特集

2009.4/vol.12-No.1・2


不況に打ち勝つブランド戦略

一気にナンバーワンを目指す

――08年のコミュニケーション戦略というのは?

 知名度や「最高金賞受賞」の認知率も上がり、お客様も増えてきましたが、まだプレミアムビールのトップブランドは抜いていない状況でした。一気にナンバーワンを目指すとなると、課題も難しくなってきます。
 当たり前のことですが、まず、これまでのお客様を守りながら新しいお客様を増やさなければいけない。矢沢永吉さんを起用したことでお客様も増えたのですが、まだ獲得し切れていなかったのが女性です。矢沢さんは男性には圧倒的なカリスマ性がありますが、そこに反応しない女性をどう取り込むか。そこで女性に親近感がある竹内結子さんを矢沢永吉さんも継続しながら起用しました。
 また、矢沢さんはロックミュージシャンで、自由人ですから、矢沢さんに反応しない男性も一方にいます。それで、ビジネスマンタイプの人たちの共感を得るために考えたのが、「島耕作社長就任会見&乾杯式」です。雑誌『モーニング』で「社長 島耕作」の連載が始まるのを記念した講談社主催の“社長の就任記念パーティー”を「ザ・プレミアム・モルツ」を冠に行い、話題になりました。
 もう一つはギフトです。実は一番ハードルが高いのがこのギフト市場です。お中元やお歳暮を贈る人が気にするのは、贈られる側が納得するかということです。やはり歴史や伝統があるものが贈り物には喜ばれる。しかし、「ザ・プレミアム・モルツ」が更なるステージアップを図るには、そこを攻略しないといけないわけです。
 そこで考えたのが、「プレミアムビールがお中元にもらってうれしいもののナンバーワンになりました」というニュースの発信です。結果に確信はなかったのですが、信頼ある第三者機関で調査を行いました。お中元に贈られるものはハムや油などいろいろありますが、その結果、プレミアムビールが一番もらってうれしいものに選ばれたのです。「プレミアム」という言葉自体がはやったことも読みとしてはありましたが、それを「プレミアムビールレポート」としてニュースリリースを配信しました。

2007年1月20日 朝刊
2007年1月20日 朝刊
2008年5月31日 朝刊
2008年5月31日 朝刊
――プレミアムビールというのは、カテゴリーですよね。

 「ザ・プレミアム・モルツが選ばれました」ではメーカーの思惑が出過ぎて説得力がないと思うのです。まず、お中元にはプレミアムビールを贈るのがいいと思っていただく。でも、売り場に行ってプレミアムビールを探すと、お客様は「ザ・プレミアム・モルツ」と思うのです。なぜかと言うと、やはりネーミングが良かった(笑)。このキャンペーンは、「プレミアム」という言葉がネーミングに入っていることが最大のポイントで、実際、プレミアムカテゴリーが伸びると「ザ・プレミアム・モルツ」のイメージが良くなるという好循環を生んでいるんですね。このギフトのキャンペーンに竹内結子さんを起用しました。
 矢沢永吉さんを真ん中に置きながら、竹内結子さんと島耕作がさらに新しいお客様をつくるための起爆剤になるという構造を作ったのが昨年です。その結果、「ザ・プレミアム・モルツ」が1000万ケースの大台を超え、ビッグブランドになったということなのです。

企業ブランドのシナジー効果へ

――今年はどういう展開を考えているのでしょうか。

 我々としては今までやってきたことを信じて、これまで得てきた評判やいい兆しを増幅する方向でやっていきたいと考えています。
 今年初めに「愛飲御礼キャンペーン」を行いましたが、これは「評判づくり」を目標とした05年からの締めくくりとして行ったものです。昨年もおかげさまで出荷量を大幅に伸ばすことができ、それに対して「ありがとうございます」と謙虚に感謝の気持ちを伝えるというのが、このキャンペーンの目的でした。
 次のステージとして今行っているのが「感動体験グラスキャンペーン」で、本当にいいビールだからこそいい状態で飲んでほしいという提案を始めています。缶ビールもグラスに注ぐと全然味が違うし、品質の差が際立つんです。最高金賞品質のビールを一番おいしい状態で飲んでいただいて、お客様の満足度を高め、「ザ・プレミアム・モルツ」ファンを増やしていきたいというのが、このキャンペーンです。

2009年1月16日 朝刊
2009年1月16日 朝刊
――「ハレのビールから小ハレのビールへ」など、一連のキャンペーンはライフスタイル提案が中心になっていますが。

 ライフスタイル提案は、サントリーの得意とするコミュニケーション作法の一つです。最近はマス型のコミュニケーションは効かなくなったと言われていますが、人間の根っこにある価値観はそんなに変わっていないと思っています。小ハレの「自分へのご褒美」も、根っこにある共通の価値観の一つで、そういうメッセージが強く出せればライフスタイル提案が効くことを今回改めて実感しました。ただし、中途半端ではなく、やるからには徹底してやる。もう一つは、ただ提案だけではやはりダメで、そこにプロダクトの良さがあってこそ提案は成功するということだと思います。

テレビCM「グラス」篇
テレビCM「グラス」篇
――琴線に触れるメッセージは、どう見つけるのでしょうか。

 徹底してお客様と向き合うことに尽きます。定量調査でも傾向はつかめると思いますが、お客様の本音は直接対話しないと出てこない。ですから、酒の話なので飲みながらですが、ワン・トゥ・ワン・インタビューを相当やっています。
 もう一つは、本当のビール好きと話をすることです。データではグラスを冷やしておいてビールを飲む人は1割にも満たないのですが、本当にビールが好きな人の気持ちがそこに表れている。8割の人がこうだからではなく、本当に好きな人の思いを拾い上げていく。それをクリエイターと一緒になって表現に落とし込んでいく。根っこにあるお客様の気持ちを、いかにつかめるかが大事だと思います。

――新ジャンルの「金麦」も好調ですね。

 缶でいうと「金麦」はうちで一番売れています。「金麦」もクオリティーにこだわった商品ですが、「ザ・プレミアム・モルツ」の良いイメージのシナジーがあると思うのです。サントリービールには、これまでカジュアルで楽しいというイメージはありましたが、品質がいいというイメージがなかなか取れなかった。それが「ザ・プレミアム・モルツ」で、サントリービール全体の品質イメージがアップした。企業ブランドのシナジー効果が出てきたと思っています。


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