from America

2008.11/vol.11-No.8


金融危機とインスタントラーメン

 米国から「証券会社」が消えた。
 9月14日の「リーマン・ショック」以降、米国の金融業界再編はすさまじい速度で進み、朝には正しかった情報が夕方には覆される、という事態が連日発生している。誰もが混乱している中、気づいたら米国の「五大証券会社」が姿を消していたのである。
 業界第5位だったベア・スターンズは今年5月にJPモルガンにより救済買収され、第4位のリーマン・ブラザーズは破綻、第3位のメリルリンチも同日バンク・オブ・アメリカに買収された。残る第2位モルガン・スタンレー、第1位ゴールドマン・サックスの両者は銀行持ち株会社化し、連邦準備制度の監視下に入る「銀行」へと転換したのである。
 さらにはAIGへの公的資金注入である。投入された850億ドル(約9兆円)に加え、その後の金融安定化法での7,000億ドル(約74兆円)もの公的支援額は、合計すると世界16位のオランダのGDPをも超える(IMF、2007年)。可決をめぐって議会が混乱するのも致し方ない数字である。
 まさに「金融メルトダウン」。これが米産業界に大きな影響を与えている。現在、マクドナルドはコーヒーメニューの充実を図り、最新エスプレッソマシンの導入を各店舗で進めている。しかしフランチャイズ店舗に対するバンク・オブ・アメリカの融資引き締めにより(マクドナルド役員フューラー氏)、今年4月にスタート予定だったサービス提供が、2009年夏まで延びると見られている。マクドナルドは60%の店舗で設備がそろいしだい広告キャンペーンを開始する予定だが、いまだにその目処は立たない。
 米国最大の広告主P&Gでも、ラフリーCEOが下請け各社の資金調達の問題から新商品の提供に影響があると述べ、ビジネス機会の逸失に警鐘を鳴らす。さらにはインベブによる、520億ドルものアンハイザー ・ブッシュ買収資金調達までも不安視されている。
 一般消費に目を向けると、さらに悲惨な状況が待っている。まず、ガソリン高・消費意識の低下・ローン審査の厳格化という三重苦にさらされた自動車ディーラー各社では、業務の縮小や廃業に追い込まれるところが出てきている(オートモティブ・ニューズ紙)。米地域経済にとって彼らの存在は非常に重要であり、地方紙は広告収入の核を失うことになる。
 都市部では、高級ブランドの売り上げ低下が危惧されている。国際ショッピングセンター協会のニマイラ氏は、「高級ブランドは全体的に景気の影響を受け、ニューヨークではそれが特に顕著だ」と話す。NY市民の約5%が金融業界にかかわり、その給与収入は合計600億ドル(約6.3兆円)にも及ぶ(WSJ)。「これら富裕層が職を失ったうえ、さらに市場資金の流動性が低くなれば資産も購買力も著しく落ち込む」とラグジュアリー研究所のペドラサCEOは分析する。
 一方で、この不況の恩恵を受けている業界がある。それは、インスタントフード業界だ。景気の後退により自宅で食事をとるケースが増えたためで、キャンベル・スープが7─9月期で売り上げを13%伸ばし、ケロッグも4─6月期で11%増とした。伸びが顕著なのが東洋水産の「マルちゃんラーメン」で、「広告費を年に100〜200万ドルしかかけていないにもかかわらず」(米国法人のケスター副社長)、商品によってはなんと40%も売り上げを伸ばしている。
 ウォールストリートのエリートビジネスマンも、家に帰ればインスタントラーメンを食べる。想像しにくいが、そんな時代が訪れるのかもしれない。

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