CURRENT REPORT

2009.4/vol.12-No.1・2


心身の健康願い、食育を推進 ブランド浸透へ地道な積み重ね

 300年を超えるしょうゆづくりの歴史を持つキッコーマン。1957年からは海外市場への挑戦を図り、現在では海外事業の売り上げ比率が3割を超えるグローバル企業だ。ビジネス領域の拡大を契機に昨年6月、新たなコーポレートブランド体系を導入する一方で、日本の食文化とともに歩んできたトップメーカーとして、ごはんを主体とした食習慣の長所を再認識し、生活習慣病予防やライフスタイルの変化にも適合した新しい日本型の食生活を提案するなど、食育にも力を注いでいる。
 経営企画室コーポレート政策推進担当部長の大津山厚氏に、食育への取り組み、ブランドに関する考えについて聞いた。

キッコーマン株式会社 経営企画室 コーポレート政策推進担当部長 大津山厚氏
――食育への取り組みを宣言していますが

 当社が「食育プロジェクト」を発足させたのは2004年7月のことですが、当時は生活習慣病の増加、食品の偽装問題の続発など、食をめぐる様々な問題が表面化し、国会で食育基本法案が審議されていた頃でした。私たちにも食品に携わる企業の責務がありますから、どのような形で社会に貢献できるのかということについて、社内から広くメンバーを集めて議論を重ね、まずは食育のあり方を「健やかで楽しい食生活をおくるために役立つ『食』にかかわる情報・知識・体験を提供する」と定義。2005年5月に食育に取り組む思いを「おいしい記憶をつくりたい。」というスローガンにこめて「食育宣言」という形で公表しました。

――具体的な施策は

 食品メーカーとして肉体的な健康に貢献するのはもちろんのこと、心の健康についても大切に考えています。以前から取り組んできた活動を私たちの考える食育のあり方に基づいて洗い直し、食を通じたコミュニケーションの機会を増やすことで、心と身体の健康に貢献したいと考えています。
 工場見学を例にお話しすると、従来はガラス越しにしょうゆの製造工程を見ることにとどまっていたのですが、それだけではなかなか“記憶”には残らない。そこで小学生向けの体験プログラムを新設しました。原料に触れ、もろみの熟成過程を確かめ、もろみからしょうゆをしぼることで実際のしょうゆづくりを体感してもらおうというものです。このプログラムを導入する前には5万5000人だった野田工場の見学者数が、2008年度は8万5000人を超え、大変好評を博しています。
 そのほかにも社員が講師として小学校に出向き、自ら台本を用意して、しょうゆを中心に“食べものの大切さ”や“おいしく食べる”ことについての授業を行う「キッコーマン・しょうゆ塾」も実施しています。現在、200人の社員が半日がかりの養成講座を受講して講師になり、年間で200コマ近く開催しています。身近な素材の話ですから、お子さんの反応も良く、小学校からの引き合いも多い。事前の打ち合わせなども行い、いたずらに規模を拡大することを目的とせず、丁寧に実施していく方針です。

――食育プロジェクトの意義は

 社員研修にも食育に関するプログラムを新設したり、社内での論文コンテストを実施するなど、私たち自身も食育について考える機会を設けることで、事業に取り組む姿勢や当社で働く意義を再確認するきっかけになっています。社員からは、「食育に取り組むことで、会社に入った意義を改めて感じた」といった声も上がっています。
 こうした取り組みを通じて、企業の姿勢や考えを明文化して共有することの大切さを感じましたし、ブランドについて改めて考える機会にもなりました。

――昨年、コーポレートブランドを新たに策定しました

 食育活動での展開を受け、まずはブランドプロミスを策定するべく動き出したのですが、近年、キッコーマングループ事業の構造改革が進み、事業領域も拡大していることから、新たに海外事業も含めキッコーマングループ全体の「傘」となるコーポレートブランドを導入し、コーポレートマークとスローガンも刷新するに至りました。
 「こころをこめたおいしさで、地球を食のよろこびで満たします。」という一文で始まる「キッコーマンの約束」を掲げましたが、私たち一人ひとりが、この約束を実現するために何をすべきなのかということを明確に意識し、日々の業務に挑戦するようでありたいと思います。
 ブランドはお客様の心の中に築き上げられていくもので、広告や販促活動など、日々の営業活動の積み重ねによるものですから、一朝一夕には確立できません。一貫性を持って継続的に取り組む。迷った時には約束に立ち戻って確認する。こうした地道な努力がブランドの実現につながっていくことを実感しているところです。

2008年6月28日 朝刊
2008年6月28日 朝刊
10月5日 朝刊
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12月13日 朝刊
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2009年3月22日 朝刊
2009年3月22日 朝刊

(梅木)

取材メモ

 キッコーマンが広告コミュニケーションで意識しているのは、くらしへの具体的な貢献という視点だ。
 「私たちの理念を実現するためには企業メッセージを発信するとともに、商品でもどのように貢献できるのかということをお伝えする必要があると考えています」と大津山氏。
 企業広告でも商品を紹介する、さらにはその商品を使った食生活の提案を盛り込むことで、家族のおいしい記憶を広げる後押しをしようというものだ。

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