Fashion Insight

2009.8・9/vol.12-No.5・6

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ブランドビジネスのトップに聞く(5) 男性に人気のビジネスバッグをビジネスウーマンにも

ジェローム H.ローゼンバーグ 氏
ジェローム H.ローゼンバーグ
(Jerome H.Rosenberg)

1972年に来日し、日本アムウェイ株式会社のマーケティング・マネジャーとして11年間勤めたのち、レブロン株式会社社長、モトローラ株式会社セルラーフォン部門ジェネラル・マネジャー、パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャパン株式会社社長などを歴任。日本におけるトゥミのビジネスに、コンサルタントとして数年間携わり2008年6月に株式会社トゥミ ジャパンCEO就任。2009年6月より、同社代表取締役社長兼CEO。

TUMI
http://www.tumi.com
 
――世界的に経済状況が悪いですが、リーマンショックの後、トゥミも影響を受けていますか?

 そうですね。社会全体で旅行の需要が減りましたから。会社もなるべく出張をしないように費用をカットする。ですから、旅行バッグや出張用のバッグの需要は減りました。ただ、トゥミには日常的に使うビジネスバッグのラインがあり、こちらは影響が少ないですね。

――トゥミは1975年創業。非常に短期間でワールドワイドなブランドになりましたよね。その要因はなんだと思われますか?

 本当のビジネスバッグを、つまりビジネスに本当に必要な、丈夫で機能的な「道具」を創り出せたからではないでしょうか。それがまずアメリカで人気を集め、アメリカを訪れた外国人の目にとまるようになり、全世界へと流通が広がっていきました。商品の95%は全世界共通のラインアップです。

――95%ですか?

 そう。例外はありますが、基本的には全世界同一商品。同じ商品を全世界で売ることができれば、非常に効率的。トゥミの大きな特徴のひとつです。

――これはファッションではできないことですね。

 ええ、身体の大きさやかたちが違いますからね。もちろん、アメリカのバッグが日本人に大きすぎるということはあります。それでちょっと小ぶりのバッグを作りますが、それは日本以外のいろいろな国でもニーズがあるんです。

銀座、交詢社通りの旗艦店
銀座、交詢社通りの旗艦店
――それとやはり、「黒」というのがすごく良かったのではないかなとも思うんですけれども。

 まあ、黒はトゥミの色ですね。黒が「色」かどうかはわからないけれど(笑)。トゥミでは、黒以外にも、赤、ブラウン、ローズなども出していますが、お客様は「あ、この色、面白いね。でも、今日は黒を買います」という方が多いです(笑)。

――黒という色、それにバリスティックナイロンという素材。これがブランドのアイデンティティーになりましたね。

 そうですね。それにポケットやそのまわりのジッパー、そしてトゥミのタグ。それらが一体となった全体の印象は非常に大事です。

――日本の『踊る大捜査線』やアメリカの『24』というテレビシリーズでトゥミのバッグが出てくる。両方とも刑事が主人公のドラマで、質実剛健なトゥミのイメージを、キャラクターづくりに上手に使っていましたね。

 実は我が国の大統領も……。

オバマ大統領もトゥミのバッグを愛用
オバマ大統領もトゥミのバッグを愛用
©Damon Winter/The New York Times/Redux
――あはは。オバマ大統領も使われているんですね。

 別にトゥミからプレゼントしているわけではありませんよ(笑)。ご自分で選ばれているんですが……。まあ、確かに、トゥミのブリーフケースは強い男性のハードなライフスタイルが演出できるでしょうね。日本ではブリーフが人気で、売り上げも大きいのですが、アメリカでは、ブリーフよりもっと大きめのバッグのほうが売れます。

――アメリカは、広いですものね。移動時間もかかるし、飛行機や車での移動が多いから……。

 日本の場合、特に東京、大阪などの大都市では移動に電車を使うでしょう。だから、ブリーフをデイバッグのように使っていますね。

――最近、日本のマーケットのために特別な色を出されました。目的のひとつには、トゥミのバッグを日本の女性のマーケットでもっと存在感を出したいということがあるのでしょうか。

 そうです。アメリカに比べて日本にはまだ女性のお客様が少ないので、日本でも女性に新しい商品を開発してアピールしたいんです。女性用のハンドバッグのマーケットは激戦区ですが、トゥミが売りたいのはハンドバッグじゃなくて、ビジネス用のバッグ。会社勤めの女性の場合、たいていハンドバッグのほかにもうひとつバッグを持っているでしょう? この2番目のバッグは人さまざまで、ブリーフケースだったり、紙袋だったり……トゥミが開拓したいのはこの2番目のバッグのマーケット。私がよく言うのは「Functional business bags for today's working women(現代のビジネスウーマンのための機能的なビジネスバッグ)」です。

トゥミの女性向け広告イメージ。商品はVILLAシリーズ
トゥミの女性向け広告イメージ。商品はVILLAシリーズ
日本限定カラー「ローズピンク」と日本先行カラー「サハラ」
今年6月、ユニセックスコレクションのVOYAGEURに日本限定カラー「ローズピンク」と日本先行カラー「サハラ」が発売された
限定品「GLOBAL LIMITED EDITION」
今秋、トゥミのシグネチャーカラーである「赤」をデザインアクセントにした特別仕様の限定品「GLOBAL LIMITED EDITION」が発売される
――トゥミというと、どうしても男性的なイメージがあって、女性用のバッグを出しているということが日本ではまだあまり知られていませんね。
銀座店店内で 銀座店店内で

 商品を開発したからといってすぐには成功しません。でも、丸の内などを見ていると、ニーズはあるな、と感じています。お店で「あっ、トゥミにこういうバッグがあるんだ」という女性客は増えています。アピールして、認知いただいて、買っていただくまでまだ時間がかかるでしょうが、非常に大事にしていきたいお客様ですね。

★ ★ ★

 住みなれた東京の生活をエンジョイしていると思いきや、今は仕事のことだけしか考えていないというローゼンバーグ氏。リタイア後は東京と故郷のオハイオを行き来したいという大の日本びいき。だからこそ日本向けの商品を開発できるのだろう。

日本ファッション・エディターズ・クラブ http://www.fec-japan.com

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