Creativeが生まれる場所

2009.4/vol.12-No.1・2


著名人三者三様の語り口で親しまれた商品に関心を再喚起

ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパン 岡村靖弘氏 クリエイティブディレクター  榎戸理絵氏 アカウントマネジャー

岡村:広告制作会社を経て、95年JWT入社。ハーゲンダッツ、ライトオンなど数社を担当。06年ロンドン国際広告賞Finalist、AOA Awards 07など受賞。
榎戸:96年JWT入社。ユニチャーム、ファイザーなど数社の担当を経て、06年よりハーゲンダッツを担当。アカウントマネージメント局所属。

 2008年末にハーゲンダッツの「ディスカバー・ユア・ハーゲンダッツ」キャンペーンが展開された。女優の真矢みき、モデルの知花くらら、Kバレエカンパニー 芸術監督の熊川哲也を起用し、3人がハーゲンダッツへの想いを語った声のみのテレビCMをオンエアし、それと連動した新聞広告を出稿している。さらに、クイズやWEB限定のインタビューをコンテンツに盛り込んだウェブサイトへ誘導する仕組みだった。
 今回のキャンペーンの考え方をクリエイティブディレクターの岡村、アカウントマネジャーの榎戸両氏に聞いた。

──今回の広告では日本人のタレントを起用していますが。

 榎戸 確かに、これまでは外国人のモデルを起用したものでした。実は、日本人を起用したのは今回が初めてなんです。

──この広告は日本独自の展開ということでしょうか。

 榎戸 ハーゲンダッツの広告全般は、ブランドガイドラインをもとに、本国(アメリカ)のブランドオーナーと相談の上、日本ローカルの戦略、表現で展開しています。過去の外国人モデルを起用した広告も同じです。
 岡村 やはり、世界の各地域によって訴求ポイントなどがそれぞれ異なりますし、それに合わせて表現も変える必要があると思うんですね。
 ただし、ハーゲンダッツには「ブランドエッセンス」と呼ばれる三つの要素があり、それは全世界で共有されている考え方なんです。
 榎戸 一つ目は「インティマシー」で、ハーゲンダッツを介することで深まる親密感を表しています。二つ目は「ピュアプレジャー」。これはアイスを口にした時にわき上がる純粋な喜びです。そして三つ目が、「ニルバーナ」と呼ばれていて、口に入れてうっとりするような心地よさを表します。
 この「ブランドエッセンス」はキャンペーンによってコロコロと変わるものではなく、ハーゲンダッツブランドの根幹を成す重要な考え方なんです。

鮮度のあるアプローチ

──今回のキャンペーンはどのように発想したのでしょうか。
TVCM
テレビCM 「ミニカップ バニラ Voice〜真矢みき〜」篇

 岡村 ハーゲンダッツは乳牛を育てる土壌から、商品の保存温度まで品質に対して徹底したこだわりを持っています。これまでは、当然の取り組みだからと、わざわざ伝えてこなかったことですが、「食」に関心が高まっている時代には知ってもらったほうがいいと思いました。クライアントとの話し合いで共有したのは、このこだわりをしっかり伝えるキャンペーンにしようということでした。
 今回フィーチャーしたのは「バニラ」「グリーンティー」ですが、それに「ストロベリー」を加えた三つのフレーバーは、ハーゲンダッツの中核を成すものです。発売されてから長い年月が経過している、言わば定番商品なんですね。
 これら三つのフレーバーに関しては、これまでも年に1回くらい広告を出稿してきましたが、それは新商品と同じようなコミュニケーションのやり方で、言い換えると特別扱いしたものではありませんでした。しかし、改めて考えてみると、やはり新商品とは異なるコミュニケーションの必要性を感じたんですね。というのも、新商品はそれ自体がニュース性を持っているので消費者から注目されやすい。一方、バニラ、グリーンティー、ストロベリーというフレーバーは定着しきっているので、単純に「バニラはマダガスカル産100%です」「抹茶は石臼で挽いています」という事実だけを伝えても目新しさは感じてもらえない。
 そこで、まずは以前から親しまれている三つのフレーバーに対して新鮮な興味や関心を喚起しようと考えました。

自然な声を届ける

──それが3人の声のみのテレビCMということですか。

 岡村 ハーゲンダッツがおいしいことは消費者にかなり浸透していると思うんですね。でも「どうおいしいですか」と聞かれたら、人ぞれぞれ違った言い方をすると思います。そうしたリアリティーが、今の時代には一番届くのではないかと考えました。そこで、ハーゲンダッツファンの代表として、その魅力を語るにふさわしい何人かの著名人に企画説明をし、その中から今回の3人の方を選ばせていただきました。
 テレビCMを声だけにしたのは、視聴者に100%彼らの声だけに集中してもらいたかったからです。顔が出るとどうしてもそちらに意識が向いてしまいます。だったら、声の強さを強調するクリエイティブに徹して「言葉」に注意を引き、「なぜおいしいか」まで興味を持ってもらおうと考えました。セリフも、インタビューの中から、自然に出てきた言葉を編集したものなんです。

──キャンペーンにおける新聞広告の役割というのは?
webサイト
ウェブサイト内にあるキャンペーンのトップ画面

 榎戸 新聞では3人が「なぜハーゲンダッツの虜になっているのか」「なぜおいしいのか」をより具体的に説明しています。また、従来ハーゲンダッツはF1(20〜34歳女性)をターゲットにしてきたのですが、今回は35歳以上の主婦をメーンターゲットに設定しました。じっくり読んでもらおうと考え、広告も週末に出稿しています。
 キャンペーンでは、ウェブにも力を注ぎ、ここではハーゲンダッツのこだわりをより詳しく理解してもらえるようなコンテンツを設けました。やはりウェブサイトを訪れる人は興味・関心が高い人が多いので、クイズやWEB限定インタビューなど、充実した内容を盛り込んでいます。テレビ→新聞→ウェブの順番で段階的に情報の深度が増すようなコミュニケーション設計にしました。
 岡村 やはり、メディアには、それぞれムードがあると思うんです。今回のように週末の新聞広告であれば、例えば朝食後に見てくれた人が気持ちよくなれるような上質な空間を作るようにしていますね。

2008年12月25日 朝刊
2008年12月25日 朝刊
1月11日 Y&Y日曜版
1月11日 Y&Y日曜版
1月18日 Y&Y日曜版
1月18日 Y&Y日曜版
──今後の展開は?

 岡村 今後の方向性に関しては、検討中です。しかし、今の時代は、広告に限らずすべての業種において従来のセオリーが崩れている難しい時期にきています。その中で、時代の流れに合わせた効果的なクリエイティブが必要だと思うんです。
 消費者の信用を得るような誠実なコミュニケーションが必要な時代になってきているのではないでしょうか。

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