from Europe

2009.3/vol.11-No.12


フランスの「夢の高金利商品」

 本社からの出張者が「ノリシマさんも、あれ、やるんですか?」と聞いてきたので、「もちろん! ないと、さびしいくらい」と答えると、少しがっかりした表情になった。
 「ビズ」といって、ほっぺにチュッとする特有の儀式の話。パリだと左右に2回で、南に行くと3回、4回のこともあるそうだ。恋人や女同士はもちろん、男女でも、仕事関係で親しくなると、会った時、お別れの時に、ビズをする。普通は、頬と頬をくっつけているだけで、「チュッ」という音は、空中に向けて発する。パリの街中にこの「チュッ」があふれている。挨拶でビズをするのは、相手の温もりを感じて、精神的な距離が縮まるような気がする。
 フランスで意外なのは、お金にシビアなこと。日本で、特に男女が外食をした場合、男性がおごろうとするか、もしくは「今日は私が持つから、次、よろしくね」みたいな“どんぶり勘定”が好まれると思うのだが、こちらでは、何か目的がない限り、カードでも現金でも、その場できっちり清算する。愛情表現の豊かさとともに文化のギャップを感じる。
 さて、日本人は貯蓄好き、というイメージがあるが、これは総貯蓄額の話で、OECDの最新の調査では、家計貯蓄率(家計可処分所得に対する貯蓄率)のトップ3はイタリア、フランス、ドイツの順で、日本は14位。日本は2000年比で約3分の1に低下している。
 年明け、新聞各紙とそのウェブサイトで、フランスの金融商品「Livret A(リブレ・アー)」の広告をよく見かけた。一般向けの非課税貯蓄性普通預金で、1人1口座のみ、10ユーロから上限1万5300ユーロ(約183万円)まで貯蓄できるうえ、お金の出し入れが自由に行える。昨年2月の規制緩和で取り扱い銀行が拡大されたうえ、夏には固定利率が4%に上昇した。1月には、全銀行に取り扱いが拡大した。インフレ対策により、2月から金利が2.5%に引き下げになったものの、各行、人気商品の解禁を顧客獲得のチャンスとにらみ、6%から8%に金利を上乗せしてのキャンペーンを行った。
 INGダイレクトは、若い男性のビジュアルで「マイバンクはこうあるべき─眠っているお金、まだあるんじゃない?」というコピーで「手数料ゼロ、6月まで利息5%保証」という商品を告知した。AXA、HSBC、アリアンツも同様の広告を出稿している。
 フランスでは、若者や低課税者向けに高利率を設定した金融商品も多い。Livret Aは広く一般を対象にしていることから、フランス居住者の4分の3にあたる約4600万人が口座を持っているそうだ。日欧の政策金利の違いがベースにあるので、仕方がないが、日本の銀行の普通預金利率と比べると夢のような利率だ。
1月14日 パリジャン志紙 INGダイレクト
1月14日 パリジャン紙 INGダイレクト
 世界的な景気後退局面は、もうしばらくは続きそうだ。フランスの失業率は昨年末に過去最高となった。しかし「より安く、より少なく」と消費活動を抑えるマインドに傾きがちな一方で、一種の投資商品とはいえ、このような、夢のある広告はとても新鮮に映った。そういう意味では、日本市場での投資商品に対する可能性は、まだあるのかもしれない。

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