こちら宣伝倶楽部

2008.12/vol.11-No.9


「テレビショッピング」から学ぶこと

イラスト

 印刷されて届く広告は目の前から簡単に消えることはないが、電波にのって届く広告は緊張して見聞していないとすぐに消える。とはいえ、広告を緊張して見る人などいないから、何の広告だったかわからないのが結構ある。

広告の三つのスタンス

 本当はきちんと一本化していないといけないのだが、広告が伝え知らせようとするメッセージは、その広告に拘わる人それぞれで微妙に違う。例えば主題になるその商品を企画した人は「その商品の秀れている点」を前に出すべきと思い、それを売る営業担当は「それで商談に弾みをつけたい」と願い、上層部は「ブランドの認知につながるか」と考え、クリエイターは「広告のデザイン」に目をとめてほしいと思っているものだ。だから意思の一本化は難しく、なかなかビシッとした強いメッセージ力のある広告がでてこない。みんなが課題を残す謙譲の納得をして、平均点レベルのお手打ちシャンシャンの広告が世に出る。
 広告で伝えたいこと、メッセージのもとになるものは、その広告がどのスタンスに立って作られるかと関係が深い。
 三つある。そのひとつは「作り手のスタンス」で広告を組み立てる作法、いわば「メーカー発想の広告」だ。骨格は自慢ばなし、自分本位でいいたいことをいいまくる広告であり、多くの広告はこれが原形になっている。役所の通達みたいな広告では心は開かない。
 次は「売り手のスタンス」で広告を組み立てる作法、前者と違うのはもう一歩ホンネが前に出てくる、いわば「売り手発想の広告」ということになる。競合社への牽制球もあるし、予算達成とシェアの拡大が目論まれている。事情と都合が前面に出て微笑がない。
 おしまいは「買い手、使い手のスタンス」で広告を組み立てる作法、わかっているのに広告主はしばしばこれを忘れる。広告っぽい広告を作ろうと背伸びするからだ。これはいわば「顧客発想の広告」、売り手の欲はいったん捨ててかかる広告づくりだ。この三つ、それぞれが大切だが、冒頭の「届く広告・消えない広告」や「何の広告かわからない広告」を思うと、その重点を微調整することがいる。

整理の技術 説得の技術

 テレビショッピングという販売方法、これ専門の会社がありベテランの「デモンストレーター」がいる。最近はまだ暗いうちの早朝からやっている。ひまもてあまし気味のタレントを顧客代表のウナズキ係にしたて、「まあ」とか「おお」という感嘆語を効果音にして見ているとどんどん引きこまれていく自分に驚くことがある。なんでもない商品をみごとなわけあり商品にしていく「整理の技術」とメリハリつけてわかりやすく解きほぐしていく「説得の技術」にはベテランといわれる広告人も見習うべきことが多い。
 テレビショッピングの原形は蝦蟇の油売りなどの「啖呵売」だと思う。たくみな話術で足をとめさせ購買欲を一気に高めていく技術だ。
 テレビショッピングの場合、余分なことは一切いわずいきなり商品説明からはいる。その攻め方、落とし方のストーリーは売り手(デモンストレーター)が作る。おそらく徹底的に商品解剖をして、自分で自分が客になって「こうすればわかる」「ここが意思決定を刺激する」をひろいだし、そしておそらく「これは広告ではいい忘れている大事なポイント」をみつける作業にはいっていくはずだ。
 最近はラジオでも「ショッピングキャスター」というのを育成してラジオショッピングというのを、自局のトーク番組の中に随時さしこんでいろいろなものを売る。テレビと違って現物を見せられないので表現を工夫してモノの長所を売りこむ。想像力を刺激するために音の演出に工夫をこらし、リスナーの感性に訴える。食品などはテレビよりラジオの方がうまさを伝えるのに適しているかも知れない。伝え手の描写力と受け手の想像力のかけひきになる。商品特性をこれでもかこれでもかとえぐりだして訴えるわからせ方を、今の広告はかなりおろそかにしている。

あの人たちはどう料理するか

 しゃれたキャッチフレーズはいらぬ、手のこんだビジュアルもいらぬ。それよりも優先すべきことに力点を集中するという考え方は昨今の広告づくりでは、いいだすに勇気がいる。広告は体裁を構いすぎていないか。
 ものには豊富な情報がある。正面だけではなく裏面や側面にも、いえばなるほどと思わせるアピールポイントがある。外側だけでなく本当は内側も見てほしい。とまった状態でなく動いている状態でも見てほしい。小さな部品や部分だけぬきだして、そこにこめられている工夫やアイデアもわかってほしい。テレビショッピングはこれらをみんなやってしまう。価格情報も必ずはいる。ものによっては最も大切な情報なのに、一般の広告では規制がいろいろあって曖昧に逃げ、ネット「検索」でどうぞになり、これで解決したつもりだろうが、その広告では未消化、未解決のまま、その場でわからせてくれない配慮のたりない広告になる。こういう広告が届かないし、飛ばされ忘れられる広告になる。テレビショッピングだったらどう料理するかから考えてみるのも方法だ。

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