Fashion Insight

2009.4/vol.12-No.1・2


ブランドビジネスのトップに聞く(3) モバイルが重要な戦略ツールに

三木 均氏
三木 均
(Hitoshi Miki)

1961年生まれ。85年同志社大学法学部卒業後、樫山(現オンワード樫山)入社。91年から98年までオンワードカシヤマフランス駐在、94年から同社社長。02年クロエインターナショナルS.A日本駐在代表、03年からリシュモンジャパン クロエ CEO、07年から代表取締役 兼 クロエ CEO、09年から現職。

クロエ
http://www.chloe.com/version_jp/

 消費がさらに冷え込むラグジュアリーマーケットで、シーバイクロエの健闘が光るクロエ。その好調の秘密と更なる戦略を、クロエの三木CEOに聞いてみた。

   
――この間、ニューヨークのコレクションを見にいって、全体にとても華やかで、今、世界を覆っている暗いムードを吹き飛ばそうとしているようで印象的でした。アメリカは経済危機の震源地ですから、余計に……。

 そうね、責任とってもらわないといけない。えらい迷惑だって(笑)。

――(笑)そうですね。

 まあ、景気が悪いのは確かだけれども、でも、その中でファッションが世の中を明るくする役割っていうのは今までもあったわけだし、逆に言うと、それがファッションの楽しさのひとつでもある。だから僕らはやっぱりそれを何とか打開したい。

――クロエは好調とうかがっています。とくにシーバイクロエが健闘しているようですね。
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シー バイ クロエ 2009春夏コレクション。「デイトリッパー」のラインナップ

 今、マーケットが非常に二極化していますね。ラグジュアリーブランドか、低価格のファストファッションかで、中途半端は全部淘汰されてしまう。ただ、僕はその中間のマーケットが出てくると思うんです。
 シーバイクロエの戦略は、クロエのようなハイファッションにはまだ手が届かないという人と、下から上にあがろうとする人の受け皿となる、いわば踊り場のような場所をきっちりと確保するという考えなんです。

――今、市場全体が冷え込んでいますが、日本においては気分的な買い控えが多いような気がします。

 そう、マインドの部分の影響は大きいですね。これはもう、マスコミ関係の方になんとかしていただかないと(笑)。ただし、不況で先行きが不安になると、若年層の消費が減ってしまう。というのも、彼らはブランド品をローンで買っていたから、先行きが見えないと、やはりローンは組めないし、買えないですよね。これは痛い。

写真2写真3
ハンナ・マクギボンによる初のコレクション。リボン結びのベルトが印象的
――1か月分の給料の値段のバッグを10回分割払いで買う。そうした消費行動が、ある意味、ラグジュアリーブランドをビッグビジネスにしてきたと思います。それが格差社会になって、一生懸命働いても絶対に上にあがれない、みたいな感じの社会になっていくと、これはまた怖いと思うんですよね。

 その危惧は、僕らも持っています。現在の我々のブランドを支えてくれていた年代層、30代〜50代の人たちのブランド信仰的な感覚に比べて、10代〜20代前半の人たちはそれほどブランド信仰のない人たちになっている。彼らが10年〜20年後、経済的に豊かになった時、果たしてブランド品を買ってくれるだろうか、という不安はありますよ。

――若年層のライフスタイルの変化も考慮すると、EC市場にも注力していく必要があると思います。アメリカではGUCCIなど成功しているブランドもありますが、日本ではどうでしょうね?

 僕は、将来は10万〜20万円のものでも、おそらくeコマースで消費される時代がくると思います。一番大きな窓口となるのはたぶん、いわゆるモバイルです。

――なるほど、モバイルですか。

 これはもうまさに日本独自のカルチャー。そこで慣れ親しんだ今の10代〜20代前半の消費者は、eコマースに対して抵抗がありません。私たちもパブリシティーや販売促進活動の手法の一つとしてモバイルを使いますが、やはりきちんとしたリアクションが返ってきます。CRMやブランド拡大の重要な戦略ツールですよ。

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クロエ「サリー」ショルダー バッグ。カーフスキンやパイソンなど素材もさまざま
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大人気のシリーズ、クロエ「パラティ」
――そうするとリアルなショップのほうはどうなりますか。今、百貨店が苦戦しています。特に、若い人は百貨店に来ないですよね。

 百貨店業界の今の状況は、オーバーストアであることは間違いないわけで、まずそれを解消すること。その上で、ブランドと百貨店は手を携えて、お客さんを呼べる状況をつくっていかないといけない。今、それを真剣に考えるべき時期に来ていると思います。

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オフィスでくつろぐ三木社長
――この「買わない」ムードというのは、あとどれくらいで解消されるでしょうね。日本の女性は消費が好きで、買わないで我慢できるのが半年だっていう説もあります(笑)。

 ふふふ、だと思いますね。これは非常に楽観的な見方かもしれないですが、ひとつのターニングポイントはこの秋冬だと思っています。なぜかというと、今のユーロ安円高の反映が直接的に出てくるのがこの秋冬商品。要するに仕入れは半年前ですから。平均価格が20%は下がるでしょう。そのときに消費者がどういう反応をするか、非常に興味があるし、これが消費喚起のきっかけになってくれればと期待しています。

★★★

 三木CEOのわかりやすく説得力ある話は、彼の考える戦略が非常に明快だからか。大好きな野球の監督になったとしても、選手は迷わずに付いてくるのでは。

日本ファッション・エディターズ・クラブ http://www.fec-japan.com

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