from America

2009.8・9/vol.12-No.5・6

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キング・オブ・ポップが広告業界に残した功績

 私が着任してからのわずかな期間に米国は世界に誇る二つのシンボルを失った。一つはかつて世界一を誇った自動車メーカー、GMであり、もう一つは今なお、その作品が世界中を魅了している「キング・オブ・ポップ」マイケル・ジャクソンである。

マイケル・ジャクソン
1998年7月、都内のホテルで記者会見するマイケル・ジャクソン=読売新聞社撮影

 GMは政府管理下で「新生GM」としての再出発を図っているが、マイケル・ジャクソンが再び私たちの前に姿を現すことはない。このため、彼の死後、彼の残した作品が爆発的に売れている。ニールセンの調査によると、米国内では死後4日間で41万5000枚のアルバムが売れ、そのうち半分以上がiTunesやAmazonMP3などの音楽配信サイトからのダウンロードであった。死去翌朝にはiTunesストアのアルバムランキングTOP10にマイケル・ジャクソンの作品は実に7作もランクインされている。また、米国のみならずイギリスやオーストラリアでも同じくiTunesストアのランキングTOP10に彼の作品が半数以上を占めた。
 そんなスーパースターであるマイケル・ジャクソンだが、広告出演の機会は意外に少なく、有名なところでは撮影中にやけどを負ったことで知られるペプシのテレビCMくらいであろうか。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙はそのペプシのテレビCMを引き合いに出し、「マイケル・ジャクソンが有名人タイアップ広告を世に広めた」と報じている。
 以前から有名人やミュージシャンはテレビCMに出演していたが、一部のビッグスターたちはイメージが傷つくことを恐れ、出演を控えていた。しかし、1984年にペプシコ社がマイケル・ジャクソンと、当時の記録となる500万ドルでCM契約を結んだことが今日の有名人タイアップ広告の隆盛への道を切り開いたというのだ。
 事実、ペプシコ社はその後、マドンナ、ライオネル・リッチー、レイ・チャールズ、シンディ・クロフォードそしてブリトニー・スピアーズなど、ビッグスターを次々に起用、リミテッドブランド社の女性向けブランド、ヴィクトリアズ・シークレットのテレビCMにはボブ・ディランが出演し、アップル社のiPodではU2が起用された。
 とりわけ音楽業界にとって有名人タイアップ広告の効果は大きい。これまで多くの有名ミュージシャンが大企業のテレビCMに楽曲を提供しており、それが時に新しい世代のファンを獲得し、楽曲セールスにつながっている。タイアップ広告によってデビューを飾る新人や、息を吹き返すオールドミュージシャンも少なくない。これは現在の日本にも当てはまる現象であろう。
 広告業界にとっても、広告スキップ機能を搭載したDVDレコーダーなどが普及し、ニューメディアが蔓延する中、消費者の関心を引くためのテレビCM制作に、音楽業界とのタイアップは欠かせない。そして、テレビCMで聴いた楽曲を広告主のホームページや音楽サイトで調べる消費者行動が、広告効果の向上、社会的ムーブメントの形成につながっていく。
 マイケル・ジャクソンがペプシのために歌詞を変えた「ビリー・ジーン」を提供したことから本格化した、音楽業界と広告業界のタイアップ。今日、それを支えている新しい世代が、先駆者の功績をたたえるかのように、彼の作品を購入している。

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