特集

2009.3/vol.11-No.12


around40にどうアプローチするか

リアルマザーのインサイトを探る

 2004年から毎年、30代、40代の女性、特に今の母親のリアルな姿を探ってきたのがマッキャンエリクソンの「Real Mothers(リアルマザーズ)」プロジェクトだ。それまで「主婦」と一くくりにされていたこの層に、どうアプローチすべきか。メディア接触状況を含めて聞いた。

Real Mother
――まず、『Real Mothers』プロジェクトを始めた経緯は?

 谷津 これまで既婚女性をターゲットにする場合、「主婦」と一くくりにされることが多かったと思います。しかし、今の子育て中のお母さんを見ると「主婦」という画一的なイメージではとらえられないと思ったのがきっかけです。それは私自身が産休に入って実感したことで、周囲の女性たちを見ると、これまで私が「主婦」と思っていた人たちとはまるで違うのです。それで復帰後に、もっとちゃんとこの層を見ていかなければいけないと思ったんですね。
 伊東 古い主婦のイメージは、一歩引いて夫を立てるとか、何より子どもが一番で、良妻賢母のイメージだったと思います。復帰後の谷津に指摘されて周囲を見ると、確かに今のお母さんたちは、子どもも大事だけれど、自分も大事。体形も昔に比べてスリムで若々しい。だったら、その実態を探っていこうというのが最初でしたね。
 谷津 プロジェクトは03年から立ち上がり、調査結果をまとめた冊子『Real Mothers』の発行を翌年の04年から始めています。初年度は小学校入学前の子どもがいる「子育てママ」、05年は「小学生ママ」にフォーカスし、06年からはメディア接触やエンゲージメントのポイントなどを探っています。

主婦からビューティー・ママへ

――「主婦」が変わったのは、いつ頃からなのでしょうか。

 谷津 04年の『Real Mothers』で主婦と女性誌との関係も調べたのですが、95年の『VERY』の創刊がきっかけになったと思います。その頃、子育て期だった30代の女性に向けた雑誌です。95年当時の平均初産年齢は29.1歳ですから、遡るとこの層は、女子大生ブームに始まって、「オヤジギャル」「トレンディー世代」「hanako族」と時代の脚光を浴びてきた雇均法(男女雇用機会均等法)第一世代の人たちだったんです。彼女たちは結婚で会社を辞めて、お母さんになって、急に時代から取り残されたようになっていた。そういう時に「お母さんになっても、おしゃれしていいんですよ」という雑誌が出てきた。『VERY』創刊号の大特集は「私たちの着る服がない」というタイトルで、それが彼女たちの潜在欲求に火をつけたのではないかと思います。それで私たちは95年を「ビューティー・ママ」という意識が開花した年と位置づけています。この意識は、以後当たり前になったと思いますね。
 伊東 雇均法第一世代は、04年の調査時点では「小学生ママ」なのですが、まだ会社の中に「寿退社」という言葉が残っていた最後の世代です。この世代には、まだ、就職して結婚して退社して、子どもを産んで母親になるという大きな道筋があったんです。この世代は、それまでも時代を切り開いてきたトレンディー世代であり、マーケティング的にもスポットライトを当てることで反応してくれる「生涯晴れ舞台」の人たちです。
 ところがその下の世代、調査時点では「子育てママ」、団塊ジュニアに当たるのですが、この世代はキャリアを目指す人もいれば、結婚を選択しない人もいる。道が一本ではなくなっている分、この道を選択してよかったのか不安感を持っている人が多いことがわかりました。
 雇均法第一世代が母としての自分が中心にあって、そこに軸足を置いて自分が輝きたい世代だとしたら、その下の世代は、もっと母としての自分たちに誇りを持ちたいという悩みを抱えている世代です。会社員としての自分、妻としての自分、親の前での娘、女としての自分などが並列してあって、どの顔でいても自由な分、どこに自分の立ち位置を置くか悩むのです。ですから、この世代に対するアプローチは、その時々の「顔」をポジティブにとらえられる環境を整えたり、後押しすることが大事になってくるんですね。

ナチュラル・ママは新聞好き

――メディア接触の分析もしているということですが。

 谷津 06年からは、「子育てママ」「小学生ママ」という分類ではなく、小学生以下の子どもを持つ母親の消費行動を基に5タイプに分けて分析しています。メディア接触は07年から調査しています。
 全体で見ると接触率が高いのは、テレビ、新聞、新聞折り込み、インターネットという順です。興味深いのは、五つのタイプでメディア接触率の違いだけでなく、メディアに対する意識の差が出ていることです。そこから、各メディアを使う場合に、どういうアプローチをすれば有効かも見えると思います。
 「セレブ・ママ」「ナチュラル・ママ」「ミーハー・ママ」「やりくりママ」「脱力ママ」というのが、母親の五つのタイプ分類ですが、例えば新聞は、接触率では「ミーハー・ママ」がやや下がりますが、ほかのタイプにはほとんど差がありません。しかし、メディアの接触意識で見ると、「ナチュラル・ママ」の新聞好感度が特に高いのです。

――「ナチュラル・ママ」というのは?

 谷津 知的で健康や料理の関心が高く、外見よりも内面を重視するタイプで、ファッションも、MUJI(無印良品)やGAP、アニエスbなどを好む割合がほかよりも高い。「新聞を読むことが好きだ」は母親全体では52%ですが、「ナチュラル・ママ」では64%いる。新聞だけでなく商品パンフレットにも、じっくり目を通すタイプです。
 「セレブ・ママ」も実は2番目に新聞が好きな人たちです。もちろん一流ブランドが好きな人たちですが、何事にも前向きで家事にも誇りを持っている。本当に全方位で、新聞を読んでいないことも彼女たちのセレブ意識に反するんですね。
 新聞に「ナチュラル・ママ」の好感度が高いというのは、別の見方をすると、ナチュラルな意識に訴えたい時は新聞が効くということです。エコ意識に代表されるような「ナチュラル・ママ」的要素(ナチュラル因子)は「セレブ・ママ」にも「ミーハー・ママ」にもあるからです。

母親タイプ別メディアへの接触率(上位10メディア) 母親タイプ別新聞への態度・意識

マッキャンエリクソン リアルマザーズ調べ

●Real Mothersのターゲット分析

  • ・95年はビューティー・ママが開花した時期
  • ・接触メディアは、テレビ、新聞、新聞折り込みの順
  • ・新聞好感度が高いナチュラル・ママ
――こうした分析は広告にどのように反映させるのですか。

 伊東 我々は生活者インサイトと消費者インサイトを分けて考えていて、『Real Mothers』は、主に生活者インサイトを探っています。新聞を読んでいる読者、テレビを見ている視聴者もその時点では生活者です。広告の役割というのは、企業や商品のメッセージを生活者に届けて、欲求を喚起して、消費者に変えることです。だから、生活者インサイトをベースにして、商品に対する欲求を喚起するためのメッセージやキャンペーンの仕組みを作っていくという作業が必要なんですね。

『OLの私的消費』 『オトコの仮面消費』

マッキャンエリクソンの近著
『OLの私的消費』『オトコの仮面消費』(共に翔泳社)


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