こちら宣伝倶楽部

2008.10/vol.11-No.7


広告を着替えるという発想

イラスト

 温暖化で季節感がおかしくなっているが、日本には年に2回、4月1日と10月1日を衣替えとし、着るものの季節感を変える習慣がある。警察官やJRの職員はこの日から制服を着替える。この時期に寝具を替え、食器を替え、ついでに床の間の掛け軸も替えて新しい季節と向きあう文化を日本人は大切にしている。マーケットシーンを替える知恵だ。この発想で思いきって「広告を着替える」ことについて考えてみる。大胆な発想の転換という衣替えで新しい展開と向きあってみよう。

(1)姿勢・哲学を着替える

 なぜ広告をするのか、なにを広告で伝えていくのか。もうひとつ奥にある「わが社の広告スピリット」。売ることだけではない「広告のバックボーンや哲学」について、なければ考え、あればさらに精度をあげる。スーパーコンテンツとでもいうべき、わが社流の広告のスタイルやにおいをつくること。安心して信頼して接してもらえるような独自の広告のたたずまい、しつらいをつくっていくことが大切になる。独特のにおいのする広告だ。

(2)クリエイティブを着替える

 表現の技術やセンスは、広告を見る側からみれば「広告の第一印象」だ。しかし広告をつくるプロセスからいくと、議論や検討、熟考をくりかえしたあとの最終の仕事になる。だから、クリエイティブはクリエイターを替えることではなく、広告主が表現の技術やセンス、トーンやマナーについて確固たる思慮を持ちなおし、クリエイターの動機や決断に勇気を与えること。広告主の深慮次第だ。

(3)メディア計画を着替える

 効果でなく、かかる経費のせいでテレビ広告に神経を使いすぎる。新しいメディアも出ているし、窮地にさしかかっておもしろくなりそうなメディアもある。単体でなくクロスメディアで考えていくのが常識になる。だから広告計画では広告主の知性と、活用してうまく立ちまわる行動力で広告の成果がきまる。これまでのやり方、考え方を白紙にして、メディア計画でなく「メディア企画」を着替える時だ。予算のしばりをゆるめること。

(4)切り口・攻め口を着替える

 いつまでタレントに頼っているのか。テレビ主義の弊害だし、イージーなプレゼンテーションの弊害だ。メッセージの主軸を正常に戻し、それでもタレントが必要ならあとで考えればよい。はじめにタレントありきは無能集団のしるしとその内いわれる。伝えるべき一番大切なことを固定し、それをどの角度からさばいていくか、ユニークポイントをあらたに発見すること。富士山を別のルートから攻めるという発想は新天地がひらける。

(5)広告会社を着替える

 よきにつけ悪しきにつけ広告会社との関係はなくならない。これが案外「広告を着替える」という仕事のネックになる。広告会社を軸にした人的ネットワークができあがってしまい、広告主の不自由ができていく。思いきって主力の広告会社を着替えてグループごと人心を一新することも、どこかで射程にいれておいた方がよい。広告会社のために働く必要などさらさらないからだ。いい関係の裏にはいいかげんな関係というのがある。

(6)タイミングを着替える

 広告のヤマやピークをどこにおくか。世の中にはシーズンやタイミングが常識的になかば固定している商品と、それらにしばられないいつでもシーズンの商品がある。広告が集中する時期がいつのまにかできて効果や効率を自らでマイナスしているとしたら、ちょっとタイミングをひねって存在感を鮮明にするという英断がでてもよい。発売時の取引推進のための広告から、体制が整った実需本番の広告にシフトするだけでもピークは替わる。

(7)ターゲットを着替える

 前項に関連するが、その広告のねらいとする相手は誰か、漠然と一般市場に対してというような広告はもうない。消費者や生活者も漠然としすぎる。まとはできるだけ絞りこんで相手の姿が見えるようにすること。広告の届くエリアについても、社内の支店・営業所円満ご奉仕型は結局トータル力をダウンさせる。営業や経営戦略にスライドして、伸ばすべきところで伸ばす非情も時には必要だ。ターゲットを絞るという着替えがいる。

(8)広告への期待を着替える

 どのようになったら、その広告をしたことに納得し、初回ほどほどの満足をするのかを考えておく。どうせ効果などすぐにでるものではない。シェアが逆転するなどという一発芸は広告にはない。だから小さなことでよいから「プラスの現象」をあらかじめマークして探っていくこと。社内に活気がでて、営業がやる気になってきた。商談の中に広告のことがでる。家族で話題になることがあるなど身近な小さいことを切り捨てないこと。

(9)決裁のシステムを着替える

 会社には稟議や決裁という厄介なプロセスがある。これが結構アタマが痛い。好みやセンスに関することは口出しの数を増やすほどグチャグチャになる。役職上位の意見が正論とは限らぬが、残念ながらこれに押しきられることが会社ではしばしば起こる。このシステムの着替え、新しいルールづくりがいる。上席者、極端にいえば社長と直結、直談判して、感覚や感性、好みや主観にかかわるものはサミットG3くらいにした円卓会議を。

(10)スタッフを着替える

 いくつかのヤマを越え一段落したところで内閣改造ではないがスタッフの考課、査定、検証をしてはどうか。部内の担当を替える、人事と話して人材の入れ替えを考える、一段落ついたところでの緊張感は人心をふるいたたせることにつながる。もちろん外部の協力スタッフもこの対象だ。協力会社の担当者も準社員と考えれば、僭越でない程度に先方と話しあって鮮度を上げることも考えたい。上からの指令で宣伝部長が替わることもある。

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