国民(12歳以上)の8.1%が1か月以内に違法薬物を使用したと答えており、18−25歳では19.8%と、約5人に1人の計算となる。
 米国の国民性や歴史的背景、多民族国家であることなどから一概に比較はできないが、私たち日本人から見ると、驚くべき数字であることは間違いない。事実、国立精神・神経センターが2007年に行った、薬物使用に関する全国住民調査によると、覚せい剤や大麻の生涯経験率ですら、1%にも満たない。しかし、昨今はインターネットなどにより、違法薬物の入手が容易になり、違反者の低年齢化が進むなど、将来に強い危機感を抱かざるを得ない。
 米国では先述の「Time To Talk」以外にも、若者へ違法薬物やアルコールのリスクを啓蒙するほか、薬物依存者に対し、回復支援を行う企業、団体が少なくない。違法薬物の使用実態を認識し、その対策を講じ、多くの個人、団体の支援を得て、広く活動を行っている。そして世間も、新聞広告などを通じ、その存在を認知しているのだ。
 私たちも、逮捕された芸能人を、対岸の火事として好奇心を持って眺める前に、しっかり足元を固めるべきではないだろうか。

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