CURRENT REPORT

2008.11/vol.11-No.8


4年がかりで準備した日本への出店 ファッションへの自由な挑戦を支援

 ファッションに興味がない人でも、9月13日のH&M銀座店オープンのニュースは新聞、テレビなどで目にしたのではないだろうか。開店時には、3000人とも5000人とも言われる行列が銀座の街に出現し、消費不況が喧伝される昨今、そのブランドパワーを見せつけた格好となった。
 こんなにも人々がH&Mに魅了される理由はどこにあるのか。へネス・アンド・マウリッツ・ジャパンPRコミュニケーションマネージャーのミエ・アントン氏に聞いた。

へネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社 PR コミュニケーションマネージャー ミエ・アントン氏
――満を持しての日本進出ですね

 私たちはヨーロッパの次なる市場として、まずは北米、次いでアジアへ展開するという構想を持っていました。2000年のニューヨーク店を皮切りにした北米での出店も一段落したところで、日本への出店計画が具体化しました。4年前のことです。
 アジアでは中国が先行しましたが、生産拠点を長年置いており、社会に対する馴染みがあったからです。東京についてはニューヨーク店をオープンするのと同じぐらい大きなステップだと位置づけておりましたので、十分に時間をかけ、マーケットを理解した上で進出したいと考えていました。
 同時に、最高の立地に店舗を構えることを重視しています。実際に商品を目で見て、手にとっていただくことが大事ですから、他のコンペティターも多く集まる、マーケットの中心に自分たちを置くことで、多くのお客様にご来店いただきたいのです。
 そういった条件を満たす立地が今年、銀座と原宿に確保できたということもあり、このタイミングでのオープンとなりました。

――日本のファッションマーケットは決して好調とはいえませんが

 確かに、以前と比べてファッションにお金をかけることに躊躇してしまうところがあるかもしれません。ただ、私たちはデザインやファッションとは価格の問題ではないと考えています。商品を手にしたときに、自分にとって価格に見合う価値があると判断されることが大事なのです。
 H&Mでは世界中どこの店舗にいらしても、こんなにおしゃれなものをこの値段で買えるのだという満足感を得られるよう設定していますので、ファッションに妥協したくない、挑戦したいとお考えの方に選んでいただけるのではないでしょうか。

――価格とファッションやクオリティーはトレードオフではない?

 スウェーデンで最初の店舗をオープンしたのは1947年のことですので、テキスタイル業界や市場に精通していますし、本社にいる約100人のデザイナーたちは、インスピレーショントリップといって、年に何回か世界を旅して、その国のストリートファッションや人々の暮らしぶりなどを見聞し、ファッションやデザインに対する知識を常に深めています。
 また、自社工場を保有していませんので、世界中にある約800のサプライヤーから、品質や価格などにおいて最適な条件を選び発注しています。私たちのビジネスコンセプトは、ファッションとクオリティーを最良の価格でお客様に提供することですが、こうしたことから、価格をおさえながらも品質とデザイン性の高い商品を提供することが可能となるのです。

――有名デザイナーとのコラボレーションも実施されています

 「マスクルーシブ」という考え方なのですが、これはマス=大衆と、エクスクルーシブ=限定を組み合わせた言葉で、大衆に向けてはいるけれども、限定品でもあるという意味です。つまり、憧れのブランド、手の届かなかったブランドを数量限定でリーズナブルな価格で提供しようという試みであり、私たちにとっても「ファッションやデザインに価格は問題ではない」という理念を確認する機会でもあるのです。
 2004年のカール・ラガーフェルド氏とのコラボレーションからスタートしたこのプロジェクトですが、デザイナーの方にも私たちの企業理念を理解していただく必要があります。幸いにしてラガーフェルド氏自身も「個人のセンスに価格は問題とはならない」と賛同してくれました。
 デザイナーの人選は、PRやマーケティング部門、デザイナーチームで話し合って決定していますが、はじめにラガーフェルド氏と組んで成功したことで、他のデザイナーにも興味を持っていただき、スムーズに話が進みます。日本でのオープニングイヤーでもある今年は、コム デ ギャルソンの川久保玲さんとのコラボレーションコレクションを発表します。

――H&Mの楽しみ方は

 雑誌や新聞広告で掲載された商品を見て、例えば「このカーディガンが欲しい」と来店される方は多いのですが、売り切れていることもあります。でも、新しいデザインのカーディガンが常に入荷していますから、実際にはその方が良かったということもあります。店舗では商品をお勧めすることはありませんので、雑誌や広告、ショーウインドーで見たものをヒントにお店に足を運んでいただき、自由な発想でご自分のファッションを完成させてみてください。
 H&Mでは、ハイファッションからモダンベーシックまで展開していますので、年齢、性別を問わず、ファッションに興味があるすべての方がお楽しみいただけます。日本のお客様にどのように着こなしていただけるのかワクワクしますね。

9月13日 朝刊

(梅木)

取材メモ

H&M 原宿

 華々しいオープニングを飾ったH&M。11月8日には原宿店=写真=がオープンする。
 「原宿店は立地上、若い方というよりも、気持ちが若い方に向けた品ぞろえとなります。銀座店と比較してカラフルなものやトレンド性の高いものですとか、ベーシックな商品より、面白みのあるものが多くなります」とアントン氏。
 ワールドワイドでの成長目標では、店舗数で年間10〜15%の拡大と既存店舗の売り上げ向上を掲げているが、「私たちは日本のアパレル業界では新人ですから、市場にアジャストするためにお客様のニーズを把握する必要があります。商品やサービス面でまだまだ改めるべき点があると思いますので、この1年は調整の段階といったところですね。長いスパンで日本に根付いていきたいと考えているので、店舗については少しずつオープンしていきます」。
 2009年の秋には渋谷での出店が予定されている。

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