インテグレーテッド・コミュニケーションの時代

2009.1・2/vol.11-No.10・11


大不況時代はマーケティングリモデルのチャンス

 実体経済も巻き込んで大不況時代に突入しそうな経済環境だ。広告は企業のコスト削減の対象となりやすい。宣伝広告費という項目は、「経費」として考えられてきた。しかし、この考え方こそ、この機会に見直すチャンスと言える。
 もちろん売り上げ拡大が見込めないなかで、広告費を拡大する選択はない。しかしマーケティングコストをパーチェスファネルの下流にシフトさせるなどの新しいトライを行って、コストセーブの中でも売り上げ拡大維持を目指さなければならない。単にコスト削減するだけではこうした経営環境には対応できない。

図1

 広告費を「経費」として捉えた時代は、基本的にその効果の測定が難しいマス広告中心で、効果は企業マーケターの経験値に任せたものであった。しかし今日、広告投下を含むマーケティングROIをしっかり測定管理しようという体制にシフトさせる必要がある。
 企業にとって経営環境の変化は、景気ばかりではない。今起きていることは、メディア環境の変化や、コミュニケーション構造の変化などによって起こっている「広告に担わせる役割の変化」である。したがってマーケティングコストを抑えるのであれば、抑えたコストでの効果の最大化を目指すために、マーケティングROI最大化が可能な機能を持ち込み、体制を再編しなければならない。単に景気が悪いからと状況を単純化して、構造的な消費者の変化を見逃しているとたいへんなことになるだろう。
 マーケティングROIを測定管理する機能や体制を取り込むには、まずはWebを活用したマーケティング推進の知見を獲得することである。そしてWebで把握できる「ユーザー行動」をマーケティング活動のゴールとして、様々な活動を評価し最適化する仕組みを企業内に確立することだ。まずはネットマーケティングに閉じたところでいいので、スルー・ザ・ライン(=全体最適)の体制をつくることだ。デジタルセントリックというかWebセンタリングというか、デジタルインタラクティブ領域を中心に置き、そこにマーケティングのゴールと測定装置をつくってROIを管理する手法を早期に確立することで、リアルなプロモーション活動やマス広告を含む広告活動全体のパフォーマンス管理に結びつく。

 さて、Webセンタリングのマーケティング手法の取り入れ方は、ネットでの顧客獲得活動や見込み客の囲い込みなどが可能な商品カテゴリーばかりではない。次ページの図のように商品カテゴリーの領域によってWebマーケティングの活用法の違いがある。これは基本形であって、またさらにブランドごとターゲットごとにもWebマーケティング活動との向き合い方が違ってくる。それだけ、企業のマーケターは自社のブランドにどう有効か、Webマーケティングにおけるベンチマークを積み上げることが大事だ。
 商品カテゴリー別に領域設定をした場合、それぞれに新しいマーケティング推進体制づくりの前提がある。
(1)パーチェスファネルの階層が多いかどうか
(2)インマーケットの顧客を探し出すことの価値が高いかどうか
(3)マーケットサイズの大きさによってマス広告の効率がよいかどうか
(4)ブランドオリジナルなコミュニケーションが効果的かどうか
(5)そのブランドのマーケティング予算の規模

 図の左上にプロットされる商品カテゴリーでは、ブランド認知率がそのまま購買に繋がりにくくなっているため、インマーケットの顧客を探し出すことにコストをかける意味がある。検索連動型広告などSEMはまさにこうした興味関心を顕在化させたユーザーを捕まえようとする活動だ。ネットというインタラクティブなマーケティング装置を使って、パーチェスファネルの下流にマーケティングコストをシフトさせて、同じコストでもより多い成果(=購買)を獲得する最適化の施策である。

図2

 一方、パーチェスファネルの階層が少なく、ブランド認知が購買に繋がりやすい商品カテゴリーにも、テレビ広告だけでなく、ネットのインフルエンサーを機能させてブランドオリジナルなコンテンツを仕掛ける手法も導入すべきメディア環境になっている。15秒のテレビ広告とか15段の新聞広告といった広告フォーマットを前提にその中を表現する「広告クリエイティブ」だけではなく、ブランドオリジナルなコミュニケーションコンテンツを開発し、自社メディアであるWebサイトやCGMを活用した展開が必要だ。こうしたブランデッドコンテンツの開発プロセスは従来の企業のマーケティング体制では対応しづらい。大企業では、メディアマーケティング事業を組織化することも十分考えられる。
 ブランドごとにマーケティング予算化して、個々に比較的小さなマス広告出稿をしていると発火点に達しない広告投下を毎年続けることになる。ブランドごとのマーケティングコストを持ち寄って、マーケティング活動の時間軸設定を比較的中長期にして(年間予算でコントロールせずに)、企業のオリジナルメディアを活用する仕組みも、こうした時期だからこそ導入を試みる意味がある。
 不況期を変革のチャンスと捉えるかどうか、これが不況期を脱した時にライバル企業に大きな差をつけるか否かの要因となるだろう。

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