立ち読み広告

2009.6・7/vol.12-No.3・4

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圧倒的な面白さを比較広告で徹底訴求

 びっくりしたのは3月30日の朝刊、第5面。なにしろ「『ダ・ヴィンチ・コード』750万部の読者が損をしています。」と紙面の上半分を使って訴えているのだから。これはおだやかでない。
 じつはこれ、ダン・ブラウンの新著、『天使と悪魔』およびその映画の広告なのである。コピーによると、『ダ・ヴィンチ・コード』は1000万部売れて、『天使と悪魔』はいまのところ250万部の売り上げ。これだけだと圧倒的に『ダ・ヴィンチ・コード』のほうが売れている(『天使と悪魔』は売れていない)ということなのだが、両方を読んだ人のうち82%が「『天使と悪魔』のほうが面白い」と答えているというのである。ご丁寧に円グラフまで載っている。
 4月27日の朝刊第5面を開いてまたびっくり! こんどは眉間に皺を寄せたトム・ハンクスの顔がどーん。映画『天使と悪魔』の広告である。しかし下半分は角川文庫の『天使と悪魔』の広告。コピーは3月30日からさらに進んで、『天使と悪魔』は300万部に。1か月弱で50万部も売れた計算になる。1日2万部弱。日本の書店数は1万6000軒だから、毎日すべての書店で1冊以上売れたことになる。すごい。どちらが面白かったかという問いへの回答は変わらず、『ダ・ヴィンチ・コード』18%、『天使と悪魔』82%である。
 アメリカでは比較広告というものが盛んだそうだが、日本ではあまりやらない。クルマなどでは「新型はこんなによくなりました」とやるけど、あくまで前モデルに対して。同じ著者、同じシリーズ、同じ出版社とはいえ、小説で「AよりBのほうが圧倒的に面白い」とやる広告はなかったのではないか。
 しかも4月27日の広告では、読者の声として「『ダ・ヴィンチ・コード』の100倍は面白い」とか「『ダ・ヴィンチ・コード』をはるかに超える面白さ!」などとまで書いているのである。

本当に損をしているのは?

 同じことが日本の作家でも可能だろうか。私が出版社の広告担当だったら、と想像してみた。「最高傑作」とか「代表作になること間違いなし」ぐらいはOKかもしれない。でも作品の具体名を挙げて「××よりもこの作品のほうが面白いと答えた読者が82%」なんてやる勇気はない。
 でも、「損をしています」とか、「こっちのほうが圧倒的に面白いと答えています」と書くのは蛮勇のようだけど、よく考えると『ダ・ヴィンチ・コード』にも並々ならぬ自信があるから。そりゃそうだ、1000万部も売れたんだから。そして「損をして」いるのは、『ダ・ヴィンチ・コード』を読んだ人ではなく、『天使と悪魔』をまだ読んでいない人なのである。
 じつは私も「損をしている」一人である。『ダ・ヴィンチ・コード』は夢中になって読んだ。まあ、映画化前だったので、私の頭の中のラングドン教授はハリソン・フォードだったけど。読後にダ・ヴィンチの画集まで見返してしまった。で、今回の広告。角川書店にここまで言われれば、『天使と悪魔』を読むしかないでしょ、という気持ちになってくる。
 うーむ。読んでから見るか、見てから読むか、まさにそれが問題だ!

3月30日 朝刊
3月30日 朝刊
4月27日 朝刊
4月27日 朝刊

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