インテグレーテッド・コミュニケーションの時代

2008.12/vol.11-No.9


企業による非ブランドサイト

 Webサイトが企業にとって「自社メディア」だという認識が、第2フェイズに入ると、企業としての顔をしないニュートラルな情報メディアとして、「企業による非ブランドサイト」が大きな役割を果たすようになると思われる。
 「企業による非ブランドサイト」とする条件は、以下の三つである。
(1)企業名や商品名を前面に打ち出していないこと。
(2)独自ドメインで長期にわたって運営していること。
(3)メディアによる広告企画ではないこと。
BabyCenter
BabyCenter(http://www.babycenter.com/
 代表的な例は、米国ジョンソン・エンド・ジョンソンの「BabyCenter.com」だろう。妊婦や幼児のいる母親向け情報サイトとして、世界的に展開している。2001年に経営破綻したeToysから買収したサイトであるが、その後も積極的な投資を行って、企業が保有するメディアとして機能している。
 このほかにも、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)による思春期の女性向けサイト「Beinggirl.com」(http://www.beinggirl.com/)や、アンハイザーブッシュ(バドワイザー)によるビデオサイト「Bud.TV」(http://www.bud.tv/)などがある。

 日本でもこうしたサイトは立ち上がってきている。以下、例を挙げると、

e-days
e-days(http://e-days.cc/
e-days
キリンビール(キリンラガービール)のスポンサードによる大人向けのウェブマガジン。阪急コミュニケーションズが制作。
http://e-days.cc/

Macoron!
ワールド・ファミリーによる子育てコミュニティーサイト。ミキハウスやユニ・チャームなど、多数の協賛あり。
http://macoron.jp/

Mouth & Body PLAZA
Mouth & Body PLAZA
http://www.mouth-body.com/
Mouth & Body PLAZA
サンスターによるオーラルケア情報サイト。
http://www.mouth-body.com/

WOMAMA
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンによる子どものいる女性向けサイト。大塚製薬やワコールなど、多数の協賛あり。
http://www.womama.jp/

Yuta-tto!
やずやが運営するSNS。健康手帳など健康に特化したツールが用意されている。
http://yuta-tto.jp/

 ただ、その規模感に関しては、米国のサイトは桁違いといえる。
 その最大の理由は、企業のマーケティング体制に起因する。日本における現状のマスマーケティングを前提にした組織体制には、非ブランドサイトを運営する受け皿がない。
 そもそも日本のマスマーケティング企業のWebキャンペーン展開は、従来のプロモーションコストの配分モデルのなかでWebを使ったアイデアを実現させているに過ぎない。
 Webをマーケティング活動の中核に置いたり、自社メディアとして大規模な「非ブランドサイト」を保有したりするには、組織構造とマーケティングコストのかけ方を再編成しなければならない。
 ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、事業部門をまたがってこうしたメディアマーケティング機能をもつ体制に組織改編を行っていることに意味がある。日本の企業も組織の見直しやCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の設置などが急がれる。

 また特に多数のブランドを保有する企業には、(マーケティングコストを多くかけられるブランドは良いのだが)さほどコストをかけられない中小規模ブランドも併存する。これらについては大型ブランドと同様のテレビ出稿などをしても、シェア・オブ・ボイスが小さくてあまり効果がないケースが多い。中小規模のブランドの継続的なプロモーションは、自社のWebサイトメディアをうまく活用することで可能になる。
 複数のブランドが共有のコミュニケーションメディア資産として、Webサイトメディアを持つイメージである。そのためにも事業部門横断的なメディアマーケティング部門を編成する必要がでてくる。
 さらにこれは当然だが、非ブランドメディア(情報メディア)をもつことで、商品開発をはじめとするマーケティング装置になる。消費者インサイトを発見するツールとして、Webサイトでも消費者行動は重要なデータとなる。従来マスマーケティングでは、消費者の「意見」を聞いてきたが、「行動」を把握できるWebメディアの方が次世代型のマーケティングができる。「行動」の方が正直にインサイトを反映する。
 非ブランドサイトが注目を集めるのには、やはりネットでのユーザーの態度が前提にある。受け手主導のネットでは、いわゆる企業発の送り手の論理の企業サイトには心理的な壁があると言える。「売らんかな」が気になるというより、サイトが受け手の論理になっていないからだ。その意味では、何でも非ブランド化すればよいというものではなく、サイトのつくりやコンテンツがユーザーサイドに立ってつくられているかどうかが根本的な問題である。
 企業にすればコアコンシューマーを自然に(価値ある情報提供でサイトユーザー化してもらい)囲い込む手段としてWebサイトがたいへん機能的だし、ブランデッドコンテンツの発信メディアとしても活用できる。
 企業が球団やサッカーチームをもつように、大規模なWebサイトメディアを持つ時代が来ると思う。

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