from America

2009.6・7/vol.12-No.3・4

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米国大不況の「犯人」は新聞広告なのか

 クライスラーが4月30日に破産法第11条の適用を申請するなど、米国経済はより混迷の度合いを深めている。そのような中、米国の一般消費者はこの大不況の「犯人捜し」を続けており、最近その槍玉に挙がったのは、ほかでもない広告会社と印刷広告メディア(新聞・雑誌)だった。
 ハリス・インタラクティブ社が2,220人の成人米国人を対象にして3月末に行った調査によると、「消費者に購買力を超える買い物をさせた責任は誰にあるか」という質問に対し、66%が「広告会社に多少なりとも責任がある」と答え、その半数(全体の33%)は「すべての、もしくは相当の責任がある」と答えている。同様に、「新聞・雑誌に多少なりとも責任がある」と答えた割合は59%、「すべての、もしくは相当の責任がある」は22%となっている。「責任がある」と答えた割合は、他の広告メディア(ウェブサイト56%、テレビ・ラジオ55%、家族・友人による口コミ46%)と比較しても高い数字となっているというのだ。
 さらに見ていくと、調査対象者の年齢によってこの結果に違いが表れてくる。広告会社に責任があるとする割合は、55歳以上では75%にものぼるが、18〜34歳のグループでは60%にとどまり、新聞・雑誌に責任があるとする割合においても55歳以上67%、18〜34歳51%とその格差はほぼ同ポイントとなる。つまり、年齢が上がるほど広告会社や印刷広告メディアに責任があると考えていることになる。
 これはまさに、「肺がんになったからタバコ会社を訴える」理論である。消費者は自由な意思を持っているはずで、もし広告メディアや広告会社から商品情報を伝えられるままに自己の支払い能力を超える商品を購入したのなら、それは購入した方が悪い。この調査結果は、不況の影響を広告売り上げの減少という形でまともに受け、廃刊や雇用調整が相次ぐ米新聞メディアにとっては、皮肉以外の何物でもない。昨年12月にトリビューン社が破綻した後も、創刊150年の歴史を持つロッキーマウンテン・ニューズ(コロラド州)や、同146年のシアトルポスト・インテリジェンサー(ワシントン州)などの老舗名門紙が相次いで廃刊している。もし本当にこの不況の責任が印刷広告メディアにあるのであれば、我々の業界は自分で自分の首を絞めてきたということになってしまう。
 当然、この調査結果に異を唱える向きも少なくない。米国広告業協会(AAAA)は「これは『悪い知らせを届けた郵便屋を責める』典型的なケースだ」と反論し、バッファロー大学のラッピング教授は「ばかげた調査だ」と一蹴する。その根拠として、回答の選択肢が広告会社と各種メディアに限定されており、サブプライム問題の原因となった銀行や住宅ローン会社が用意されておらず、比較のしようがない点を挙げている。
 この指摘に対し、ハリス・インタラクティブ社は公式にコメントを出してはいないが、同社はこの調査の結論として、米国人が現在の不況に対し本気で怒っていること、メディアはもともと非難の対象になりやすいこと、そして近年では広告会社が影の存在ではなく、その動向に一般消費者の注目が集まっていることの3点を挙げている。とにかく、米国民が不況の責任をなすりつけるスケープゴートを探していることだけは間違いがないようだ。

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 私の担当は、今回で終わります。3年間ご愛読ありがとうございました。

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