from Europe

2009.6・7/vol.12-No.3・4

  • この記事をクリップ!
  • newsing it!
  • Buzzurlにブックマーク
  • このエントリーを含むはてなブックマーク

新聞社のオンライン課金化という“聖杯”

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や英ザ・タイムズなどの新聞社を傘下に持つ“メディア王”ルパード・マードック氏(米ニューズ・コーポレーション社会長)は、5月上旬、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のインタビューに答え、「新聞のビジネスモデルを転換すべき時がきた」と語った。同社の1−3月期の収支状況に、ザ・タイムズとサンの英2紙の広告収入減(前年同期比21%減)が大きく足かせとなった現状に、自らメスを入れる覚悟だ。
 ゼニスオプティメディア社が2月に発表した「世界のメディア・オーナー・トップ30」で、ニューズ社の2008年度の売り上げは前年比49%増で第2位。1位のタイムワーナー社との差を前年の130億ドルから90億ドルにと確実に縮めている。成功の要因は、2007年に傘下に収めた米WSJのオンラインサイト課金化の成功と、登録ユーザーがついに2億人に達した音楽画像系のソーシャルネットワークMySpaceだ。マードック氏の狙いは、WSJで成功したオンラインサイト課金モデルを傘下の英紙にも採用し、かつ、注目株のMySpaceを、競合するFacebookに対して広告収入面で大きく引き離すことにある。
 景気後退がとりわけテレビ、新聞、雑誌などの伝統的なメディアの広告費に大きく影響しているのは、世界的に同じだが、特に米・仏で比較すると活字媒体を取り巻く環境は少し状況が異なる。広告費の違いもあるうえに、媒体別広告収入では1-3月期で、アメリカは新聞30%減、雑誌20%減に対し、フランスでは新聞7.2%減、雑誌12.2%減。このマイナス差は、対策の大胆さやスピードに影響する。
 08年度の仏全国紙の広告収入は、07年度比4.6%増とプラスを維持した。フィガロ、ル・モンドの上位2紙は、本紙での収入減をオンラインで補おうとユニークユーザー数の競争をしてきた。今年は次の局面に入っている。5月に入り、まず、Le Figaro.frがPDF版の閲覧を1件1.3ユーロに有料化したのに始まり、経済紙トリビューンはオンライン閲覧を1か月8ユーロ、本紙宅配とのセットで10ユーロとする購読キャンペーンを開始した。
ル・モンドのオンライン版「Le Monde.fr」
ル・モンドのオンライン版「Le Monde.fr」の画面
 フランスの高校生は、大学入試がない代わりにバカロレア(全国共通国家試験)を受け、高校卒業と大学入学資格を取る。6月からの受験シーズンに先駆けて、Le Monde.frでは一流講師陣の執筆による「バカロレアで“優”を取るための傾向と対策」の連載が始まった。「欧州議会はなぜ必要か」など非常にためになる内容だ。過去10年間の問題集、69年以降の大統領選挙一覧などアーカイブ資料の入手は課金とした。
 経済紙レゼコーは、このような新聞社のオンライン課金化の動きを、「聖杯伝説」にたとえて紹介した。仏の新聞は、果たして「聖杯」にたどり着き、奇跡の力を得ることができるだろうか?
 米オバマ大統領が、新型インフルエンザの流行に際し、MySpace、Facebook、Twitterを利用した情報発信を行って話題になったが、欧州でも先ごろ、英チャールズ皇太子が熱帯雨林保護キャンペーンのため、王室で初めてMySpaceの動画に登場した。若く強力なライバルは多いが、挑戦する価値はあると思う。

もどる