ojo interview

2008.12/vol.11-No.9


神谷幸之助氏

ナカハタ クリエイティブディレクター/コピーライター 神谷幸之助氏

 師と仰ぐ仲畑貴志氏の今年の年賀状には一言、「どうするの?」と書いてあったそうだ。「見た瞬間、召集令状だと分かった(笑)」という阿吽の呼吸で、今年8月に設立された「株式会社ナカハタ」に真っ先に参加した。
 成蹊大学機械工学科を卒業後、「広告が大好きな自分に嘘をつけず、5か月で辞めた機械メーカー」を皮切りに、電通、ワイデン+ケネディ トウキョウなど、これで履歴書には6社目の経歴が刻まれた。今度の職場は、4人のクリエイター全員がクリエイティブディレクター兼コピーライターで、「言葉の力」を武器にするプランニング・ブティックだ。
 「企業が悩んでいるときの相談相手になれるのが、コピーライターという職業だと思うんです。最初に一つの言葉を共有して、それに向かって広告を作ってもいいし、製品を作ることも可能ですよね」
 20年前、仲畑氏と「盃」を交わしたソニーの仕事で学んだのは、「良い商品広告は優れた企業広告である」というブランディングの思想だ。以来、「トヨタ エコプロジェクト」「タカタ」「KUMON」など、10年先の企業の生き方を見据えた丁寧な仕事を重ねてきた。声高にではなく、「温度の低い表現」で余韻を残す広告作りには、職人としての美学がある。
 「商品やサービスの中身で差別化しづらい今の時代には、その会社のファンであることがモノを買う大きな理由になると思います。ブランディングには時間をかけてイメージを蓄積していくことが必要ですから、まずは企業が経営方針として、ブランドの機能をきちんと考えているかどうかが肝心なんですね」
 常にブランド力の向上を問われる「ナイキ」の仕事に携わり、アメリカ人の持つスポーツ文化の奥深さに感銘を受けた。自身も一人のアスリートとして、週に2日は早朝の駒沢公園を走っている。
 「ランニング中はすごく集中している瞬間があって、いい考えが閃くこともよくあります。スポーツが自分を精神的に強くしてくれている実感がありますね」

文/横尾一弘  写真/清水徹

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