インテグレーテッド・コミュニケーションの時代

2008.10/vol.11-No.7


広告会社機能のリモデル

 「次世代コミュニケーション」の実態を具体的に語ることは難しいが、広告会社が「次世代コミュニケーション」の担い手になれるかどうかということでいうと、確信していることがある。キーワードは「リモデル」である。要するに、広告会社の機能と広告マンのスキルを再編することによってでしか、次世代コミュニケーション対応はできないということである。
 広告ビジネスは広告会社のテリトリーをはみ出して拡大している。おそらく従来の広告会社がアドテクノロジーや消費者主導のコミュニケーションの変革に対応して、広告ビジネスの変化や拡大をキャッチアップするのは無理だと感じる。従来広告業界ではなかったプレイヤーの参入は必至である。今業界にいる人間だけで対応することなど早くあきらめて、テクノロジー領域の人やコンサルティングファームの人やいろんな領域の人たちと交わって、ハイブリッド化するしかない。

必要な次世代コミュニケーション対応

 しかし現状では、従来のマス広告を売るための職能と体制のなかで、個人個人が対応を迫られているのが実態である。おそらくどこの広告会社も組織でスタッフィングはできなくて、個々にスキルをもった個人を指名して編成しないと今どきの提案ができるチームにはならないのではないかと思う。従来の組織体制はもう半分くらいは機能していないし、ましてやそうした組織体制では、新しいスキルをもった人材育成などとうていできない状況にある。
 欧米の場合、広告会社はデジタル対応のできない従業員をリストラして、デジタルに対応できる人員に入れ替えてしまうことができる。その点、日本の場合、そう簡単にリストラできないので、既存の広告会社が自ら変革することが余計難しい状況にある。

 さて、リモデル要件は三つある。
 一つ目は、企業のマーケティング体制のリモデルである。これは前回のこのコラムで言及したように、コンサルティングファームとの協業で、企業のマーケティング組織体制のリモデルをサポートすることである。
 広告主企業のこうしたリモデルにパートナーとして参画できるかどうかは、広告会社にとって、その後の浮沈をかけた重要なテーマとなる。企業側からすれば、次世代対応力のない広告会社などに頼ることなく、マーケティング体制のリモデルを進めることになるだろう。そこにかかわれない広告会社は、まず企業のマーケティングパートナーになることは難しいだろう。逆にこのマーケティングの変革期にあって、広告会社もマーケティングパートナーとしての地位を獲得するチャンスでもある。今後の広告会社は生活者情報をしっかり持つことで(消費者をレップすることで)、はじめてクライアントをレップする立場を獲得できる。ビジネスモデル上、メディアレップからのリポジショニングを求められることにもなる。
 二つ目のリモデルは新しい広告会社への機能のリモデルである。当然現状の広告会社の中にある機能だけでは成立しない。
 まず、テクノロジーを駆使活用する機能の取り込みである。現状でアドテクノロジーとは何かをしっかり認識している広告会社の経営幹部はまだ少ないのではないかと思う。テクノロジーによって得られる価値(従来不可能であったことを可能にする技術とオペレーションコストを圧倒的に下げる技術)を分析して、次世代広告ビジネスにどのように取り入れるかを判断しなければならない。他業界に比べ、ITリテラシーが決して高いとは言えない広告業界には、この分野は重要な経営判断材料になる。広告会社にはCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)が必要である。
 もうひとつの中にない機能は、前述したマーケティングコンサルティング機能である。広告会社は基本的に企業の売り上げ拡大に寄与するソリューションを提供している。しかし今のマーケティングの変革期においては、マーケティング推進組織構造や工場のラインの稼働率に至る、企業のコスト構造までを対象とする事業コンサルティング領域にかかわっていく必要がある。
 こうした他業界にある機能も取り込むか、業務提携による協業で、広告会社がアウトプットできるコミュニケーションプランの意味をより鮮明にすることができる。
 三つ目のリモデルはこうした新しく求められる機能を実現するための、広告会社のスキルセットのリモデルである。
 現状の広告会社の組織体制は、何十年もかけてマス広告を売るためにできあがった組織と職能である。この体制の中では基本的に次世代対応のスキルが育成されることはない。従来の縦割りの組織の壁を壊して比較的シンプルな構造で、それぞれが互いの領域をオーバーラップして対応することが考えられる。
 いずれにしても、これから確立されていくスキルセットなので、試行錯誤が当分続くだろう。今は、トータルな再編と、一度デジタル・インタラクティブ領域に特化した再編の二つのアプローチが必要である。
 デジタルセントリックなエージェンシーサービスを一度徹底して追求してみることから、新たな広告マンのスキルのイメージが明確になってくる。今、インタラクティブ領域では、SEMやモバイルなどそれぞれに専門性が非常に高くなっているものばかりだ。まずは、この日々勉強勉強のデジタル・インタラクティブ領域だけでも各々の専門家をディレクションできるプロデューサーが必要だ。インタラクティブ領域をプロデュースできるアカウントプランナーとそれを中心とするチームに、ブランデッドコンテンツ開発を担うクリエイターとコミュニケーションチャネルを設計するプランナーが、お互いの側からもアプローチできるプランニングを志向することから始めるのが原型だろう。

必要な次世代コミュニケーション対応
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