特集

2009.3/vol.11-No.12


around40にどうアプローチするか

輝いていたい女ごころに訴求する

 昨年12月末に発表されたトヨタ自動車の「Passo Sette(パッソ セッテ)」は、30代、40代の子供のいる女性をメーンターゲットにしたコンパクトな7人乗りのミニバンだ。セッテはイタリア語で“7”の意味だが、広告展開にも女性誌で活躍するモデル7人を起用。一般女性からもモデルを募り、3月下旬に開催される東京コレクションにも参加する。「パッソ セッテ」の子育て女性に対するコミュニケーション戦略とはどのようなものなのか。

――「パッソ セッテ」のターゲットをどのようにとらえていますか。

 「パッソ セッテ」は、軽自動車市場と普通車市場の接点にある車と位置付けています。7人乗り3列シートのミニバンで、全長4180ミリと、このカテゴリーでは最もコンパクトです。価格も149万円からとお求めやすい設定になっています。
 運転しやすいコンパクトなミニバンですから、当然ターゲットとしては女性を強く意識しています。私たちは年齢・性別などのデモグラフィックデータからターゲットを絞ることはしていないのですが、あえて言えば、結婚、出産、子育てとライフステージが変化してきた「30〜40代のお子さんがいる女性」が、メーンターゲットになると思います。

一人の女性として輝くために

――デモグラフィックではないターゲティングというのは?

 「パッソ セッテ」は年代によるターゲティングではなく、情緒的価値観によってターゲティングを行った商品です。先ほど「あえて」と言ったのは、その情緒的価値観をデモグラフィックデータとクロスさせると、「30〜40代のお子さんがいる女性」が結果的に最も多いからです。
 この年代の女性は、一くくりに主婦やママと呼ばれることが多いですが、彼女たちの中にもいろいろな価値観の女性がいます。「パッソ セッテ」が訴求する価値観は、広告のコピーに「私たち、主婦で、ママで、女です。」とあるように、主婦としてママとして、家事や育児などは大変だけれども、一人の女性として輝いていたいというものです。
 ですから、デザイン的には従来のようなかわいらしい、いわゆる女性向けの車というよりは、スタイリッシュでファッショナブルな方向を目指しています。もちろん、女性でも簡単にシートアレンジができたり、女性にとって非常に快適な機能性も備えています。

――車本来の機能の訴求ではなく、消費者の情緒を刺激する戦略をとったというのは?

●パッソ セッテのターゲット分析

  • ・主婦、ママとしてではなく、一人の女性として輝きたい
  • ・かわいいではなく、ファッショナブルでスタイリッシュ
  • ・女性ファッション誌の世界観がマッチする

“自動車の白物家電化”と言われて久しいですが、足回りの良さや加速性能など車本来の魅力を訴求するだけでは厳しい時代になってきています。一昔前までは、自動車は何か特別な存在、言うなれば憧れの存在でした。もちろん現在も、そういう思いを持たれている方もいるとは思いますが、以前と比べてかなり減ってきているのは事実です。また、先進的な技術で作られている「プリウス」や、ロングセラー商品である「カローラ」「クラウン」とも、当然、コミュニケーション戦略の組み立て方は違ってきます。
 「パッソ セッテ」は子育て世代でも「輝いていたい」という女性がターゲットですから、モノ本来の機能や価値ではなく、情緒的な部分が重視されるということなんです。

女性ファッション誌のように

――広告キャンペーンでは7人の女性誌のモデルを起用されていますね。
パッソ セッテのキャンペーンサイト
パッソ セッテのキャンペーンサイト

 ターゲットとする女性たちの憧れの対象の一つが雑誌で活躍するモデルです。そこで、キャンペーン全体のフレームとして、女性ファッション誌のような切り口を与えて、一気通貫にキャンペーンを組み立てようというのが今回の考え方です。新聞広告はもちろん、雑誌広告からキャンペーンサイトまで、女性ファッション誌のようなテイストを意識して作っています。
 一般のミニバンの広告では、旦那さんやお子さんたちとのアットホームな世界観を作りあげるのが普通ですが、「パッソ セッテ」はファッショナブルでスタイリッシュな世界観を作り上げようということです。ターゲットによっては多面的なコミュニケーション設計が必要な場合もありますが、今回はコアターゲットの価値観が明確ですから、シンプルなコミュニケーションに徹しました。

――雑誌とのタイアップにも力を入れていますね。
『VERY』など女性ファッション誌5誌ともタイアップ
『VERY』など女性ファッション誌5誌ともタイアップ

 このターゲット層の閲読率が高い主婦の友社『Como』、文藝春秋『CREA』、宝島社『In Red』、集英社『LEE』、光文社『VERY』への広告出稿やタイアップを行っています。また、中吊り雑誌広告と連動する形で、その雑誌の中にある「パッソ セッテ」の記事が露出されるようにしています。
 さらに、「女性としてキラキラ輝いていたい」という気持ちに応えられる車であることを訴求するためのキャンペーンもいろいろと用意しています。
 1月24日には新宿高島屋(タイムズスクエア)で、「パッソ セッテ」の展示イベントを行いました。モデルの富岡よし子さんと堂珍敦子さんをゲストに招いたトークショーや、「パッソ セッテ」を背景にした写真撮影会を行いました。来場された方にステージに上がっていただき、展示してある「パッソ セッテ」と一緒に、あたかもスタジオ撮影の雰囲気でカメラマンに撮影してもらうというものです。
 女性誌の表紙風に撮った写真はCD-ROMに焼いてプレゼントしました。もし、ご自身でブログを書かれている方なら、写真をアップしてもらえるかもしれませんし、そうでない方でも、はがきなどに使って話題を広げてもらおうと考えました。

東京コレクションにも参加

――東京コレクションへの参加も発表されていますが。

 このキャンペーンの第1段階の集大成として「Passo Sette Collection in 東京コレクション」を六本木の東京ミッドタウンで3月29日に行う予定です。昨年12月25日に新車発表会を行いましたが、この時、東京コレクションの参加発表を行っています。ショーの衣装を手がけるのは「hiromichi nakano」の中野裕通さん、「HAN AHN SOON」のハン・アンスンさん、「THEATRE PRODUCTS」の武内昭さんと中西妙佳さんです。世界5大コレクションの一つである東京コレクションに自動車メーカーのトヨタが挑戦するという意外性は、大きな話題になると期待しています。
 このイベントでは広告に起用しているモデル7人に加え、一般公募から選考された5人の素人モデルにも登場してもらいます。選ばれた5人にはファッションショーの舞台に立てるように、現在ウオーキングなどのレッスンを受けてもらっていて、その様子は各女性誌でも紹介されています。

幅広い層からの評価も必要

テレビCM 登場篇
テレビCM 登場篇
――このキャンペーンでの新聞、テレビの役割は?

 キャンペーン全体としては、ターゲット層の価値観を刺激するコミュニケーションを意識しているのですが、「パッソ セッテ」の持つブランド価値は、ターゲット層だけに知ってもらえればいいというわけではありません。旦那さまにも知ってもらいたいし、もっと上の世代の方にも知ってもらいたい。幅広い層から認知してもらって、多くの人から定評をいただくのも大事なことだと思っています。そうした定評があるからこそ、ターゲット層の女性たちも安心して「パッソ セッテ」を選択できるのだと思います。そういった認知を広げて定評を作る媒体として、マスメディアである新聞やテレビを広告メディアとして選んでいるということです。
 また新車を売っていく上で、店頭発表会は非常に重要なイベントです。キャンペーンも最初のピークを店頭発表会に合わせて設計しています。新聞広告には店頭発表会の日付を記していますが、「その日」を知らせるメディアとして新聞広告は外せない媒体です。

――今後のキャンペーンの展開をどうお考えですか。

 東京コレクションでキャンペーンの第1段階が終了しますが、新車ということもあり、認知率アップの努力は今後も続けていかなければいけないと思っています。ただ、基本的には現在のキャンペーンフレームを引き続き展開してブランドイメージをきちんと構築した上で、その幅を広げていこうという考えです。

1月9日 朝刊
1月9日 朝刊

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