インテグレーテッド・コミュニケーションの時代

2008.11/vol.11-No.8


ファネル理論とネットマーケティング

 広告や販売促進の効果について、実際にトランザクション(購買)に至るまで(あるいは購買後のロイヤルティー獲得まで)のプロセスにおいて、その歩留まりを測定し、マーケティングのゴールに対して問題なのはどのプロセスで、最終的なゴールをあげるためにはどこを改善するのが一番いいのかを発見する考え方として「ファネル理論」が注目されている。
 テレビ広告を中核にアウェアネスを獲得するだけでは、単純に購買に繋がらない状況を反映しているわけだが、本質は経営資源配分、とくにマーケティングコストをどこに、どの程度投資するのがよいのかという最適化の発想である。しかもこれには特定の方程式の類はなく、商品カテゴリーやブランドによって状況が様々である。
 同じカテゴリーでも、競合ブランドとくらべると認知レベルは同じなのに、購買意向までのあるポイントで歩留まりが悪いというケースが多くある。この場合、テレビ広告でよりブランド認知を高めることよりも、レリバンシー(自分に関わる商品だと認識すること)からパーチェスインテント(購買意向)に至るプロセスでの流れをよくする施策の比率をあげる方が投資効率はよいはずだ。

図1

 ネットマーケティングでも同じで、こちらは広告からトランザクションまでのトラッキングが可能であるため、マスマーケティング手法よりもデータがあるだけに徹底的に効率化を追求しやすい。
 しかし日本の多くのネットマーケターは、本当の最適化を実践できているとは言いがたい。問題点は二つあって、一つはコンバージョンを上げるサイトづくりのノウハウが未発達であること。もう一つは見込み客の集客(流入)戦略に、クリエイティブのパフォーマンスを上げる仕組みをいまだ持ち込めないことにある。

 一つ目のコンバージョンを上げるサイトづくりについては、まだそもそも見込み客にアクセスしてもらうマーケティングWebサイトというものに関する基本的な考え方が理解されていないことが多い。
 企業Webサイトには見込み客が「買う理由」を求めてアクセスしてくれる。一方通行のマス広告には「売る理由」を凝縮したメッセージを載せて送り込んできたが、Webサイトは、ユーザー一人ひとりの「買う理由」にすべて応えられるようにつくらなければならない(またそれができるのがインタラクティブな装置であるWebサイトである)。
 ところが、多くの企業サイトには売る側にしか通じない用語が目につく。この発想の転換がまず出発点である。マーケティングメッセージの受け手の立場になって、見込み客が興味・関心を顕在化させて、自ら購買情報を求めてくる行動に対応するマーケティング活動をもっと丁寧に(徹底して研究して、お金をかけて)するべきである。
 例えば会員獲得など入力フォームをもった企業のマーケティングWebサイトでは、情報入力のユーザビリティーを良くすることで、コンバージョン率を上げることができる。現状では、多くのサイトにストレスのない入力フォームをつくろうとする努力の跡があまり見受けられない。当然、入力するユーザーの立場になれば、改善すべきところがたくさんある。
 獲得型のマーケティングを展開していて、集客流入のためのネット広告、リスティング、アフィリエイトを駆使しているわりには、最終段階の顧客化作業で詰めが甘いことが多い。例えば流入策に1億円使っている企業は、流入後のサイト改善でコンバージョン率を20%上げることに成功すると、2000万円の広告支出効果を得られる。広告支出の多いマーケターほど、よりコンバージョン向上にコストを使うべきだ。同じ金額を使うのであれば、より顧客化直前に使うべきなのである。
 もう一つの問題は、流入を獲得するためのネット広告のパフォーマンスを広告スペースベースでしか測っていない点である。しかもクリックベースでポストインプレッション効果を測定していないことが大半である。つまり集客効果の半分しか測定していないということである。
 実は日本のネット広告のCPMはアメリカの1/2〜1/3程度にまで下がってしまった。その原因はネット広告のパフォーマンスを広告スペースにばかり負わせていて、クリエイティブによってパフォーマンスを上げようとする試みがほとんどなされないことと、集客効果をクリックベースでしか測ろうとしないことによる。
 日本のネットマーケティングは、集客に偏重して流入後のパフォーマンス管理不足であること、その集客もスペース選び、しかもクリックベースオンリーと、あまりに単純化が進んでしまったことで、顧客獲得効率が落ちているのではないだろうか。

図2

 ファネル理論に話を戻すと、ファネルの下のゴールに近い部分の改善から取り組み、ゴールに近いプロセスでのユーザーコミュニケーションのあり方を思考すると良いと考える。アウェアネス獲得からコミュニケーションを考えるのではなく、最後の最後に買ってもらえるかどうかのところから考えるということだ。ここから企業Webサイトのコミュニケーションコンテンツを発想し、集客のためのネット広告のメッセージ開発に生かしていくことで、クリエイティブパフォーマンスを高められる可能性(余地)がまだまだある。
 ファネルの下から上に施策を積み上げる考え方も、次世代型のインテグレーテッド・コミュニケーションのスタンスである。

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