Fashion Insight

2009.6・7/vol.12-No.3・4

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ブランドビジネスのトップに聞く(4) 小売りの原点を突き詰めること、すなわちブランドビジネス

福井喜久夫 氏
福井喜久夫
(Kikuo Fukui)

1946年長野県軽井沢生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、三越に入社。88年三越ティファニー商品部の初代部長に。90年米ティファニー社に入社し、翌年ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパンを設立と同時に社長就任。2002年、英バーバリーに入社し、同年バーバリー・ジャパン設立と同時に社長就任。03年同社退社後、フクイ・アンド・アソシエイツを設立、さまざまなインターナショナルブランドのマネジメントに携わる。05年ハリー・ウィンストン・ジャパンの代表取締役社長に就任。09年より現職。

ハリー・ウィンストン
http://www.harrywinston.com/

 この4月にハリー・ウィンストン・ジャパンの社長から会長に就任された福井喜久夫氏。これまで数多くのラグジュアリーブランドの日本法人設立に携わってきた氏に、ラグジュアリービジネスの秘訣を聞いてみた。

   
――もともとは三越のご出身ですね。

 ええ。三越を満20年勤めて辞めました。40数年の仕事の半分が三越で、もう半分がいわゆるブランドビジネスに携わっていることになります。

――ティファニー、バーバリー、そしてハリー・ウィンストン。いずれもだいたい日本での立ち上げの時からかかわっていますね。

 はい。実はなんでも最初に携わったということが多くて、ティファニーのときも、日本で法人を立ち上げる時に一人ではじめたんですね。どうやってこのブランドを日本のマーケットに根付かせようかって、最初から自分で考えてやっていましたね。

――今でこそ当たり前の風景ですが、銀座の表通りにブランドの路面店を出すということも、福井さんがティファニーでやられたことですね。

 1980年代の後半ですね。当時そういうことはまだ活発に行われていませんでした。あとはルイ・ヴィトンさんくらいでしたね。

――最初にティファニーを手がけられた時に勝算はかなり強くおありだったんでしょうか?

 それは120%ありましたね。
 三越時代の話になりますが、入社当時、同期でアパレル関係を希望する人が多くて、私もそうだったんですが、どういうわけか私一人だけ宝飾品部に配属されたんですね。その売り場に8年ほどいましたが、非常に苦労しましてね、あんまり売れなくて。一体、宝飾品のお客様、いわゆるターゲットって誰だろうとずっと考え続けていたんです。それが後に役立った。三越がティファニーを導入して、店頭から商品本部へ異動になったとき、ティファニーのお客様というものを自分たちでクリエイトできるということを明確に感じましてね、いろいろなアイデアが頭に浮かびました。間違いなく日本のジュエリー分野で売れるマーケットをつくれると思いました。

――ハリー・ウィンストンでは、どのようなことを考えられましたか? ティファニーとは違った戦略やポリシーなどは?

 前の会社でもここでも、一番大切なことはまったく変わりません。それは自分たちのコアコンピタンスが何かを知るということ。誰がお客様かを明確にして、そのお客様に対してどういうメッセージを送り、どういう商品を提供するか。それを愚直に、基本通りにやっていくということですね。

ハリー・ウィンストン銀座店
ハリー・ウィンストン銀座店
ホープ・ダイヤモンド
世界で最も有名な、45.72カラットの「ホープ・ダイヤモンド」。スミソニアンの国立自然史博物館内、“ハリー・ウィンストン・ギャラリー”で永久展示されている
――ブランドに対して、そういうお考えをお持ちになったのは三越にお勤めの頃からですか?

 ええ。やはり三越の売り場で非常に苦労したのが私の原体験ですから。今でも社員には耳にタコができるくらいに言っています。

――表参道ヒルズにも出店されています。これはやはり新しいマーケットの開拓というような展望がおありだったということですか?

 まったくその通りです。

――表参道は、とてもいい場所だと思うんですが、お客さんの層が少し若くないでしょうか?

 もちろん原宿には若い方がたくさんいらっしゃいますけど、あの周辺は富裕な方も多く住んでいらっしゃいます。実は、ティファニーの時代に事務所があの辺にあって、10年間よく見ておりまして……。

――ああ、土地カンもおありになって。では、勝算が120%?

 ええ(笑)。ですから今でもヒルズの中では一番安定しているんじゃないですかね。

――六本木の東京ミッドタウンにメンズジュエリーのお店を出されましたよね。メンズジュエリーの可能性はどのように考えていらっしゃいますか?

 メンズジュエリーは絶対に広がっていくマーケットだと確信しています。

“ペア・クラスター”(左) “タンゴ”(中央)リース・ネックレス(右)
今年4月、バーゼル・フェアで発表されたジュエリー・ウオッチ・シリーズの新作“ペア・クラスター”(左)
やはりバーゼル・フェアで発表されたジュエリー・ウオッチ・シリーズの新作“タンゴ”(中央)
ハリー・ウィンストンのアイコン、リース・ネックレス(右)
――最後に改めて、日本でブランドビジネスを成功させるには何が大切だと思われますか。
銀座店店内で 銀座店店内で

 日本人ほど、よいものをきちんと見極めて欲しがる国民はほかにいませんよ。時代はいろいろ変わっても、その特質は変わらない。われわれは、その要望にしっかりと応えられる商品を持っている。きちんとしたアプローチをすれば、お客様に対してはもっとリーチできると思いますね。
 4年前にここに入ったときにみんなに言ったんです。最初に百貨店に入って、自分のいいと思うものを売っていこうというところから出発して、最後にまた原点に戻るような仕事につけて幸せだ、みたいなことをね。ブランドビジネスは、そこをどう突き詰めていくかっていうことだと思います。

★ ★ ★

 休日には日本各地の街道を歩き、この国の風土を肌で感じるのが趣味という福井氏。ブランドの本質を究めるように、案外気づきにくい日本という国の本質を鋭く見ておられるのかもしれません。

日本ファッション・エディターズ・クラブ http://www.fec-japan.com

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