from America

2008.10/vol.11-No.7


北京五輪、広告の勝者と敗者

 スポーツの祭典として、そしてビジネスチャンスとしても米国中を熱狂させた北京五輪が終わり、広告業界ではその「成果」を検証する段階に入っている。米国内消費者を対象にした様々なデータが業界誌を賑わしているが、よく見ると勝ち組と負け組がはっきり分かれていることに気づく。
 まず公式パートナーでは、レノボとマクドナルドが勝ち組である。レノボは米国内での知名度がかなり低かったが、五輪期間中の2週間で、ブランド想起率を6%から13%まで2倍以上も高めることに成功した(YouGov社調査)。実利で勝ち組となったのがマクドナルド。8月期の同一店舗売り上げで、全世界で8.5%のプラスとなった(自社発表)。これは、他のファストフードチェーン平均の2倍近くにもなる。
 その一方、ビザとGEはブランド想起率をむしろ下げた負け組と言えよう。GEは五輪第1週に3%減、第2週にやや持ち直したものの、トータルではマイナスである。ビザに至っては、8%も落としている。
ワールドワイドパートナー料は1社当たり7,200万ドル(約75.6億円)にも上るといわれるが、それ相応の対価を得るのは簡単ではないのかもしれない。
 サプライヤーに目を向けると、何といってもスピード社のレーザーレーサーほど今回の五輪で騒がれた存在はない。オンラインチャットで交わされた単語を調べるゼタ・インタラクティブ社の調査では、五輪中に「Speedo」という単語の使用率は128%プラスと驚くべき数字を叩き出した。が、フェルプス選手が8個の金メダルを獲得したことを考えると、不思議ではない。プーマも、圧勝したボルト選手の恩恵を受け、チャットでのブランド名使用率は64%増と大きく伸びている。これらが勝ち組だ。
 対照的に、ナイキは水泳では全く歯が立たなかったうえ、陸上でも契約するパウエル選手がボルト選手に完敗。チャットでのブランド名使用率は17%増に過ぎず、スポーツメーカーの中では最低の部類に入った。アディダスも同様にゲイ選手が準決勝で敗退しており、ブランド名使用率は18%増と振るわない。契約選手の不調がそのままブランド力にも影響したようだ。選手も、メーカーも負けてしまった。
 しかし、究極の勝ち組は他にいる。それは今回の五輪開催で大幅に成長した、中国広告市場だ。グループMの調査によると、2008年の中国内市場は対前年22%増の350億ドル(約3.7兆円)に達すると見られている。2009年も勢いは続き19.5%増の420億ドル(約4.4兆円)、そして2010年には市場規模でドイツを抜き、米国と日本に次ぐ世界第3位の広告市場に成長すると試算されている。
 今回中国で大規模キャンペーンを実施した公式パートナー企業は、ブランド力を維持するために同レベルの投資を続けると、北京にあるCSMメディアリサーチ社は分析している。実際にコカ・コーラはその姿勢を明確にし、「ありがとう、北京」と題したキャンペーンを五輪終了直後から開始している。また、これまで締め出されていた公式パートナー以外の競合各社も活動を活発化させるだろう。
 BRICs諸国の中で、まずは中国が五輪を成功させた。これに、ロシアのソチ冬季五輪(2014年)が続く。2016年の夏季五輪は、ブラジルのリオデジャネイロが東京と開催を争っている。消費力の発展が著しい市場での五輪開催は、爆発的な広告需要を喚起する。何だかんだ言っても、五輪はやはりビジネスになるのである。

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