CURRENT REPORT

2009.6・7/vol.12-No.3・4

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「もう一泊、もう一度(ひとたび)」を旗印に国内旅行の機運盛り上げ

 日本旅行業協会(JATA)が四半期ごとに発表している「旅行市場動向調査」によると、景気の悪化に伴い国内旅行市場は大幅に縮小し、当面は低迷から脱却する好材料にも欠けると予想されている。旅行事業者の団体である同協会国内・訪日旅行業務部部長の興津泰則氏に、国内旅行市場の現状とその活性化への取り組みについて聞いた。

社団法人日本旅行業協会 国内・訪日旅行業務部 部長 興津泰則氏
――国内旅行市場の現状は

 2007年度、国内で支払われた旅行総消費額は23.5兆円です。この旅行消費が生み出す付加価値は11.8兆円、さらには付加価値がもたらした経済波及効果は28.5兆円に上り、名目GDPの5.5%に相当する規模です。また、雇用効果も441万人と推計され、日本の総雇用の6.9%を占めています。このように観光産業は経済波及効果が大きく、雇用創出力、税収効果も高いことから、21世紀をリードする基幹産業として期待されています。
 昨年10月には観光庁も発足し、国を挙げて観光産業振興を推進しているわけですが、近年、国内宿泊旅行者数は横ばい、平均宿泊数は年間2.42泊ですが漸減傾向にあるなど、市場はやや低迷しています。

――JATAとしての取り組みは

 私たちは政府の観光立国政策と協調して事業を進めていく立場にあります。そこで、協会に国内・訪日旅行業務部を立ち上げ、国が観光立国基本推進法で提唱している「国内における観光旅行消費額を30兆円に」「日本人の国内観光旅行の平均宿泊数を年間4泊に」という2010年度までの目標実現に貢献するべく、この4月から、国内宿泊旅行の拡大と日本の魅力再発見を目的としたキャンペーン「もう一泊、もう一度(ひとたび)」を開始しました。

――キャンペーンの概要は
キャンペーンのロゴマーク
キャンペーンのロゴマーク

 第1弾として、今年の9月末日までにJATA会員旅行会社で国内宿泊旅行を申し込み、累計3泊以上されると、宿泊券や全国各地のお土産品などが、またダブルチャンスとして、4泊以上された方には会員各社の旅行券がトータルで1000名様に抽選で当たるプレゼントを実施しています。キャンペーン自体は3か年計画の予定ですが、初年度はスタートダッシュの年と位置づけ、キャンペーンロゴやキャッチフレーズを策定し、読売新聞が新時代の100景観を選定した「平成百景」と連動して新聞広告を出稿するなど、国内旅行の機運を盛り上げていきます。
 また、このキャンペーンが国際観光旅館連盟と日本観光旅館連盟という宿泊施設団体の方々と初めて組んだ取り組みであることにも大きな意味があります。これまで国内旅行のプロモーションはそれぞれの業界で独自に仕掛けていたわけですが、今回、国内観光を支えてきた宿泊業界と旅行業界で連絡会を設置し、宿泊という共通の切り口で互いにアイデアを出し合っていきます。現在、観光地を広域的に連携させた「観光圏」を整備し、地域の伝統や食といった観光資源を掘り起こし、長期滞在を促進しようという「観光圏整備法」が進められていますが、こうした政策に則り地域とも連携した宿泊旅行商品を用意し、国内総需要の拡大につなげていきたいと考えています。

3月30日 朝刊
3月30日
――レジャーの選択肢は多様化していますが

 若年層の旅行離れが言われ、宿泊に8000円支出するのであれば、ゲームソフトを購入しようという選択肢があるのが現実です。今、旅行産業は中高年層を中心に支えられていますが、やはり将来のカスタマーである若年層が旅行に魅力を感じ、旅に出るきっかけを作っていかなければいけない。若年層は旅に何を求めるのか。費用の面も含めて検証していく必要があります。
 その点も含め、この業界のビジネスは大きく変わろうとしています。かつては団体客をしっかりつかんでいればよかったわけですが、今は個人のニーズにもきめ細かく対応していかないことにはお客様に来ていただけなくなってしまう。さらには魅力のある旅行商品をつくらなければいけない。 従来の観光地をめぐるパッケージツアーではなく、ニューツーリズムと言われる、テーマのある旅、エコツーリズムやヘルスツーリズム、グリーンツーリズムなどが挙げられますが、こうした旅を商品化して需要を創出していくことが必要とされている時代です。

――旅に対するマインドも喚起していく必要がありますね

 みんなでどこかに行こうとなれば、いろいろと話すことがありますよね。何を着て、どこに行き、何を食べ、どこで遊ぶか。それだけで家族や友人と話がはずみますよ。実際に旅に出れば仲間うちで一緒になって楽しみ、コミュニケーションを深めることができる。人間関係が希薄になったといわれる昨今、まさに「旅」が必要とされているのではないでしょうか。
 それだけではなく、旅に出ることで、地域の歴史やくらしについて学び、交流を深め、からだや心の活力が満たされる。得られる効用は多くのものがあります。私たちの活動が旅行に出るきっかけにつながれば、あらためて「旅の力」を認識していただけるのではないかと思います。

(梅木)

取材メモ

 JATAは1959年、海外旅行を取り扱う旅行斡旋業者26社が共同して組織した「国際旅行業者協会」が母体となり発足。現在、正会員である旅行業者1225社をはじめ、協力、賛助、在外賛助の各会員を合わせ2733社が加盟するまでに発展している
 主な事業は会員が取り扱った旅行業務に対する苦情処理、会員との取引により生じた債権の弁済業務、旅行業務従事者に対する研修や国家試験の代行から、海外・国内旅行の振興まで多岐にわたり、毎年開催されている「JATA世界旅行博」は海外旅行のための情報を一堂に集め、世界100か国以上の参加と10万人以上の集客を誇る秋のビッグイベントとして定着している。
 現在、会員社の旅行取扱額は海外旅行の3兆5200億円に対し、国内旅行が4兆2700億円と大きく上回っているが、伸び悩む国内旅行市場の活性化が急務となっている。
 今回の「もう一泊、もう一度(ひとたび)」では、「70年代の『ディスカバー・ジャパン』に匹敵するような、国内旅行ムーブメントを起こしたいですね」と、総合企画部広報室長 森達夫氏は思惑を語る。※2009.3.19現在

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