立ち読み広告

2008.11/vol.11-No.8


サンヤツで実感できた草思社の再出発

 今年は出版界にとって多難な年だった。なにしろ正月早々飛び込んできたのが中堅出版社・草思社と自費出版大手・新風舎の経営破綻を伝えるニュースだった。その後も、アスコムや洋書輸入販売最大手・洋販などが破綻した。書店でも、ローカルチェーンの破綻などが相次いでいる。
 なかでも、草思社が民事再生を申請、というニュースには耳を疑った。草思社といえば『声に出して読みたい日本語』などミリオンセラーを数多く出し、秀逸なネーミングや巧みな宣伝、的確な重版タイミングなどで知られていたからだ。いわばお手本的出版社だったのである。それが経営破綻とは。
 草思社を支援しようという声が、あちこちの書店から起きたのも、これまでにないことだった。池袋のジュンク堂書店は草思社の本を500点並べて「再建支援フェア」を開催したし、TS流通協同組合は積極的に書店から注文を取った。ふつう、出版社が経営危機に陥ると、その会社の本を返品しようとする書店が多いのに。
 約10社もの企業が支援に名乗りをあげたのも草思社だからだろう。そのうちの1社、文芸社が支援企業に決まったのが4月。7月末には文芸社100%出資の子会社として再出発した。文芸社は自費出版で知られるが、草思社の編集内容には介入しない方針だという。

サンヤツは宣伝のキホン

 10月6日、月曜日の朝刊第1面には草思社のサンヤツ(小枠の出版広告)がある。『自衛隊の情報戦』、『「声」の秘密』、『学校では教えてくれなかった算数』の3冊だ。この広告を見て、やっと草思社の再出発を実感できた。
 べつにこのページだからヨイショするわけじゃないが、出版社は新聞に広告を出してナンボ、という思いが私にはある。どんなに立派な本を出しても、そのことを世間に知らせなければ意味がない。広告媒体はいろいろあるが、書籍・雑誌の広告は、やはり親和性が高い新聞がいちばんだと思う。
 この春から勤務している大学の学生たちや、読書アドバイザー養成講座(JPIC主催)の受講生たちと話すと、「いまの出版界は宣伝不足」と言われることが多い。出版社は充分(あるいは精いっぱい)やっていると思っていても、読者は必ずしもそう受け取っていない。そんななかでサンヤツは基本のキだ。
 3段8分の1、面積にして45平方センチメートルの小さなスペースだが、情報量は驚くほど多い。出版社名、書名、著者・翻訳者名、税込み定価、出版社の住所、電話・ファックス番号、ウェブサイトのアドレス。そして本の内容紹介。たとえば『「声」の秘密』には〈赤ん坊の泣き声から政治家の演説まで、「声」で読みとく人間社会のしくみ。声をめぐる古今東西のエピソード満載!〉とある。読んでみたくなる。手帳にメモしてもいいし、このまま切り抜いてもいい。「この本ください」と書店員に手渡せば探しだしてくれる(そうだ、サンヤツにミシン目を入れたらどうだろう)。
 何はともあれ、草思社の再出発によって、過去の同社の本も引き続き販売が続けられるのがよかった。廃棄されたかもしれないたくさんの本の命が守られた。これからの草思社に注目だ。

10月6日 朝刊
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