ojo interview

2009.3/vol.11-No.12


中治 信博氏

ワトソン・クリック クリエイティブディレクター 中治 信博氏

 今年1月、同僚の山崎隆明氏とともに電通関西支社を離れ、新会社「ワトソン・クリック」を東京・西麻布に立ち上げた。DNAの研究でノーベル賞を受賞した2人の科学者の名を社名とし、「浪花節経営」「運と勘のクリエイティブ」を旗印に、結果を出す広告づくりに専念する。
 100年に一度の不景気と言われる中での船出だが、「今が一番の底なので、今後100年間は右肩上がりが続く予定」と前向きにとらえ、「景気とともに広告も停滞して見えますが、新聞でもテレビでも、広告でこんな面白いことができるんだっていう可能性を見せなければいけません。それはみんなの責任ですわ」と心機一転、ふんどしを締め直している。
 まったくの素人を起用してコミカルな歌謡劇に仕立てたキンチョウのCMが実質的なデビュー作。以来、象印マホービン、SSK、サントリー「DAKARA」など手法や予算規模は違っても、ほかと手触りの違う広告で異化効果を生み、いかに消費者の心に入り込むかに力を注ぐ。
 「広告はお金を出す企業のものであるのと同時に消費者のものでもあって、成功しているクリエイターはみんな、両方を満足させる“解”を見つけているんです」と、ギリギリまで最適なアイデアを追求する粘りが身上だ。
 出身地の神戸で過ごした高校時代、サン=テグジュペリの自伝的なエッセー「人間の土地」の文体と根底に流れるヒューマニズムの思想に感銘を受けた。京都大学文学部を卒業後、80年に電通入社。大学時代に始めた演劇は玄人はだしで、自らのCM出演も多い。劇団「満員劇場御礼座」では淀川フーヨーハイと名乗り、脚本・演出・看板役者として活躍する。
 小さい頃から、ふざけたことをして人を笑わせることが好きな「いちびり」で、「人は何を面白いと感じるのか」をいつも考えているという。
 「僕らの本当のお得意さんは世間一般の人なんですよ。その人たちにこの広告を見せたら喜ぶだろうなぁって想像している時が一番楽しいですね」

文/横尾一弘  写真/清水徹

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