特集

2009.3/vol.11-No.12


around40にどうアプローチするか

アラフォー世代の価値観を刺激する

 40歳前後の女性をターゲットとして好調な売れ行きを続けているのが『STORY』だ。まさにアラフォー世代に照準を当てた女性誌は、どのようにこの世代を捉えているのだろうか。編集長の山本由樹氏に聞いた。

――『STORY』は、実際はどのような読者を想定しているのでしょうか。

 創刊は2002年11月ですが、その最初の読者は86年に施行された男女雇用機会均等法の第一世代でした。彼女たちは今45〜46歳になっています。40代の入り口にさしかかった女性の生き方をファッションを中心に語る雑誌というのが『STORY』の創刊当初からのコンセプトでしたが、雇均法第一世代をターゲットにしていたために読者の平均年齢が上がってきてしまったんですね。それで去年の4月号で表紙モデルをそれまでの黒田知永子さんから清原亜希さんに代えて、いわゆるアラフォー世代に読者をシフトしているところです。現在の読者の平均年齢は、41歳から42歳ぐらいになっていますね。

――5年の差で読者の志向はそれほど変わるものなのですか。

 まるで世代が違うと思って雑誌を作った方がいいくらいです。雇均法が施行された当初は形の上では企業は女性に門戸を開きましたが、実効性はまだなかったんです。実際に総合職に採用されるのは男子で、女子は一般職として採用されることが多く、結婚したら専業主婦になる人たちが多かったんです。総合職に採用され、キャリアを重ねている女性が多いのはアラフォーといわれる今の40歳になろうとしている人たちです。

2008年3月1日 朝刊
2008年3月1日 朝刊
昨年4月号から表紙モデルが元プロ野球選手の清原和博夫人の清原亜希さんに代わった

●STORYこの1年の特集

2009年 3月号 STORY式 「オシャレの参考書」自由自在
  2月号 あなたの街に「変身!マジックバス」が行く!
  1月号 時には、「買わない知性」もある私
2008年 12月号 いつまでも「夢見る女子」でいよう!
  11月号 私を輝かせる「コンプレックス克」服
  10月号 40代、「もう一度恋する」服
  9月号 健全なオシャレは「健全な価格」に宿る!
  8月号 大研究!「幸せオーラ」の発し方
  7月号 カジュアルで愛されるお人柄
  6月号 摘発!オシャレさんたちの「局地的流行服」
  5月号 何が起こっても、私は着回せます!
  4月号 自由を得た日にしたいこと、着たい服

●STORYのターゲット分析

  • ・雇均法第一世代とは価値観が違うアラフォー世代
  • ・自分自身としてどう生きるかがテーマに
  • ・実質的な生活をどれだけ豊かにするかに目を向ける

雇均法第一世代との違い

――雇均法第一世代とアラフォー世代では、どこが違うのでしょうか。

 『STORY』の女性スタッフには雇均法第一世代もアラフォー世代の人たちもいるのですが、例えば、カラオケに行って一緒に立って歌って踊って盛り上がるのは40代半ば以上で、アラフォーの人たちは座って歌うんですよ。それも場を盛り上げる歌ではなくて、自分の好きな歌を歌う。笛を吹けば踊ってくれるのが雇均法第一世代だとすると、笛吹けど踊らないのが今のアラフォーという感じがします。ファッションのテイストも、家庭に入っている人たちと、ずっと仕事をしている人たちでは当然違いますね。

――そういう違いはどこからきているとお考えですか。

 僕は今46歳ですが、雇均法第一世代というのは自分の同級生と同じ年なんです。大学生の頃、『JJ』を見て、紺のハイソックスとボンボンの付いた靴を履いて、といったようなハマトラファッションがはやっていた。学生時代は女子大生ブームでもてはやされ、バブル時代に入社した。ところが、今のアラフォー世代はまだ学生だったんです。大学を出た時期は、急激に景気が悪くなっていったんですね。その頃、雇均法第一世代は、ジュリアナのお立ち台に立って扇子を持って踊っていたり、すでに結婚して家庭に入っている人もいた。そこがまったく違うんです。
 今考えると、雇均法第一世代の下の世代は、ジュリアナのお立ち台に立って踊っている彼女たちを見て、「よくあんなとこ立てるよね」と思っていた。だから、「あの人たちと違う生き方をしよう」「ああいうの、ちょっと痛いよね」と思っていた世代だと思うんです。

――アラフォー世代をターゲットにすることで編集方針はどう変わったのでしょうか。

 雇均法第一世代のほうが家庭に縛られている分、家庭を強調しないほうがよかったと思うんです。
 『STORY』の下の『VERY』という雑誌は30代の子育て世代をターゲットにした雑誌です。この世代なら家庭が重要なテーマになります。ところが40代になると、幸せな子育ての時期は終わっているんですね。子どものことを考えても、夫との関係を考えても、悩みのほうが多くなる。そうすると、40歳からの10年間は、妻であったり、母であったりということではなくて、自分自身としてどう生きるかがテーマになるんです。だから、自分がどうやって輝くかを語っていくことが雑誌の購買に結び付いたんです。これはまだ勘の段階なんですが、今のアラフォー世代というのは、それとは反対に家庭に帰ってきている感じがするんです。

家庭に回帰するアラフォー

――キャリアが多くなっているアラフォー世代が家庭に回帰しているというのは?

 ある意味、時代の振り子が戻ってきたところがあると思うんです。例えば表紙モデルをお願いしている清原亜希さんは、すごく料理好きな人で、料理本を出してもいいくらい詳しい。今度出る『STORY』の別冊の『美STORY』でも、彼女自身が研究しているマクロビオティックのレシピを紹介しているんです。
 アラフォー世代は、女らしさ、女性が得意とすることを受け入れることに抵抗感がないというか、当たり前になってきている。ある意味、女性が女性であることが価値観になってきている世代だという気がします。

――アラフォー世代というとバリバリのキャリアというイメージがありますが、そうではないんですね。

 頑張って働いて、キャリアアップしている人もたくさんいると思いますが、同時に結婚して子どもを育てながらキャリアを重ねることに難しさを感じている世代だと思います。今は、産休後にもう一度職場復帰することも当たり前になっていますが、それがキャリアアップの障害にもなっている。産休の間に同期の男性は出世していたりするわけです。
 ただ、男性は組織に殉じることができる生き物ですが、女性はそうではない。もっとフラットな感覚で世の中を見ていると思います。男は仕事でなくても何人か集まると年齢で縦の関係が生まれますが、女性は横につながる。40代の母親が10代の娘とおしゃれを競い合うんです。
 だから、アラフォー世代は自分に帰れる場所、夫婦であったり、家庭であったり、自分が母であったりということに充足感を求めることが大きくなっているのだと思います。仕事が忙しくても、土日だけはちゃんと料理を作るとか、家庭を大事にするという意識が強くなっていると思います。

実質的な豊かさを求める世代

――それはアラフォー世代の消費行動にも表れている?

 アメリカの成長神話が崩れたと言われていますが、日本は低成長時代にとっくに入っているわけです。特にバブル後に社会に出たアラフォー世代は、消費することで人生が豊かになるとか、モノを買うことで自己啓発や自己実現できるという神話も崩れている。自分自身の生活、実質的な生活をどれだけ豊かにするかに目を向けている人たちです。もちろん、いいものも知っていて、ブランドものも持っていますが、H&MやGAPの良さも知っている。そういうことが当たり前になっている世代だと思います。

――広告と編集との関係をどう考えていますか。

 雑誌の役割は広場づくりだと思っています。ですから、雑誌を作るときは読者しか見ていませんし、読者が今一番欲しい情報や、価値観を刺激するような企画しか考えていません。「私のための雑誌」であることが、結果的に多くの読者を獲得し、レスポンスのある広告媒体につながると思っています。実際、『STORY』は購買力のある読者に読まれていますし、広告のレスポンスもいいと言われます。それは、常に読者を向いて作っているからだと思います。
 『STORY』のライバルは実は『婦人公論』だと思っています。封建的な社会の中で、被害者であった女性たちを解放するという意味のフェミニズムの雑誌が『婦人公論』ですが、それをポジティブに捉えたいというのが『STORY』です。例えば、離婚というテーマでも、別れた理由で読者の共感を得るのではなく、離婚したからこそ今の私は輝いている、彼女のすてきさを語ろうという雑誌です。その時、胸を張って街を歩けるファッションが大事なんです。40歳の入り口に立った女性の生き方を提案するライフスタイル誌でありたい。そこが、ほかのファッション誌と違うところです。
 表紙に年齢を入れるようにしたのも『STORY』が最初です。それまで女性誌に年齢を入れることはタブーでした。等身大の40歳を強調することで、上の世代も下の世代も引きつけられる。そういう時代になってきたと思います。

『STORY』2009年3月号表紙
『STORY』2009年3月号表紙

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